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a faithful man

俺はこの世に転生すること52回目。

いわば筋金入りのこの世ハイパー経験者だ。

どんなことでもよくわかっているつもりだし、ここらでじっくり

令和の世を楽しむつもりでいた。のだが、、、


今年はなぜかゆっくりできない。。なぜかカレンダーに予定が書きこまれている。

憂鬱だ。。。

年末はこたつでもちでも食べて、極限まで家から出ずにTVを見ながらゆっくりするつもりだった。見たいラインナップのネトフリが私を待っている。

溜息まじりに、カレンダーを眺めながら冷蔵庫をあける。

保存瓶にとった昆布のだしと豆腐をとりだし、火にかける

根菜を手際よく切り、みそ汁を作り納豆と自家製のかぶら糠漬け、生のフルーツをそえたヨーグルトもかかせない。

52回も転生すると、すべてのことに要領よくなり、もちろん冷蔵庫の中身も日々の作り置き総菜でベテラン主婦よりも満たされていた。

私は一人暮らしの大学生だが、過去の人生において一通りのやりがちな失敗を経ているので、

何が人生の幸福につながるか、ずいぶんと理解している。

食事は人生のプライオリティーでかなりの上位に入る。

ここは、徹底的に手を抜かない。

焼き鮭が、やがていい匂いをさせて魚焼きグリルから煙ととともに立ち上った。

「ご飯できたか?」

バン!!とすごい勢いで扉があき、一人暮らしのはずの私の居城にロングヘアーの小柄な女がずかずかとあがりこんできた。

まるでさも当然のように、私が盛り付けたばかりの朝食を次々と口に運び平らげていく。

私が朝一で楽しみにしているいい感じの温度に落ち着いた緑茶の知覧茶もぐびぐびと一気に飲み干されてしまった。

いらっとした心持ちで、わたしは菜箸を握りしめながら、

「毎日、毎日朝飯ドロボーしに来やがって、一体全体どうゆうつもりなんだ?おまえは?」

「え?毎日は来てないじゃん。こないだ来たのは一昨日だよ。昨日はきてないー」

「いやいや、そうゆう問題じゃなくて、おまえが来たり来なかったりされるとで、俺の朝飯をぶんどっていくのかいかないのかわかんないから、ふりまわされるんだよ!だいたい最初から2人前つくるんならともかく、食ったり食わなかったりじゃ、こっちも段取りがつかない!」

だいぶんいいたいことがずれていることに気づきながらわめきちらすと、

ゆったりとした瞳を前髪の間からのぞかせて、彼女はけだるげに答えた。

「ああ、これからはちゃんとこないときは連絡するよ、わるかった。」

「いや、そうじゃなくて!」

「なんだ。違うのか?

 ーお茶、今日もうまいな。おかわり。」

 俺たちは決して熟年夫婦ではない。ましてや付き合っているわけでは決してない。

俺は大学生だ。そして彼女は高校生。彼女はここの大家の孫娘で自由奔放なふるまいをしている。

「あのな、ここは何度も言ってるように学生アパートで男専用だ。そもそも男の一人暮らしに女が朝っぱらから飯食いに来て上がり込んでる状況はあまりにも不自然だ。」


そうして、私はまた手早く新しいお茶を淹れ、彼女に手渡した。

「なんだ、私が朝飯食べに来るのがそんなに迷惑だったのか。」


「飯が済んだから、トモキに髪をとかしてもらいに行ってくるー」

そういいながら、部屋をあとにした。

って、おいおいおいーーー!!!

「お前、毎朝俺んちで朝ごはん食った後、トモキんちで髪をとかしてもらってんの?」

少し考え込むように間をおいてから、楓日は答えた。


「そうだけど?何か?髪を扱うのがうまいやつほかにいるのか?私の髪の毛は細くて繊細なんだ。」


「自分でやれよ!てかトモキもどうゆうつもりだ?」

そうすると、3つ先の扉が開き軽薄そうな声とともに主が姿を見せた。

「いらっしゃーい楓日。今日はどんな髪型でいくー?」

「とかすだけでいい。それ以上の余計なことはするな」

「りょーかぁいー。座って座ってー。」

啞然とした俺をよそに2人は扉のむこうへ消えた。


あきらかにおかしい。釈然としない気持ちで腕時計に目をやると、大学へ向かわなければいけない時間になっていた。

大急ぎで身支度し、大学へと向かう。

今日は底冷えするような真冬の気温だが、すっきりとした青空で、日差しが朝からやけにまぶしく降り注いでいた。

大学は小高い丘の上にあり、徒歩約15分の道のりはほぼ急激な上り坂を占めていた。

両脇に等間隔に植えられた落葉樹の枝葉の隙間から、先ほどの太陽がいい感じの木漏れ日をつくり、

まだ足元の植え込みには、昨晩からの寒さでうっすら霜が残っていた。


寒さから逃げるように足早に駆け上がる。と、そんな俺の急ぎ足をさらに上回るスピードで足音が近づいてきた。

「よー八牟禮はちむれ何急いでんの?」

声をかけてきたのは、同じゼミの水野公正だった。

「三ツ矢先生によばれている。9時にS教室に来るように昨日帰り際に言われた。きっと雑用だ。」

少し同情をにじませた口調で水野は続けた。

「お前。相変わらずいいように使われやすいキャラに徹してんのな。いい加減疲れない?」

「じゃあ、お前が俺の代わりにいってくれよ。単位も危ないんだろう?点数稼ぎになるぞ。」

「絶対やだね。あいつ。あの変人。お前よくアイツと一緒にいれるよな。あの何を考えてんのかわかんないような冷酷な、メガネの向こうで俺を見るまなざし。2人きりで、5分でもあいつと一緒に教室にいたなら、俺は窒息しそうになる。」

水野は自分のパーカーから取り出したイヤフォンを片耳にしながら、

「じゃあ俺一限目とってるから行くわ」と、分岐の先に二つに分かれた右側校舎のほうを指さし、去っていった。

俺は左側に続く本館のほうへと足をむける。

白いシンプルな塗装壁の前に右手には高木の針葉樹が並び少し日陰の歩道を行く。校舎にそって背が高く深い植え込みがあり、グリーンと白の壁のコントラストが際立つ。

手前の棟は今改修工事の途中で、学生は使うことができない。


本館棟はこのまままっすぐ進んだ先に位置するが、ふと太陽の素早い陰りを感じた。

「え?」

ドサッ!!となにやら背後に重い荷物が落とされたような音がする。

ふと見ると植え込みから手足がみえる、人だ!!

「うわ!うわ!うわーマジかっ!!!大丈夫ですか!!!」

駆け寄りながら、落ちてきたところを確かめるべく見上げると、黒い布がまるでスローモーションのように落ちてきた。

ほぼ同位置に降りてきた、黒い布はコートだった。

折りたたまれたように、深い植え込みに沈む人物の顔を確認し、

思わずぎょっとした。


それは三ツ矢先生だったー。


意識がありそうなのなのを確認し、引っ張り出しながら、もう一度窓のほうを確認した。

3階の窓での白いレースカーテンが風にたなびいている。ふとその隙間にシルエットが見えた気がした。

「先生!三ツ矢先生!大丈夫ですか!!」

「。。。」





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