【63・キオク続】
「……魔石は魔力を吸収して、蓄え様々な魔石へと時間が経過する事に変化する。 それがあればダンジョンにもなるし、魔物や人間の糧になる。 人間社会を見てきて、フェアリアルキャットは学んだんだよ。 どちらにも有益な物があれば、争う事が少しでも減るんじゃないかってね。 まぁ、フェアリアルキャットは人間と魔物、両方とも好きだからそう願ったんだよ」
そう、たぶんだけどフェアリアルキャットの最後の願いは両種族の共存。力を持ち両方の社会を見て来たからこそ、不毛だけど願った僅かな想い。
「……まぁ、そこでなんで死んだ私の魂が、同じく死んだフェアリアルキャットの肉体に入って、転生という事になったのは、居るだろうこの世界の神様とやらしか知らないだろうけど」
「フェアリアルキャットの願いを叶えたんじゃないかな?」
「……願いを叶えた?」
リューリの言葉に森を眺めていた視線をリューリに移し見上げて問いかけた。 腕を組み考えながらのようにリューリは言葉を選ぶように続きを言った。
「うん。……ほら、僕は前世は病院で長期入院の末に死んだって話したでしょ? だから、何となくフェアリアルキャットの気持ちは分かるんだ。 もっと、世界を見たい。 もっと、やりたいことも食べたいものもあった。 でも、段々と身体が言うこと聞かなくなるんだ。 もどかしくて悔しくて、でも、これ以上、心配掛けたくない。 大切な家族とか友達とか少しでも悲しませたくない。 もっと……ってね」
「リューリ……」
「アリア、フェアリアルキャットはそのもっとを願ったんだ。それで、神様はその願いを叶えた。 フェアリアルキャットの記憶を持ちつつ、この世界を楽しんでくれる魂を探して、アリアが選ばれた。 たぶんだけど、僕はそう思う」
「なんだか、変な願い」
「確かにね。 でも、こんな感じに思ってた方がいい感じしない?」
「……うん」
リューリが優しく私の頭を撫でて来る。 考えが纏まりきらず、上手く説明出来なくて、もどかしく感じていたが、そんな事を忘れさせるくらいリューリの言葉は何故だか胸の中にストンと落ちた。
「と、ところで、話は変わるけどフェアリアルキャットはダンジョンを作ろうとしてたの?」
撫でる手つきに微睡みそうになっていた思考が、リューリの戸惑うような言葉に首を傾げた。
「うん? 作ろうとしたっていうか、あのまま行けば、魔素の淀みと魔石が吸収したフェアリアルキャットの魔力で自然と出来てたよ?」
「え? じゃ、じゃぁ、もしかして今はもうダンジョンになってる?後ろの洞窟」
……あ、何となくわかってきた。
「ははーん。 リューリ。 怖いんだぁ?」
「へっ?! い、いや、そんな事無いよっ? だ、だって、僕だってそれなりに強くなってるし? 冒険者なんだから怖がってたらダメじゃん?」
リューリくんや、冷や汗と吃り、早口でバレバレだよ?
「ふーん? なら、せっかくだし魔石回収がてらこれから行く?」
「きょ、今日はカカオの実の採取でしょ? あ、後にしようよ」
「大丈夫、大丈夫。 ダンジョンになってるかの確認だって」
話してみてスッキリしたのか、私は自然と今までの調子に戻ってきてニヤつきながらからかうように言うが、何故か立ち上がれない。
「リューリ、毛を引っ張らないで? 地味に痛いんだけど。 あと、立てない」
「立ったら行くでしょ」
「だって、ねぇ?」
「「ねぇ?」じゃない! 今日は行かないよ?!」
洞窟が気になる私を引き止めようとするリューリとの地味な攻防戦。
「ふっ……」
「くくっ……」
でも、どちらともなく私たちは何故か笑い出してしまった。 最初は小さな笑い声だったが、次第にそれは大きくなり、その場には私たちの笑い声が辺りに響いた。




