表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今世ではまさかの猫です。〜猫の手も借りたいようなので貸してみた〜  作者: 夢幻望
第一章《人外転生と転生者の出会いと冒険編》
67/104

【55・セイマイキ】

 魔物暴走(スタン・ビート)が終わり、数日経つと宿屋もそれ関係で集まっていたと思われる冒険者達が少しずつ減っていき、何処か浮き足立っていた空気も落ち着きを取り戻した今日、私とリューリは再び王城へと呼ばれた。



「連日お呼びたてして申し訳ありません」



 中庭のような場所へと兵士に案内されて着いていくと、そこに待っていたのは宰相さんだった。


 その宰相さんの後ろには白い布が掛けられた『何か』が置いてあるのに気付き、私は危険がないか鼻をヒクつかせる。 どうやら、危険な物ではない。 魔力探知を使い探ると僅かに魔力を感じた。



「宰相さん、気にしないでください。 でも、今日はどうしました?」


「おや、迎えに向かわせた者は何も言っておりませんでしたかな?」


「彼奴なら私にビビっていたからちょいとからかったら城に来るようにと早口で言って逃げちまったよ」



 全く失礼な奴だったよ! リューリと一緒に裏庭でお茶とお菓子を食べてのんびりしながら、精米機が来たら米を炊いて、おかずは何にしようかとか、ライヘン領へそろそろ帰る準備しなくちゃなぁー…とか話していると文官らしき人がやってきたのだ。


 私を気にしながらリューリと何とか話をしていたが、ちょっとした悪戯心で私は足元に擦り寄ってやったのだ。


 すると、面白いぐらいに飛び上がり逃げてしまい詳しく話を聞きそびれてしまった。



「アリアが本当にごめんなさい! あの後、きちんと叱ったので、こんな事はないと思います!」



 リューリは私の頭を掴んで無理矢理下げさせる。 ぐぬぬっ! 痛いじゃないか! 私はイヤイヤするように頭を振って避けようとするが、がっしりと毛を掴んでいる為、無理に動けばさらに痛い。おのれ、リューリめぇ…。



「ははっ! いやいや、気にしないでください。 むしろ、その文官にはもっと精神的に強くなって貰わないといけませんね」


「で、でも……」


「いいんですよ。 さぁ、それよりこちらをご覧ください」



 宰相さんにそう言われたリューリは私の頭から手を離した。 あー…痛かったぁー…。 離された頭を撫でて労わっていると、リューリは宰相さんに呼ばれた。



「あの、これは?」


「大変お待たせしました。 こちら『精米機』です」


「なっ?!」


「えっ?!」


「お待たせして、申し訳ございません。 何分少々、特殊な物でして準備に手間取りまして遅くなってしまいました。 機能については……」



 白い布が取られ姿を見せたこの世界の『精米機』。


 想像にあったのは前世のスーパーの片隅にどんっとあった精米機だが、ここのは違う。 まず、サイズが小さい。 例えるならフードプロセッサーみたいにコンパクト。 中身は見えないが、魔石がボタンのように付いている。


 夢中になって『精米機』が置かれたテーブルの周りをぐるぐる回るがコードらしきものは無い。 宰相さんが使い方とか説明してるけど、そんな事より早く動いてるところをみたい。


 私は好奇心に負けて、正面に戻れば右前脚を伸ばして魔石へとかざした。



「ぉお……!」



 静かにふぉんっ…と音を立てて『精米機』は動き出した。



「あっ! アリアったら勝手に動かさないでよ!」


「いいじゃないか! ほら、見てみなよ!」



 説明を聞いていたリューリが私の行動に気付き慌てて止めに来るが、動いている『精米機』を顎で示すとそちらに視線を動かした。



「これは、風魔法?」


「はい。 魔石に風魔法の術式が込められておりますので、これで動きます」



 リューリの呟きに宰相さんが頷き、さりげなく止める為に再び魔石に手を翳す。 すると、『精米機』は止まったのだった。



「これには複雑な魔法回路が繋がってるねぇ」


「分かるの?」


「ん、何となくしか分からないけど、魔道具技師、付与術師などが絡んでるねぇ。 私じゃこの動きを再現出来ないさね」



 悔しいが、いくら魔法が得意でも使い方が違うので私には出来ない。 つまり、壊れたら大変な事になるのは必須。 大切に使わなくては。



「おやおや、かの有名なフェアリアルキャット様にそのような事を言わせたと伝えたら、技術者達は諸手を挙げて喜びますよ」



 ぐぬぬ……。 本当に悔しいっ!



「な、何はともわれ! 僕達の為にこのような凄い物をありがとうございます! 大切にします!」



 受け取った『精米機』をリューリはマジックボックスにそそくさと仕舞って笑顔で頭を下げると、私達は城を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ