【40・久しぶりのヒトリ】
ファイという思いがけない人物との出会いを果たした私達は、宰相の言葉が気になりリカルドに聞こうとしたが、時間が夕方に近付いているという事もありとりあえず宿に向かって歩き出した。
『父さん、もしかしたら国王と知り合いなのかな?』
『その可能性が高いねぇ』
『でも、なんでだと思う?』
『さぁ?どうやら、ファイの脱走は父親譲りっぽいから、国王も若い時は脱走とかしてたんじゃないのかい?その時に会ったとか?』
『あー……なるほど……』
リューリと念話で会話しつつ宿へと着くと、再び私は小さくなって中に入ろうとした。
「いらっしゃい!あぁっと、従魔は裏手にお願いだよ!他のお客さんに迷惑だからね!」
「あ!ご、ごめんなさいっ!」
「っ?!」
な、なんてこった!私は別?!思わず、声を出しかけるがギリギリセーフ!あっぶなー……。
宿の女将っぽい人に言われた私達は裏手に周り従魔用の小屋らしい所に来たが、見た目が馬小屋。
「えぇー!!私、ここで寝るのかい!?」
「し、しょうがないでしょ!ほ、ほら、ここなら少しは大きくなっても大丈夫だよ!」
「で、でも私はも、元はにんっもががっ!」
「あ、アリアそれは言っちゃダメだって!」
小屋を前にして、私はショックから思わず言ってしまいそうになり、リューリによって慌てて口を塞がれ小声で注意された。
『マジックボックスに家で使ってた布団あるから!』
『なに?!なら我慢する!』
『なんで、野宿は平気だったくせにっ!』
『あれは、アンタらも同じだったから我慢出来たんだよ。はぁー……。それに、野宿はフェアリアルキャットとしても慣れてるからねぇ。それにしても馬小屋みたいだよ』
『アリア……。ご、ご飯は此処で3人で食べよ?ね?』
しょんぼりする私を見かねてかリューリは優しく言ってくれたので、頷いて頭をリューリに擦り寄せると優しく撫でてくれた。
♢♢♢♢
あれから、リューリはリカルドに説明するとリカルドは頷いて飲み物と料理を持ってアリアの居る裏庭にやってきた。
ちなみに、女将さんに食事は従魔と共に食べると言ったら珍しくないのか、快く快諾して何ならとリューリ達の料理を手早く用意して渡してくれたらしい。
私の分の料理をリューリは準備して、リカルドはリューリが出したテーブルと椅子を用意しているのを眺めていると辺りには肉の焼けるいい匂いがしてきた。
「んー!いい匂い!ねぇねぇ、まだかい?」
「あっ、ちょっ、危ないって!」
「アリア殿。リューリの邪魔してはいけませんって」
「リカルドー……。ごめんって。」
料理が出来上がるのが待ちきれない私はいつの間にかリューリの周りをウロウロしてた。それを見かねてリカルドは小さくなっていた私を抱き上げリューリから離した。
「父さん、ありがとう」
「いや、父さんもリューリの料理が楽しみだからな。しかし、早くした方がいいぞ?アリア殿からヨダレがたれてる」
「はっ!ヤダ、恥ずかしいっ!」
指摘されて慌てて前足で垂れていたヨダレを拭っていると二人から笑われた。
そして、やっと出来てきた料理はなんとステーキ!やったー!
「アリアにはここまで頑張ってきて貰ったからね。今夜は奮発していっぱいステーキとラズベリージャムのデザート用意したから!」
「やったー!早く食べるよ!」
「ちょっと、アリア殿っ?!ぶっ!!」
リカルドの抱っこから逃げ出して、私が食べやすいようにと切られたステーキの前に降り立つと、早速食べ始めた。ん?なんか、蹴った気がするけど、気のせい気のせい!
「………大丈夫?父さん?」
「いてて……。な、なんとか……」
リューリは私の様子にため息するとリカルドに近付いて心配するが、リカルドは私に蹴られた顎をさすって苦笑いをした。
そして、二人もテーブルに座り食べ始めてしばらくすると、リカルドが話し始めた。
「そういえば、気になってるだろう俺と国王の関係だが、まぁ、なんとなく予想はしていると思うが、あれだ。まだ、俺やお前の母さんが冒険者時代の時のパーティメンバーだったんだ」
「ぇえ?!こ、国王様と?!」
「いや、昔は王太子だったし出会った頃なんかは知らなかったんだんだよ。ただ、彼奴は剣と魔法の腕は良かったんだが、何かと好奇心というか興味が尽きないというか、中々のトラブルメーカーでな?ダンジョンに潜った際は大変だった」
昔を思い出しながら話すリカルドは何処か疲れた様子だった。
「だから、今回の勅命なんて大層な事を言っているが、父さん的にはアイツの考えてる事がなんとなく分かる。だから、最初は手順を踏んで会わないようにしたんだが………」
「無理だったんだね」
「そういう事。はぁー………。」
重いため息を零すリカルドになんか、同情したくなってきた。たぶんだけど、悪いようにはされない気がする。なんとなくだけど、そんな気がする。
リカルドと国王の意外な関係を知った私達は顔を見合わせて、肩をすくめるとリューリはリカルドを労るように、宿から持ってきた酒をコップに注いだ。
食事を終えると二人はそれぞれ宿の中に戻っていった。久しぶりの一人。なんとなく寂しく感じるのは、外にいるせいかそれとも人間だった時の感性のせいか分からないけど、見上げた夜空は、前世では見た事のない綺麗な星と月が瞬いていた。
「騒がれるのは面倒だけど、こうも静かだと逆に変な感じだなぁー……」
そんな独り言を呟くと、明日に向い私も眠りについたのだった。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
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