【29・ホウシュウ】
初冒険をしてから数日たったある昼下がり、テラスでのんびり日向ぼっこをしている私に、リューリが知らない人間を連れてやって来た。
「アリアー。冒険者ギルドの職員さんが一緒にギルドに来てくれってー」
「…………は、はじめまして!ギ、ギルドマスターより先の買取金額査定などが終わりました!ご予定が無ければ、冒険者ギルドへ来て欲しいとの事です!
」
なに?!終わったなら肉が手に入る!
「リューリ!パン作りは止めて行くよ!」
「……だと思った。準備してくるから待ってて」
「早くしな!」
やっと、あのブラックサーペントの肉が食べられる!待ってたかいがあるね!
パン作りをしていたリューリを急いで着替えに行かせて、私は寝そべっていたベンチから降りると伸びをして玄関へとギルド職員を伴って向かった。
♢♢♢♢
「いやー……時間がかかってすまねぇな」
冒険者ギルドに着くと先程の職員に案内を任せていると、カウンター奥へと案内された。ギルマスの部屋の前でドアをノックをすると、中から「入れ」とギルマスの声。
私達はその声を聞くと中に入り職員は私達を入室させると、そのまま帰って行く。
そして、ギルマスから謝罪の言葉。それを聞くとリューリは慌てて頭を下げた。
「こ、こちらこそわざわざ呼びに来てくださってありがとうございます!別に謝られる事ではないので、気にしないでください!」
「おいおい、お前はライヘン家の坊ちゃんだぜ?貴族が俺みたいのに謝るんじゃねぇっての」
「そんな事関係ありません!貴族とはいえ、僕自身は一介の冒険者。ギルドマスターは僕からすれば、上司です。礼儀は大切ですし、何より父の元パーティメンバー。お世話になっているのは、僕達の方です」
「かぁーー!これが、本当にアイツの子供かよ!なんつー礼儀正しい子供なんだ!」
話が弾む二人にため息をすると、話を進めるべくギルマスに声をかけた。
「ちょいと、そんな話よりブラックサーペントの話が先だよ。早く、肉をおくれ!その為に私は来てやったんだ」
不満気に尻尾をビタンビタンっ!肉!ブラックサーペントの肉ー!早くっ!
「おぉ、そうだった。いやー…この前はフェアリアルキャットが居るって事で柄にもなく緊張しちまってな!あー…、そこの俺の机に置いてある袋全てが報酬だ。合計金額345金貨だ」
「……………え?」
「だから、金貨345枚だって」
「えぇーー!!そ、そんなにっ?!」
「驚くよなぁ……。俺も計算した時は驚いたぜ……。こんな金額、俺がギルマスになって以来、初めてなんだぜ?」
リューリはギルマスの言った金額に一瞬信じられなかったのか、聞き返すがその金額は変わらず、日本円に換算すると、345万円。そりゃぁ、驚くよね。
すっげー……。13歳でかなり金持ちじゃん。良かったね!さすが、私!
「あー……驚いてるとこ悪いが、内訳は聞くか?」
まだ、固まっているリューリの代わりにため息をして、私が聞く事にするか。
「まったく……。簡単でいい済ませておくれ。詳細は紙に書いておけばいいさね」
「お、おぉ……。えっとだな、ざっくり言えば討伐成功報酬が金貨100。冒険者ギルドから買取金額が解体料金を差し引いて金貨120。商業ギルドから買取金額が金貨110。残りがポイズンニードルの情報料として専門冒険者パーティから金貨15だ。切りのいい数字になっただろ?」
「へぇ、商業ギルドも頑張ったねぇ」
「かなり、この肉でこっち(冒険者ギルド)と揉めたがな。アイツら肉まで目を付けてきたが、坊ちゃん達とこっちで別けるのは決まってたから諦めさせたぜ」
「アンタらも随分出してくれたじゃないか」
「そりゃ、ブラックサーペントだ。色々といい素材になるからな状態も良かったしサイズもデカかったからよ。頑張らさせてもらったぜ」
「ふん。当然だね。………ちょいとリューリ。いつまで惚けてるんだい。いい加減にしな」
私がギルマスと話してる間も金額に驚き過ぎて惚けてるリューリの意識を戻す為に、私は尻尾でリューリの頭を叩くとハッとして恐る恐る金貨が入った麻袋の前に行った。
「………生まれて初めての大金」
「ガハハッ!そりゃそうだ。俺だって見慣れない金額だ。坊ちゃん、その金貨を仕舞ったら倉庫まで行くぜ?」
そう、私にとって金貨など意味の無い物だ。それよりブラックサーペントの肉の方が私にとっての報酬だよ。
リューリは金貨の袋をマジックボックスに仕舞うと、私と共にギルマスの後を追いかけるように倉庫へと向かった。
「坊ちゃん、アリア様、今回は非常に俺にとってもいい経験となりました。ありがとうございます!」
倉庫に行くと解体作業の人が、達成感と自信に満ちた笑顔で私達の事を迎え入れてくれた。
「ブラックサーペントの肉はちゃんと、同じ重さで分けて、保管室に置いておいたぜ!」
「あ、ありがとうございます」
リューリは慌てて礼を言うと、ブラックサーペントの肉をマジックボックスに入れた。
「……これが、ブラックサーペントの肉。半分でも大きいね」
「これだけあれば、色々と食べられるねぇ」
私は肉の量に嬉しくなり、早く食べたいのを堪えながらリューリが仕舞い終えるのを見守っていた。
「よし、終わった!」
「なら、さっさと帰って料理しておくれ」
「ハハッ!流石のアリア様もブラックサーペントの肉が待ち遠しいか!」
私達の様子に解体作業の人は笑うと美味いもんなぁ。と呟き、私とギルマスは頷いて帰り支度をする私達を見送る為、一緒に倉庫を出た。
「それじゃぁ、また何かあった時は頼むぜ」
「はい!今日は色々とありがとうございました!」
ギルマス達に別れを告げると、私達はライヘン邸へと帰ったのだった。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
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