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キャベツ畑の真ん中で
今は昔
彼は詩人になりたいといった
この時代に詩人なりたいといったのだ
狂気ではなくて、正気の言葉を紡ぐ人に
たくさんの心に言葉を突き刺してやると
ぼくは彼と向かい合って
窓の外、空を見て聴いていた
季節は春、彼とぼくは一七歳
ほんの少しキャベツの花が香る風が窓から吹く
喧騒にあふれた昼休みの教室
若さにあふれ、未熟と愚かさと楽観と悲愴
彼から何かがはじまるのか
そんな大それた状況でもなし
こんな地方の校舎から
蟹やら、牡蠣があふれた泥海を埋め立てた上に立つ
なぜ詩人なんだ、どうして詩人なんだ
わけがわからないよ
でも、彼の目は輝いている
彼は言葉は力を持っていると
確かにそう、それは真実
その力を掴むことができるのなら
ぼくはフッと小さく息を吐くように笑った
何でもいいまだ何もはじまらなくてもいいんだ




