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4章

 今日はなんかおかしい。誰に話しかけられてもコレジャナイ感を感じながら相槌を打つことになった。

 設定上は愛しの先生にも違和感を感じて、何も話せなかった。

 あのクソガキに会ってからこうなった。

 この違和感の正体を突き止めるために私はアマゾンの奥地――もといあの曲がり角に行った。

 クソガキは一人でブランコに揺られていた。

「おいクソガキ」

「あれ?お姉さん、どうしたの?もしかして僕に会いたくなっちゃった?」

 やっぱりこのクソガキは変な感じがする。いや、ほかの人の方が変な感じがするのだが。

「まぁ確かに会いたかったのは事実だね」

「⁉…あ、ああ、そう」

「おいクソガキ、お前に会ってからなんか人に会うと違和感を感じずにはいられないようになったんだが」

 そこまで言うとクソガキは少し驚いたような表情を見せた。

「なんなんだよこれ?なんか知ってるだろ?」

「お姉さんも見えるんだね」

「お前とあってからだけどな。で?なんなのこれ?」

 クソガキはブランコから降りて今度はベンチに座った。

「その前にお姉さんの症状はどんな感じ?」

「どんな感じというと?」

 クソガキはいくつかパターンがあるんだよ、と言って説明してくれた。

 まず一つ目に声が聞こえるパターン。二つ目に顔がぼやけて見えるパターン。三つ目に色が見えるパターン。そのほかにも気温が変動することもあるらしい。

 が、正直なところ今日気づいたわけで、そんなところまで意識がまわらなかった。

 それをクソガキに言うと、じゃあコンビニで野菜スティックでも買いに行くついでに見てきたら?と言われた。

 なんで野菜スティック?とは思いつつもコンビニに行って野菜スティックを手に取り、レジに行くと多分同い年くらいのバイトの子に当たった。

 意識して顔を見ているとだんだん顔に文字が浮かんできた。そこには『怠』の文字が。それと同時に声が聞こえてきた。

『は~バイト終わるまであと37分もあるじゃんか。めんどくせ~。トイレにでもこもってスマホいじれば時間つぶせるかなぁ~』

 なんかバイトの現実を見た気がする。そら仕事を楽しめる人はそうそういないよな。

 それよりも!私は野菜スティックを受け取った後はやる気持ちを抑えてクソガキ改めガキのところに急いだ。

「おいガキ!なんかすごかったぞ!あ、人参食う?」

「なんかすごかったって…語彙力どこに捨ててきたの…?義務教育の敗北だね…。人参はおいしく頂くけど」

 人参をボリボリとむさぼるガキにさっきの感覚を精一杯伝えた。

「なんかね!なんか顔見てたら文字が浮かんできて、声が聞こえてきたんだよ!」

「なるほどね。混合タイプってことか。見えてきたコマンドは?見たい!っていう気持ち?目を見つめたこと?」

 コマンド?きっかけ的なことだろうか?

「きっかけはね、うーん…顔見てたら見えてきたって感じかな…?」

 ガキは安心したように息をついた。

「よかった。ちゃんとコマンドがあるタイプで。何もしてなくても感じる人もいて、その人は精神崩壊しちゃって自殺しちゃったんだよね」

 うおうそんな軽いノリで重い話すんなや。

「で!結局これは何なの?」

 そういうとガキは説明を始めた。

 見えたもの、聞こえた声はその人の心の内に思っていることで、それは普段の生活の中では見えないということ。ごくまれに気づく人がいること。先天的な人もいればなんらかのトリガーによって後天的に発現する人もいること。

「多分お姉さんは僕に会ったことがトリガーになったんだろうね。僕はピュアピュアボーイで言うことと心の声が一致してるからね!仮面をかぶってないのさ!」

 仮面か…。言い得て妙だな…。

「まあお姉さんの症状は『顔に書いてある』みたいなものだと思うけどね」

「ガキはどんな症状なの?」

「僕?僕は同族が分かるよ。仮面を持たない人がね」

「そうなんだ…」

「あ、僕はもうそろそろ門限だから帰るね!じゃあね!お姉さん!」

「おうガキ!じゃあね!」

 夕日に照らされながら帰っていくガキを眺めた。



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