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ひつじの2人  作者: 島平
序章
1/4

既視感

初作品なので、読んで頂けると嬉しいです!!

――「ここにいたんだ、はやく⋯⋯早く帰ろ⋯⋯」


 涙ぐむその声に目を向けると⋯⋯あれ?声ってなんだっけ⋯⋯。

 暗闇から徐々に視界が開けていく。目を覚ますと、規則性に並んだモノクロが目に入る。ピアノだ。どうやら鍵盤を枕にして寝てしまっていたみたいだ。

 ゆっくりと体を起こし、まだ眠りたい気持ちの脳を叩き起して思考と目線を巡らせる。


「⋯⋯てか、ここ音楽室じゃん」


 久しぶりに出す声が枯れているのを聞き、長い時間『ひとり』だったのを思い出す。自分の声に反応してくれる人も居なければ、もちろん電気も付いていない。


「まぁ、当たり前か。今は⋯⋯22時⋯⋯寝すぎだな。そりゃ電気も消されてるわ」


 黒板横にかけられた時計を確認して、自分の怠慢さに驚かされた時、暗いはずの部屋の中で、色々なものを認識出来ているのに気がついた。その原因は外からによるものだった。

 

 月の綺麗な夜だった。まるでコンパスが描く円のように丸い月。その光で部屋は明るく照らされていた。気付いたら椅子から立ち上がり、窓の近くに寄っていた。空いた窓から流れて来る心地良い風が、開花したばかりの桜の花びらを乗せてくる。『息を飲む』とはこういうことを言うのだろうか。そこで無粋にも、ここに何か足すならなんだろうと思い僕は、目の前にあるさっきまで枕にしていたものを見る。


 「これだ⋯」


 今見つけたかのように振る舞う僕に、ピアノは少し怒っている気がした。それを思うと少し表情が緩んだ。


 「弾くならこの曲だろう。今の情景にバッチリだ」


 ドビュッシー作『月の光』――椅子に座り、最初の和音から、流れるように弾き始める。

 この曲は、曲名を伏せて聞いても、名前が分かるのではないかと思うほど情景が思い浮かび、深みがあり、優しく、そして、とても美しい曲だ。『月の光』とは無論、その通りの曲だと思う。僕は、この曲が大好きだ。

 そのまま気持ちよく弾き続けている時、心臓を止めるかのような大きい音が部屋に響いた、曲を止めざるを得なかったほど。その音の原因は、教室の引き戸が開かれた音だった。

 

 「ここにいたんだ、はやく⋯⋯早く帰ろ」


 涙ぐむその声に目を向けると、顔見知りの女子がそこに居た。既視感のある情景に少しの動揺と、安堵をしつつ会話をする。


 「誉か、よくここに居るってわかったね。来てくれてありがとう」


 「当たり前じゃん。どこに行っても私が見つける。だから一緒に帰ろ」


 その言葉を聞き、全ての感情が安堵に変わった。彼女は僕のために、一人でここまで迎えに来てくれたのだから。だから、それに応えよう。


 「うん、帰ろう」



 学校を出て、肩を並べ帰路を歩いている時、ふと、さっきのことを思い出した。誉が教室の戸を開けた時のことだ。何故か見たことある光景、したことのある会話、それら全てを何と言うか僕は身をもって知っている。


 「デジャブだ」

読んで頂きありがとうございます!これから自分の書きたい物語を賛否両論頂きながら書かせて頂きます!よろしくお願いします!

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