【26・パニック】
昨晩はリューリの限界も知れたし、後は細かなコントロールをおいおいやればいい。まぁ、纏ったり制御するのは、常にやり続ければ体内魔力の量も増えるからこれは継続。
「ふぁぁ。やっと、帰れるー!」
朝日を浴びて伸びをするリューリに合わせて私も隣で身体を伸ばして、欠伸をした。
「昨日の内に帰れたんだけどねぇ」
「いいの!元々、今日、帰る予定なんだしね」
「はいはい……」
朝食のパンを幾つか食べると私達は森を帰るために歩いていると、リューリが何かに気付き帰り道とは違う茂みへと入ってしまった。
「ちょいと、お待ち!そっちじゃないよ!」
「わかってる!……でも、なんか、音が聞こえるんだよね。アリアは聞こえ無かった?」
そう言いながら茂みを抜けようとするリューリの襟首を噛みなんとか私は止める事が出来た。
あっぶなー……。その先には行って欲しくないんだよねぇ……。鳥肌が既にたってて生理的に無理。
「……聞こえてるさね。嫌だよ、私はこれ以上行くのは」
「ぐぇっ!っ……げほっ!い、いきなり、何するのっ」
「静かにしな。奴らにバレるよ」
リューリの頭を前脚で抑えながら、私は声を潜めて前というより一本の木を見据えた。
「……何がいるの?」
「前世で私がもっとも苦手な奴らさ。あー……鳥肌が止まらない。全く、まだ見つかってないからいいけど、見つかったら嫌なんだよ」
「…………だから、な………に?あれ?」
「………ポイズンニードル。ようは蜂の一種さ。蜜はかなり甘くて美味いんだが、奴らは敵に対して数で攻めてきて、しつこいんだよ」
リューリは未だに正体がわかっていなかったが、私の目線を追って木に実のようにあるポイズンニードルの巣に気付くと、顔を引き攣らせ顔を青くさせた。
そう、前世の私がもっとも苦手としていた奴らとは虫だ。特に一匹居たらその数倍は居ると言われる黒光りする奴は許せん。抹殺司令がけたたましく私の中で鳴るほどに。
「……アリアにも苦手な物あったんだ。……あれ?なら、蜜が美味しいってなんで知ってるの?」
「私がフェアリアルキャットの自我として生まれる前に、ポイズンニードルを蹴散らして食べた記憶があるんだよ」
「あ、なるほどね」
これ以上、ここに居たら奴らに気付かれる可能性が高い。ならば、そっと逃げるに限る。え?フェアリアルキャットともあろう者が逃げるのかって?無理無理。中身は私なんだから、嫌なもんは嫌だ。生理的に無理!!
「リューリ、行くよ」
「そ、そうだね」
私達は互いに頷くとゆっくりと帰ろうとした。が、
ーーパキッ!
「「あ」」
あろう事か、リューリは約束とばかりに小枝を踏んだ。そろっーと二人でポイズンニードルの巣を見上げると激しく羽音をばたつかせ奴らは襲ってきた。
「ギャッーー!!」
「バカっーー!!」
咄嗟にリューリの服を噛み引っ張り私の背に放り投げると一目散に走った。
「なに、お約束みたいな事してるんだい!」
「わ、わざとじゃないっ!って、お、お、追って来てるーっ!何あれ何あれ!数増えてるしデカいって!!」
「聞こえてるっ!アイツらはしつこいんだよっ!」
「アリア!魔法で撃退出来ない?!」
「この森全てを焼き尽くしていいならやるけどっ?!」
「それはマズイって!」
森を走り抜けようとするが、追っ手のポイズンニードルが撒けない。森の中だと速さはあっちに分があるから余計だ。
「羽音が激しい!キモイーっ!!」
「頑張れアリアっ!!もう少しで森を抜けるからっ!」
「ひっーー!!やだっーー!しつこーーいっ!」
若干涙目になりながら私は走り続けて、やっと森を抜けて草原へと飛び出した。
「振り落とされるんじゃないよっ!風魔法『風刃突破』!」
「っ!!」
リューリにそう叫ぶように言うと身体を急回転させて、ポイズンニードルの群れに振り向きざまに魔法を放った。
「多すぎでしょっ!」
そのポイズンニードルの群れがチラッと視界に入り、思わずツッコミを入れて追加魔法攻撃で、炎魔法『火炎弾』を無数に放ち群れを一掃した。
「はぁっーー………リューリ、後で覚悟しな」
やっと、いつも通りの静けさの草原に戻って残りは居ない事を耳を済ませて確認して全てが終わり私はやっと、安堵の息を吐いた。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
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