【45・サケ】
さて、まさかの展開に驚きはしたもののしょう油、味噌、玄米まで手に入れた私達はリカルドと合流する為、宿に戻ってきた。
日も暮れていた事もあり一階の食堂は混みあっていた。
私はというと、当然ながら裏庭ですよ。小さくなったとはいえ魔獣だし食べ物に毛が入ったらあれだしとね。あと、皆、怖がってた。………いい加減、泣くぞ。
「アリアー?」
「……… 私も揚げたて焼きたて作りたての料理食べたかった」
「はははっ……。仕方ないって。ほら、お願いしていっぱい作って貰ったし、アリアってお酒飲める? 飲めるなら父さんがブドウ酒買ったから一緒に飲んであげて?」
簡単に私用のテーブルを用意して、その上に色々な料理を並べていくリューリ。
「ブドウ酒?」
「はい。知り合いの鍛冶屋をやっているドワーフ職人に買ったのですが、余分に自分の分も買ったので、良かったらどうです?」
「んー……。このコップ一杯分だけならいいさ」
リカルドから聞くと手前にあるコップを私は器用に挟み持って差し出した。猫の手だとこれが限界だ。
差し出されたコップにリカルドはブドウ酒を注ぎ、私は味見をするように少し舐める様にそれを飲んだ。
「大丈夫?」
「ふむ……。これくらいなら大丈夫さね。ただ、少し、味に深みが足らないねぇ。もう少し熟成させた方がいい味になるかもよ?」
心配そうにリューリが見てくるが、これくらいなら問題ない。前世は全然飲めなかったが、このフェアリアルキャット、なんと酒を結構飲んでた。気まぐれで人助けとかすると、お礼として酒をせびってたぐらいだ。
その記憶からして、このブドウ酒は勿体ない。熟成すれば、もっと味わい深いものになりはずだ。
「熟成……ですか? 私からすると、充分美味いと思いますが……」
「ふん。そりゃ、これ以上の酒を飲んだ試しがないからさね。人間は高い金を出せば美味い物が飲めるんだろう? それもわかる。ただし、このブドウ酒に関して言うならもっと寝かせるといいと言ったのさ。リカルド、この酒を樽一つ買う事は出来るかい?」
一人と一匹で酒を飲み交わす姿はなんとも微妙だが、諦める。酒の肴はこの綺麗な夜空と食堂の料理。うん、それで充分だ。
「うーん。買えると思いますが、どうするんですか?」
「そんなの簡単さ。ライヘン家に地下でも作って寝かせる。そして、出来れば、このブドウ酒を参考にライヘン家でも酒を作ってしまうのさ。熟成させなくちゃならないが、それを待てば美味い酒が飲める。いいじゃないか」
「………。いいですね。作りましょう!地下酒蔵!」
「ちょ、ちょっと二人とも誰がそんな事するのさ!母さん達が怒るよ!?」
「リューリ、安心しなさい。元は全員冒険者だ。多少なりとも飲めるし、なんなら、おばあちゃんは我がライヘン家一番の酒豪だ。次席でおじいちゃんだ」
「………おばあちゃん、凄い」
「おばあちゃんと飲み比べして勝った人を俺はまだ見た事ないぞ」
なんと、あのシェリンダおばあちゃん、見た目に反してかなりの酒豪か。さぞ若かった時は酔わせていい事しようと企んむ奴が多かったに違いない。それをことごとく逆に酔い潰し、酒代を浮かせてたな。
そんな衝撃の事実を知った私と隣でジュースを飲んでいたリューリは、お互いに口元をひくつかせてシェリンダおばあちゃんはやっぱり恐いと再認識したのだった。
「アリアさん、まだ飲みます?」
「いや、この身体じゃ酔いが回るのも早い。この一杯で充分さね。それより、リカルド。王宮から使者とやらは来たのかい?」
「あぁ、それなら二人が帰ってくる少し前に来ました。明日、登城して欲しいとの事です」
「うわぁ……。明日かぁ。緊張するなぁ」
「なあに、明日だけだし、悪い事にはならないはずだから安心しなさい。ただ、服装はしっかりとした物にするから間違えないようにして、お前はアリアさんの側にいなさい」
「アリア……。頼むから大人しくしててよ?」
「ふん。私をいいように使おうとしたりしなけりゃ良いだけさ」
明日が登城と聞くと、リューリは緊張し始めたが早すぎるって。それに、何度も言うようだけど、私がまるでいつも暴走しているようじゃないか。心外だなぁ。
そんな感じで、私の食事兼小さな飲み会は終わりを告げた。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
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