【73・キュウセイチョウ続】
程よい日差しとそよ風、足元はウッドチップが敷かれ柔らかさがあり森林浴にはちょうどいい感じに仕上がっている。
「なんでだよっ!!」
リューリの華麗なるツッコミが響き渡る。
「ちょっといきなりなに叫んでるのー? ほら、カオの木はあそこにあるよー!」
「ちょっと、アリアさん? 前に俺が来た時よりかなーり変貌してない? なに、某番組みたいな劇的な事しちゃってんの? 公園にでもする気? 魔素の森だよね?! ここ!」
矢継ぎ早に疑問符いっぱいに聞いてくるリューリ。
「いやー……。せっかく、カオの木を見つけて保護はしたけどそれだけじゃ勿体ないなぁーって思ってて、リューリが家で鍛錬してる間暇だから少しずつ綺麗にしました! ほら、植物って適度な陽の光と風も必要でしょ? それに根をしっかりさせるには地面もある程度は柔らかく栄養がないとね!」
「栽培する気満々だ!」
「間伐した木々はウッドチップにして地面に混ぜました!」
「環境的だね?!」
「ただねぇ。処理しきれない間伐材とかまだ残ってて今、枯葉とかと混ぜて肥料作成してるよ」
「俺よりなんか楽しんでるっ……!」
ショックを受けたように膝から崩れ落ちて嘆いているリューリ。
だってねぇ? せっかく貴重なカオの木。みすみすたトレントにさせるもんか。
魔素が濃いこの森でカオの木を守る為に、私は結界と浄化する為に聖属性の力を秘めた魔石を見つけて使用。
ただ、全く無くしてしまうのもダメだと思うので、通常の森ぐらいまで薄める程度に留める。
日差しが入る事で少しずつ浄化されはするだろうけど、なんせ魔素の森だ。油断してると魔物に荒らされるか魔素が直ぐに濃くなる事を見越してこのやり方を考えたのだ。
「ちなみに、他に3本ほど見つけたから此処に移植したの!」
「うわー……。森を開拓してる……。ていうかさ、なんか木が大きくない? もう立派な大木じゃん。実もたわわになってる」
「そうなの。成長が早くて私もびっくり」
二人して見上げる大木達にたわわになるカオの実。
まびかなくても全部がこの前見つけたサイズぐらいの大きさで期待が膨らむ。
「というわけで、リューリくん! この実、全部収穫しちゃって!」
「えぇー? アリアも手伝ってよー……」
「これも鍛錬の内! 魔法使わず狩りとってね」
「ゲッ! 一体何個あると思ってるの?! しかも、魔法使わないって……どう……取る……まさかっ!」
あ、リューリ、気付いたな? 私はリューリの背を押して、声援の代わりにガッツポーズで頑張って♪と送り出した。
リューリは私がどうにもならないと分かると、深ーくため息をしては、剣を抜刀術のように構え、姿勢を低くした。
「集中……。集中……。」
目を閉じ深呼吸しながら小さく呟いていると、リューリを中心に空気が音が静まる。
「スキル『抜刀・飛鳥』」
静かに鋭く聞こえるリューリの声。
同時に、ぐっと踏み込み走り出しながら剣を振り抜く。
すると、鳥の姿を模し凝縮した剣気が飛び出し羽ばたきをした。
ーーーボトボトっ!
羽ばたきで抜けた羽根が、鋭くカオの実の根元を貫いたのだ。
そして、リューリが木々の間を走り抜くと、鳥は先行するように飛翔し空中で消えたのだった。
「はぁーっ……!」
「ぉお! 新しいスキルじゃん! お見事! すごい、すごい!」
一連の動きを見ていた私は嬉しくなり、拍手喝采でリューリを褒めた。




