【34・森で一泊再び】
王都に向かって旅を始めての二日目、私は再びリューリとリカルドを乗せて走り出した。
「あー……また、これかい。暇だねぇ」
街を出て再び南西の方角をひたすら走ると、私は平和過ぎて暇になってきた。
「いや、何言っての。オークの群れの間を容赦なく突っ切って鬼ごっこになってたじゃん!めっちゃ怒ってたよ?!」
「なんだい?肉でも足りないのかい?だったら少し狩れば良かったかねぇ」
「そうじゃない!まだ余裕はあるけど、僕も父さんも焦ったから!」
「ふん。オークなんかが私に追いつけるわけないんだ。心配することないじゃないか」
私とリューリはそんな事を言い合いながら森に入って、ほぼ一日、もう夕方に差し掛かった時、ふいにそれは訪れた。
「アリア殿……」
「ふむ……流石、リカルド。気付いたかい?」
それまで静かだったリカルドが何かに気付き辺りを見回し私に声をかけてきた。流石は元Sランク冒険者。素直にそう褒めると一人だけ分かってないリューリは父に問いかけようとするが、私が立ち止まった事で口を噤んだ。
「出てきなさいな……。いつまで隠れているつもりだい?」
私はある一点を見つめじわりと抑えていた魔力を出すと、出てきたのは鶏の姿に尻尾は蛇のコカトリス。
「コカトリスだっ!!」
「リューリっ、目を閉じろ!!」
と、まぁ、その対処法は有名だし間違ってはない。でも、アンタら私が結界魔法使える事忘れてないかい?
コカトリスがこちらに気付き石化する目を向けてくるが、私が展開した結界によって弾かれた。
「ふん。甘いねぇ」
通常、コカトリスの石化にかかったらエリクサーか神聖魔法での治療が必要である。ただ、どちらも早期治療をしなければ意味の無いもの。ま、全てフェアリアルキャットの記憶だけどね。あと、思い出したのは卵の存在。
なので、コカトリスを知ってるリカルドならアレといえば通じるはず。
「リカルド、コカトリスが居るという事はもしかしたらアレがあるかもしれないからリューリを連れて探してきな。こいつは私が引き受けてやるさね」
「アレとは……ふっ、分かりました。探してきます」
「父さん、アリア、アレって?てか、石化は………」
「石化は私の結界で弾かれてるさね。なぁに、アンタらにも別に張ってやるさ。アレってのはリカルドが知ってるから聞きな」
二人を背から降ろしながらそう話すと石化が効かないとわかったコカトリスはこっちに向かって突進をして来ようとしてきた。
「ほら!さっさと行きな!」
私に急かされると二人は茂みの奥に走って行った。もちろん、結界を私とは別にちゃんと張ってね。
私はというと、コカトリスの突進をジャンプで避けながら闇魔法『影鞭』で目と尻尾の蛇を中心に縛るとそのまま後ろ脚で蹴り飛ばし転がした。
「コカトリス。私を恐れず襲ってきた勇気は認めてやるさ。私も味気のない旅で飽き始めてたからちょうどいい。ただし、アンタの卵は貰うからね?」
「ゴゲゲゲッ!」
「なに?許してくれ?冗談じゃない。自分の運の悪さを呪うんだねぇ」
コカトリスを踏みつけながらいたぶる私はさぞ悪役っぽく見えると思う。我ながら怖いね。
あの二人の為に蛇を風魔法を纏わせた爪で切り落とすと悲鳴を上げるが、煩いだけ。これでコカトリスはただの鶏。その身に流れる毒も蛇を切り落とした以上、血と共に流れるから死んだらその肉は美味く食べられる。血抜き大切。これ絶対。
すると、茂みをかき分けて顔を見せたリカルドの両手にはコカトリスの卵が二個抱えられていた。その後ろから姿を見せたリューリも卵を一個抱えていた。
よっしゃー!!
「ふん。やっぱりあったねぇ」
「はい。三個だけでしたが、ありましたよ」
「コカトリスの卵……食べられるんだ」
「あぁ、さっきも教えたようにコカトリスは群れを作って行動はしないが、産卵期になると番が出来る。雌は小さく、さほど危険ではないんだ」
「危険なのは雄のコイツだけ。だけど、身まで食べれるのは雄だけなんだよ。雌はどうしたんだい?」
「雌は逃げたよ。父さんが追わなくていいって」
「それでいいさね」
コカトリスの卵を見ながら私はそう話すと、さっそく卵料理をリューリに催促した。
「卵一個で結構いい大きさだから後は取っておきな。ほれ、リカルドはコカトリスを捌くんだよ」
そういうと私は結界を張って、一休みに入った。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
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