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【83・シュタールツ帝国10】

「あ"ぁー……。癒されるぅぅ……」

 

 

 ソファにダラりと身体を投げ出し、頭をヘレンちゃんの膝に乗せへそ天しながら撫でられてる私を、向かいのソファから胡乱げな目で見てくるリューリ。

 

 はい、察した人も居るだろう。無事、ダンジョンから帰還して、疲れた身体を労わってる最中なのだ。

 え? 合成獣はどうした? って? んなの、リューリのマジックボックスに氷漬けされて入ってるよ。ちなみにこの事はまだ誰にも言ってない。成功して良かった、良かった。

 

 ダンジョンから出たのは準備期間最終日のお昼頃で、明日のコンテストにはギリ間に合い、その足でギルドに報告と換金、途中から来たリカルドやら騎士団にも、合成獣を省いた説明をして気付けばとっぷり夜になっていて、前夜祭とかであちこちから飲んでバカ騒ぎしてる声が聞こえてきた。

 

 何時もなら、あの騒ぎに突入したいと思うが、今はそんな気力はない。疲れた。もうその一言に限る。

 普段だったらここまでならないが、あの魔香のせいで無駄に結界を貼り続けていたから魔力消費が半端なかったし、鼻もまだ違和感だらけなのだ。


 ちなみに、溢れた魔物は私たちがダンジョンマスターであったデュラハンを倒した事でコアも落ち着きを取り戻し、魔香も回収、残り香があるがまぁ、そこら辺は大丈夫だろうと言う事で無事明日は迎える事が出来るようだ。

 

 

「……気になる事は色々あると思うけど、今は明日に備えなさいな。なぁに、いずれ分かる時がくるさね」


「そうだけどさ……」


「アリアがここまで疲れてるなんてすごく大変だったのね。でも、お兄ちゃんもアリアも怪我がなくて良かったわ」


「「……うん、なかったよ」」


「二人ともその間はなに?」



 言えない。

 リューリが本当は大怪我したとかなんて絶対、言えない。言ったら最後、ヘレンちゃん、イリスのタッグで心配のお説教が始まる。長いし恐いし、良心というか精神的なダメージがあるのだ。



「……二人とも?」


「いやー……。ねぇ? リューリ?」


「な、何も問題ないよ? ねぇ? アリア?」



 冷や汗ダラダラと流れる感覚がするが、今はそんな事よりもこの場をどう乗り切るか、だ。

 しかし、悲しきかな何も浮かばん。しかも、ヘレンちゃん泣きそうだし。


 そう二人してアワアワとしていると、ノック音が聞こえた。



「へ、ヘレン? 誰かが帰って来たんじゃないかい?」



 ヘレンちゃんの意識をそらすべくそう声を掛ければ、くるりんと表情を変え元気よくドアを開けると、リカルド達が入ってきた。



「今回も大活躍でしたね。アリア殿」


「かなり厄介な事になりそうだが、コンテストは大丈夫なのかい?」


「それについては、開催されます。あのダンジョンは入室禁止にして秘密裏に調査続行。その際、アリア殿とリューリには同行して貰う可能性がありますが、その際は声が掛かる予定です」



 リューリの反対側に座り話し合いの内容を簡潔に話していくリカルドには些か疲れが見える。

 まぁ、仕方ない。

 なんせ、ダンジョンの戦利品にあの魔香があったのだ。そりゃあ、騒ぎになる。

 効果が無くなったとはいえ、禁止魔導具が明らかに人為的に設置及び使用された形跡が確認されたのだ。



「……魔香はどうしたんだい?」



 あのムカムカしてくる香りを思い出しただけでもぶっ壊したかったが、我慢して持ち帰りその後の後始末を任せたが、気にはなっていたのでリカルドに問いかける。



「アレはアリア殿によって封印されていたので、危険は無いとはいえ見つかった場所も場所だったため帝王に進言、そして、魔法師団研究所にて解析に掛けられました」


「ふぅん……。ま、アレから分かることなんて少ないだろうがねぇ」


「……その様子だと、何か知ってるんですか?」


「鑑定したが、あれは壊れかけさね。それに所有者は無かった。恐らく壊れると踏んで破棄したんだろうねぇ。魔力残滓を追うにしても無理だろうねぇ。ま、アイツが入れば話は別だろうけどね……ふぁぁー……」


「……そこまでわかるんですか。ん? アイツとは?」


「あー……気にしなさんな。昔馴染みさね。魔法研究と道具作成が得意な変人エルフさね」



 フェアリアルキャットの記憶を思い出したが、本当に変人だ。珍しい魔導具や魔法事象を見れば寝食を忘れ、鼻息荒く解析に明け暮れる変態エルフ。

 あー……。嫌だ。アレにあの合成獣の事を頼むとか本当なんて考えんだろう。私よ……。


 私の話を聞き何か考え込み始めたリカルドは放って置いていいだろう。

 静かだと思っていたら、いつの間にかリューリ達は寝ててリカルドもそれに気付き、私達は揃って苦笑いをしたのだった。

 

 

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