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【68・カオレート!】

 アリアを調理室から追い出しマスカさん達と共に片付けをしてやっと、やっっとカカオの実……じゃなくて、カオの実で念願のチョコレート作りを始めた僕はというと、料理長であるジンさんに教えてもらった、料理でよく使われる攪拌(かくはん)魔法でひたすらカオの実を潰してる。

 えぇ、そりゃあもう粉々にしかも、ただ攪拌(かくはん)させるだけじゃなくてなんか、舌触り? が滑らかになるようにと料理長であるジンさん指示のもと、マスカさんが僕の混ぜてるボウルに薬草を入れたんだけど、それから混ぜるのが更にキツくなってきた。



「坊ちゃん、攪拌(かくはん)魔法が不安定になってきてます。しっかりと、粒を潰しながら混ぜ続けてください」


「わかってるけど、ねっとりしてきてから重い!」


「それは、カオバターと薬草のせいですので、お気になさらず。マスカ! 砂糖を入れろ!」



 カカオバターならぬカオバターか。いちいち向こう(前世)と似てるんだよなぁ。

 それにしても、チョコレート作りなんて初めてしたけど、こうして作ってたんだなぁ。



「さあ、次は湯を沸かし湯せんしながらそのボウルに入ったカオレートを更に混ぜましょう」


「……カオレートねぇ。このまま冷やして固めるじゃだめなの?」


「出来なくはないです。しかし、カオレート特有の甘み、香りなどが生かしきれません」



 うん、それは嫌だ。

 そうして、混ぜる事数時間。湯せんに掛けてから混ぜやすくなるとジンさんがバットを用意してくれた。



「さぁ、後は冷やし固めるだけですが、大変な事実が判明しました」


「な、なに?」


「氷の魔石が足りません!! ただ、氷があればいいという問題でもないんです! ゆっくり時間を掛けて、冷やし固めるというカオレートの一番重要な局面なんです!」


「えぇー! ど、どうするの?」



 鬼気迫る勢いで話してくれた内容に僕は思わず後ずさりをしてしまった。

 だって、ジンさん、ヤのつく自由業みたいな強面なんだもん! そんな人がズズッと近付きながら言われてご覧よ! そんな人じゃないってわかってるけど、恐いって!

 しかし、困った。現代なら冷蔵庫という文明の機器を使って固められるけど、ここは氷が欲しかったら氷の魔石を使うか氷魔法の使い手という便利なようで不便な世界。



「冷やして……固める……。ジンさん、通常ならどうしてる?」


「通常なら氷の魔石を使って囲うように氷をドーム状に作りますが……。このままでは、囲えたとしても半円が限度でしょう。しかも、固まるまでこの魔石量でたりるか……」

 

「ふむ……。上手くいくか分からないけど、僕に任せてくれない?」

 


 僕は頭の中に閃いた事を実践しようと、ジンさんにある物を渡して、さっそく動き出した。

 


「このボウルが入るサイズの木箱に氷の魔石と風の魔石を、交互に並べ入れてそれぞれ発動させる。どちらも微風と冷気ぐらいにするんだ。そして、密閉して供給の魔石を蓋に置いて放置!」


「ほ、本当にこれで出来るんですか? 坊ちゃんのおっしゃる通りなら今の魔石でも全て事足ります。ですが、本来なら氷の魔石で作ったドームの中で固まらせるのに……」



 ジンさん、マスカさんが心配するのも無理ないし、ぶっちゃけ僕も心配だ。

 でも、冷蔵庫で冷やし固めるならたぶんこれで出来るはず。出来なかったらアリアにやって貰うしかない。



「心配かも知れないけど、今は時間に任せるしかないよ。それより、今のうちにカオレートを使ったパンやケーキが出来るよう準備しよう!」



 カオレートを使ったパンやケーキを作る為には、色々と忙しいからと僕が声をかければハッとしたように二人はテキパキと動きだす。

 そうして、準備をしながら数時間後試しにと箱を開けて確認すると僕の心配を他所にカオレートは固まっていた。

 

 

「坊ちゃんっ! やりました! カオレートの出来上がりです!」

 

「よし! じゃ、どんどん作って行こう!」

 

 

 そうして、僕達は勢いそのままチョコデニッシュパン、チョコチップクッキー、定番の板チョコを完成させたのだった。

 カオの実が一つとはいえ大きかったから出来たから良かったけど、ハハッ、張り切り過ぎたよね?

 ま、後悔は無いし、あの森で見つけた若木が回復して、また実を付けたら作るからいっか!

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