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【75・シュタールツ帝国編2】

 そんなこんなで、馬車三台で移動の最中だが、護衛もBランクの冒険者パーティを一組付けている。

 一応、騎士爵とはいえ貴族の席に名を連ねる一族のライヘン家。護衛無しでの移動は外聞が悪い。

 だからといって、自領の兵士達を連れて来れば自領の防衛が手薄になる。ゼルバじいさん、シェリンダばあさんに鍛えられ、魔素の森という人間には脅威の場所と隣接している所に所属している兵士達が、そう易々と殺られるとは思えないが念の為にと老夫婦もお留守番だ。

 ぶっちゃけ金銭的にはあまり余裕はないが、こればかりは仕方ない。

 そういう意味もあり冒険者パーティに護衛の依頼を出した。

 まぁ、私としては全てを防御しつつ移動が出来なくもないが、流石に疲れるし面倒い。

 

 

「そろそろ国境とやらじゃないかい?」


 

 そんな事をリューリの膝の上でダラけながら思っていると魔素の流れが僅かに変わったのを感じたので、顔をあげ辺りの香りを嗅ぐ。

 すると、見えてきた国境の砦に窓の外を眺めていたリューリとヘレンちゃん二人の目が輝く。

 

 

「あらあら、二人とも落ち着きなさい。まだ、帝都には着いてないわよ?」

 

「わかってるけど、私も楽しみなの! アリアは行った事あるの?」

 


 二人の様子を見ていたイリスが騒ぐ前に子供たちを窘めるように微笑むが、隣国という遠出に楽しみを隠せないヘレンちゃんは笑顔で答えると、私を見てきた。



「ふむ……。帝国とやらに興味は無かったけど、祭りの美味い食べ物は食べてたねぇ。エルフの知り合いが色々と買ってきて食べ比べを近くの森でしたさね」


「え? 帝国内には行ってないの?」


「その頃の私はこんな感じに姿を変えられなかったし私自身は居ると何かと目立つだろう? だから、人間の集まる場所にはなるべく避けてたのさ」


「ほえー……。それじゃあ、今回が帝国内に行くの初めて?」


「そうさねぇ。…………ん? ちょいとリカルド、砦付近が騒がしいみたいだよ?」



 ヘレンちゃんとまったり会話していると、私の魔力探知に違和感。

 すかさず目の前に居るリカルドに言うと小さく頷き返される。



「了解しました。イリス、他の馬車に魔道具を使って通達。リューリはヘレンを守れるように警戒」



 迅速なリカルドの指示にそれぞれが返事をしていると、より砦に近付く。

 すると、この場の全員が把握出来るほどの魔力のぶつかりと戦闘音に緊張が走る。

 程なくして戦闘に巻き込まれ無い程度の距離に止まった馬車からリカルドと共に私は降りると、姿を元のサイズへと戻すと同時にこの三台の馬車全てが入るほどの結界と認識阻害の魔法を掛けた。



「アリア殿……」


「おやおや、魔物の群れに襲われてるさね」



 眼下で繰り広げられる戦闘に自然と身体は疼き、口元には笑みを浮かべてしまう。



「あれは、いったい……。ライヘン殿、どうします?」


 少し遅れて来た冒険者パーティ『暁の雫』のリーダーであるリンクが、私を見て少しビビりながらも、リカルドへと問いかけた。

 

 

「リカルド、私が行って蹴散らして来ようか? むしろ、行かせておくれ」

 

 

 ほぼ半日も馬車の中で大人しくしてたので、飽きてたし、発散させて欲しい。

 リカルドを見下ろすとまぁ、渋い顔だこと。

 暫く唸るリカルドは、諦めたようにため息をしてこちらを見あげた。



「魔物討伐をお願いします。くれぐれも、くれぐれも! 人間に危害を加えないでください」



 …………二回も言われた。そんなに信用ないの? 私。


 ちょっぴり切なくなった気持ちとこんな気持ちにさせた元凶である魔物に向かって飛び出し、苛立ち紛れに闇魔法『暗黒の渦』を放った。


 私の目論見通り真っ黒な球体は私の意思に従い魔物だけに触れ吸収していく。但し、以前は二〜三個だったが、本来の私の姿をもってすれば数とサイズが違う。例えるなら、以前が同じ数でもサイズはバレーボールサイズ。今は同じ数でもピンポン玉サイズで数は十数個。

 もちろん、こちらの方が威力、球体のスピード共に違う。



「まぁ、こんなもんかねぇ」



 球体を操作し、そんな事を『暗黒の渦』以外にも『闇の帯』とかで劣勢になっていた人間側のサポートをしていく。


全ての魔物を狩り終えた時、残っていたのは人間達と私、そして静寂な空間だけだった。


 

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