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女子高生とコーヒー、それと怪  作者: 霜見肇


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 息苦しくて意識が飛びそうになる。私は石畳にへたり込んでいた。一日に二回もこんな状態になるなんて……。呼吸が全然落ち着かず、開いたままの口からは唾液が何度もこぼれ落ちる。


 背中をそっとさすってくれる感触があった。匠海くんがそうしてくれていた。寡黙だけど、本当に優しい。


 つんとして耳もよく聞こえない。唇の動きで、「大丈夫?」と言っているのだと分かった。私は弱々しく頷くと、先に行って……と口走ったと思う。でも匠海くんは側にいてくれた。私は彼の優しさに甘えて、そこで呼吸を落ち着かせることにした。


 どれくらい経ったか、わたしはやっと自分の状況を把握できるようになった。私は竹林の中にある石畳の上にいる。動画と同じ光景が、目の前には広がっていた。竹の向こうからは、町の明かりが漏れている。


 私はそこで初めて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。見たところ四角いこの禁足地の東側と北側、竹林のそのまた向こうに見える玉垣を越えると、そこには低くないビルが建っている。西側は車が通れないくらいの路地で、南側は左右二車線の大通りだ。今も車が行き交っているのが見える。そんな立地のこの場所が、ここまで静かなはずがない。耳を澄ませば、見えている車の走行音も、実際には聞こえていないことに気付いた。耳に届くのは、竹林が風に揺れる音だけ。


 それに気付いて、私は一気に寒くなった。この場所は明らかに異常だ。私が生きてきた中で、一番と言っていい。


 不安に駆られ、私は無意識に匠海くんの手を握り締めていたらしく、彼は大丈夫と示すように、手を握り返してくれた。


 呼吸がだいぶ落ち着いた私は彼のことを信じて、ゆっくりと立ち上がる。


「お、お見苦しいところをお見せしました……」


 そんな場違いな私の第一声を聞いて、匠海くんはふっと笑ってみせた。


「……誰にも言わないでね?」


「言わないよ」


 それを聞いて心底安心した。


 もう手は離しても良さそうだったけど、漠然とした不安が拭えず、そうできない。そんな私を気遣うみたいに、匠海くんはゆっくりと石畳を歩き出した。ゆっくりゆっくり進んでいくと、目の前に平べったい何かが、いくつも置いてある……いや、()()()()()()


 そこにいたのは、五人だった。年齢性別、見るからに職業もバラバラな五人が、ぐるりと円形に、頭を中心に向けて、石畳の上に寝そべっている。目は全員開いていて、白目を剥いていた。あまりの恐ろしさに、私は匠海くんの背後に隠れる。……あ、私のほうがちょっとだけ背高いんだ。


「大丈夫だから、ここにいて」


 怖いくらい冷静な声だった。私が何度も頷いている隙に、匠海くんはそっと手を離し、五人に近づいていく。


 一人になって身を自然と縮こめてしまう私は、石畳の向こうにも何かがあることに気が付いた。それはもうボロボロで崩れかけた、小さな祠だった。木でできたその祠の中央には、真っ黒い空間が、()()。少なくとも、私の目にはそう見えている。少しでもじっと見ていると吸い込まれそうな真っ黒い“それ”は、まるで私のことを観察しているみたいだった。


 一方の匠海くんはというと、円の中心に到着していた。そして彼は中心にある何かを、()()()()()()()()()()。丁寧に、何度も何度も。そして彼はそれを拾い上げると、私のところに戻ってきた。


「これって……スマホ?」


「そう。多分だけど……誰かがここにこれを、投げ込んだんじゃないかな。で、?あれ?がこれを見つけて、繋がってしまった」


「次は……何をするの?」


「いや、もう終わった。あの人たち見てみて」


 すっと体を横に倒して目の前の匠海くんを避けてみると、五人はいつの間にか目を閉じていた。顔色もなんとなく、さっきよりは良さそうに見える。そっか……こんなにあっさり終わっちゃうんだ。……まあでも、そのほうがいいか。


「一人……多分最初の犠牲者は危なかったから、急いで良かった」


「そっか……って、まだ犠牲にはなってないからね?」


 なんとなく、匠海くんは口が悪いような気がした。思春期特有の、という感じではなく、彼自身の性質として。

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