【58・帰ろうか?】
色々あった王都滞在も今日で終わりだ。 何かと色々あったが、思わぬ収穫などもあって案外悪くはなかった。
ただ、炊きたてご飯とか唐揚げ、味噌汁を熱々のまま食べられなかった事だけが非常に残念過ぎる。
まぁ、人外だし? なんならお猫様だし? そのせいか猫舌なんだよおおぉ!! 前世では猫舌じゃなかったのでその感覚で食べたらダメだった! くっそぉー……。
「はぁー……」
「アリア、まだ猫舌発覚にショック受けてるの?」
「当たり前さね……。 そりぁ、冷ませば食べられるけど、炊きたて、揚げたては一味違うじゃないか」
「まぁ、そうかもしれないけど仕方ないでしょ?」
「そうだけどさぁー……」
そんな会話をしながら私たちは宿屋前で待っていたリカルドと合流して、そのまま正門へと向かうと、王都に初めて来た時に見た姿が確認出来たので、隣に居るリューリに問いかけた。
「ねぇ、リューリくん? あの後ろ姿って……」
「なんか、嫌な予感がするんだけど……」
あら、リューリも同じ気持ちだったのね。 私達は思わず立ち止まりそうになるが、リカルドはそうじゃなかった。
「殿下?! なぜ、ここに?!」
「やぁ、リカルド。 今は殿下じゃないんだけどな」
「う"っ……すみません。 って、そんな事よりっ!」
「君達が今日、出立と聞いて見送りに来たんだよ」
はぁ……。 やっぱりファイだったか。 まぁ、魔力感知で何となくわかってはいたけど、当たって欲しくなかったなぁー。
相変わらず、キラキラしたイケメンだこと。
「アリア様、この度は本当にありがとう。 流石は伝説の魔獣、フェアリアルキャット様。 その類まれなる力、それをこの目で見られた事は本当に良かった」
「あの場にアンタは居なかったはずだよ。 まさか、スキルで見たのかい?」
「クスッ……。 それは秘密という事でお願いするよ」
ファイはリカルドから視線を私に向けて見上げて礼を言うと、随分と様になっている姿で微笑み煙に巻いた。
「あ、そうだ。 ギリギリになってしまったけど、父上からくすね……じゃなくて、預かってきた書状を持ってきたよ」
「ありがたいですが、勝手に持ってきてはダメですよ」
ファイは肩にかけていたカバンから丸く筒状に巻かれ、王家の家紋が書かれた書状をリカルドへと渡した。
受け取った書状を大切にカバンへとしまいながら苦笑い気味にファイへと注意するが、本人は何処吹く風のように気にした様子もない。
それどころか、リューリに向き直ると、ニコニコと笑みを浮かべると、肩をわざとらしくすくませた。
「渡し忘れていた本人が悪いんだ。 全く、僕が届けなければ後が大変だったのにね?」
「えっと、僕に同意を求められても……」
困るリューリ。 そりゃそうだ。 なんでわざわざ巻き込まれに行かなくちゃならないんだ。
そんな私たちを遠巻きに気になって集まってきた街の人々。 うわっ、ごちゃごちゃしてきた。
「ちょいと、もういい加減出立しないかい?」
人集りがウザくなってきた私はリューリ達にいうと、はっとしたように周りを見てそそくさと歩き出したリカルド。
いかに冒険者風の格好をしているとはいえ、目立つ王太子殿下であるファイを連れて歩くと私を見る目とは別の視線がファイに向く。 カッコイイもんね? 私もそっち側に行ってこのイケメングループを眺めたいよ。
「本当はこのまま君達に着いて行きたいんだけどねぇ」
「それは絶対にダメです」
「僕もある程度は動けるから足でまといにはならないはずだよ?」
「そういう問題ではありません」
「つれないなぁ」
前を歩くリカルドとファイの会話を後ろから聞くが、負けるな!リカルド! 負けたら絶対厄介事になる!
念話でリューリに話しかけると、リューリも呆れていた。
『リューリ、あの自由さは絶対、国王似だよね』
『そうとしか考えられないよ。 はぁ……。 今頃、城は大騒ぎだろうなぁ』
『確実にそうだろうけど、そろそろそれも終わりだよ』
『え?』
門前に着くと遠くから馬の駆けてくる蹄の音が聞こえてきた。
念話を止めると同時に皆の足も止まる。
近付いてきた蹄の音に振り返ると、怒りの形相をした国王が馬の手網を握りこっちに来た。
「ファイーーーー!!!」
「げっ、父上」
兵を数人連れ立って来る中には宰相さんの姿もある。
「勝手に書状を持って行く奴がいるかー!!!」
軽やかに馬から降りた国王は軽装でズカズカと歩くと、そのまま周りが止める間もなく腕を振り上げファイの頭上にゴンッ!!とゲンコツを落とした。
うっわ、痛ったそー……。
その音と勢いに私とリューリは思わず首をすくませ、リューリなんかは更に頭を両手に当てて抑えた。




