夕陽の差し込む部屋
夕陽が早くなった
全てが朱色の時
夏であれば、まだ想いに耽ってもビールでやり過ごす
秋になっても、名残の闇に光る星を見上げてやり過ごせる
冬になれば、一人だけの晩酌を始めてやり過ごすのだろう
やり過ごした後、ふと気づくと馴染みの古いアパートの一室
窓から外へ視線を移すことはあっても、結局はここから外へ出る事がない
日々の糧は、遺族年金と妻の残した遺産だけ
妻の遺産は減って行くけど、妻の思い出は重くなっていく
このまま二人で暗闇の中にとっぷりと沈んでいくのかな
次の日、夜明けと共に目が覚めた
やはりアパートの古い畳の上だ
染みた跡が畳にあった
情けないけど、涙に溺れて寝入っていたんだ
でも、昨日の寝入るまでのことはハッキリ思い覚えているし、妻の姿も声も匂いもハッキリ覚えている
こんなふうにして、男っていう情けない人間は、時をただよってい続けるんだね
それも、いつ止まるとも分からない命の続く限り
とにかく起きよう、腹が減った