【33・王都に向かって続々】
リケアの街の宿に着くとやっと安心から息を吐いた。今回は父さんに任され色々と準備をしたけど、街道沿いを行く予定で準備したのに早々と意味がなくなった。
「はぁー……父さん、予定がかなり前倒しだし意味がなくなったよ」
「ははっ…アリア殿には驚かされてばかりだな。前倒しになる事はいい事だ。王都に着くまでの寄る街とかの従魔が大丈夫な宿さえ分かって居れば良いだろう」
「うん。そうする。どうせ、明日からも道なき道を行きそうだし……」
寝てしまったアリアを起こすのは可哀想だと父さんと話して下に降りると、食事のいい香りがしてきて賑わっていた。
あー……お腹空いた。アリアには取り分けて置いてそれを渡せばいいか。空いている席に座り注文をすると、滅多にない父さんとの2人だけの食事になんだか楽しい。
「リューリ、ニコニコしてどうした?」
「へっ?!そ、そんな顔に出てた?!」
僕は顔をペタペタ触ると、父さんは笑い出した。
「ククッ…変な物は着いてないさ。それより、なんでそんなにニコニコしてたんだい?」
「う"……。どうしてって……その……父さんとこうして他の冒険者に混じって食事してるのが……楽しくて……その……う、嬉しいんだ……」
「リューリ……」
「あ"ー!もうっ、どうせ、子供っぽい事言ったよ!ハズっ!無し無し!聞かなかった事にしてっ!」
理由を聞かれしどろもどろになりながら僕は正直に言った。だって、父さんの冒険者時代は話でしか聞いた事無いし、前世の親父はパン屋一筋。そりゃあ、あの親父の後ろ姿とお客さんが笑顔で買って行く姿に憧れはあった。まぁ、道半ばで僕は死んだけど……。
だから、こうして父さんと冒険者みたいに出来る事は嬉しかった。……目的地が王都で国王陛下に謁見するっていうのが無かったらもっと良かったけどね。
「………と、父さん?」
急に静かになった父さんが気になって下げていた顔をあげれば、石のように固まっていた。えっ?!ど、どうしたの?!
「リ、リューリ!っ……うっ……と、父さんも嬉しいぞっ……息子とっ…こうして居られるのがっ…!」
「なんで泣くのさっ!ちょっ、ちょっと、恥ずかしいってば!お酒の飲みすぎだよっ!」
何が悲しくて父さんの男泣きを目の前で見なくちゃならないの?!
アワアワと慌てているとさっきのおじいちゃん店主が来て、僕たちのやり取りを見ていたのか父さんの肩を叩いて笑っていた。
「リカルドさん、いい息子さんだねぇ。自慢じゃないか」
「ぅう"………。俺にとっては出来すぎな子供です……昔からあまり手のかからない子でしたがっ……いつの間にこんなっ……」
「ちょっ、そこまでっ?!」
父さんの様子に居た堪れない僕は、思わず『アリアー!父さん止めてー!』と念話でアリアを呼んでしまった。
僕の呼ぶ声に階段から降りてきたアリアは父さんを見て首を傾げた。
『………何かと思ったらなんだい?あの酔っ払いは。リカルドは泣き上戸?』
『……父さんと食事してただけのはずなんだけど、結構、呑んでたみたい……』
『……はぁ……。』
面倒臭いって感隠しもしないでため息された。うん。ごめん。事の一旦を起こした身としては、申し訳ない。
『とりあえず、泣きながらも呑んでるのを水に変えな。これ以上呑んでると悪酔いしそうだからねぇ。あと、念の為、二日酔いの薬を貰っておきな。もしかしたらあるかも。無かったら昼間に採った薬草を飲ませるんだねぇ』
『わかった』
アリアの提案に頷くとおじいちゃん店主に水を貰って、さりげなく父さんのコップを水のものにかえて、薬を聞けばあるとの事で念の為貰っておいた。
そのあとは、泣き止んだ父さんを少し大きくなったアリアが押して、なんとか部屋に連れて行って事なきを得た。
「はぁー……。全く、部屋でご飯を待ってたのに……」
「ごめんごめん。今、渡すよ」
不機嫌そうに尻尾をベシベシっとやり始めたアリアに苦笑いをして、先程までに取り分けたご飯を出すと、最後にお詫びとしてドライフルーツのはちみつがけを出して許してもらった。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
今回はリューリくん視点でした(笑)
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