【15・新たなイライとホウシュウ】
「ブラックサーペント?ってなぁに?」
1人だけ話についていけないヘレンちゃんは、首を傾げながら私を見て来たので、可愛いなぁ…と思いつつ、その問いに答えた。
「ブラック、レッド、グリーン。それぞれのサーペントはどれも図体がデカくて動きも早くてねぇ。その中でも、ブラックは他の2種に比べ極端に個体数も少ないのさ。そして、ねちっこくしつこいんだよねぇ」
「毒霧で迂闊に近付けねぇし、何とか近付いたとしても、噛みつかれて終わりだ」
「前に父さんに聞いたけど、1度だけ戦ったみたいなんだ。でも、毒消しと母さんの状態異常回復魔法で何とかなったんだって」
私の話にリューリとギルマスが付け加えるように言ってヘレンちゃんの様子を見てみると、顔をあおくさせ、涙を浮かべていた。
「へ、ヘレンっ?!なんで、泣いてるのっ?!」
「だ、だって、もし、お父様とお母様が死んじゃってたらって、思ったらっ…グスッ…」
「おやおや、今、生きてるんだからいいじゃないか」
泣き止ませようと私は尻尾でヘレンちゃんの頭を撫で撫でして慰めて、リューリはマジックボックスからハンカチを出して手渡したのだった。
「あー……日を改めるか?」
「大丈夫さ。……ヘレン、これくらいの事など冒険者になったら付き物。今を生きてれば、いいじゃないか」
「ぅん……。ごめんなさい」
気遣うようなギルマスの言葉に私は頭を振ってヘレンを見て言い聞かせると、涙を拭って頷くと、リューリには礼を言っては、へにゃりと笑みを浮かべた。
「………それで?その、ブラックサーペントを狩ればいいんだね?」
「あ、あぁ……緊急性はないが、居る以上は危険だから討伐対象だが、AとかSランクが中々集まらなくてな。勿論、買取りするぜ」
「……肉と素材の一部を付けな」
「なっ?!肉は高級食材だぞ?!」
「アイツの肉は美味いからねぇ。嫌だね。それが、通らなけりゃ、この話は無しだ」
「ぐぬぬー…せ、せめて半分!素材一部に買取り金額が付くんだ!いいだろっ?!」
「チッ……仕方ない。それで、手を打つよ」
私とギルマスの駆け引きにリューリとヘレンちゃんは呆然としていたが、小さく蛇肉って食えるんだね。と言っていたのが聞こえた。
「はぁー……。まさか、こんな討伐完了確定での話をする時が来るとはなぁー…」
「ブラックサーペントごときに遅れを取る私じゃないよ」
私のフェアリアルキャットとしての記憶に、ブラックサーペントの肉を美味しく食べた記憶があったから頑張った。生では食べないけどね!
本当は私的には素材なんて要らないけど、多分、リューリ達の武器とかぐらいなると思ったから、それも欲しかった。
交渉も終われば、これ以上ここに居る理由も無いため出ようとしら、買取り窓口に寄って行って欲しいと言われた。
「……それにしても、ブラックサーペントって大丈夫?」
「心配しなくてもいいさね。勿論、アンタは一緒に行くよ」
階段を降りていたリューリの足が私の言葉に止まった。うわぁー…器用な事するね。でもね、忘れてないよね?
「私はアンタの従魔なんだから、主人のアンタも行くに決まってるでしょう」
「……それマジ?」
素が出てるって。
「安心しな。直ぐにカタはつくからねぇ」
「そんなの、安心出来ないって!僕も行かないとダメっ?!」
「マジックボックスに入れた方が持って帰ってくるの楽なんだよ」
そうリューリに言って既に降りて買取り窓口で手を振り笑顔で待つヘレンちゃんの元に向かっていった。
「そんなぁー………」
ガクリと肩を落とすリューリはとぼとぼと来たが、そんなの知らない!
窓口に行けば、リューリ達の顔を覚えていたのか、組合員のお兄さんはカウンターの下から重そうな袋を2つ取り出しニコニコ笑っていた。
「お!やっと来たな!……って、なんだぁ?顔色悪いぞ?」
「あー……うん、なんでもないです。あの、どうしました?」
「どうしたってなぁ……。集落の破壊の成功報酬だ!ゴブリンの耳は合計で84あったぞ!」
「そんなに?!……じゃぁ、もしかしてこれがそのお金?!」
中々の数にヘレンちゃんはびっくりしながらもキョロキョロと重量感のある袋を見比べた。
「ぁあ!そうだ!良かったな!金額は金貨50枚だ!あ、ちなみに見た目通り重いから半分づつにしたからな?」
「き、金貨50枚……。初めてみた……」
金額を聞いて驚き、ぽかんと口を開けるリューリ。本当に面白い子。
『ねぇ、金貨1枚はだいたいいくらなんだい?』
その金額を聞いて思い出した。私、この世界のお金の単価とか知らないって。なので、念話で聞いてみた。
『え、えと……金貨1枚がだいたい一万円ぐらい。んで、ちなみに金貨10枚で大金貨1枚。その上は大金貨10枚で白金貨1枚。下に行くと金貨1枚は銀貨10枚。銀貨1枚は銅貨10枚。銅貨1枚は鉄貨10枚だったかな?でも、流通してて皆がだいたい使うのは、金貨から銅貨ぐらい』
『つまり、今日の報酬は50万って事だね』
『そういう事になるね……』
「ん?どうした?嬉しくないのか?」
「い、いえ!あまりの大金にびっくりし過ぎました……」
「ははっ!そうか。まぁ、大金だが、それだけの事をしたんだ。遠慮なく受け取ってくれ!」
「は、はいぃ……」
恐る恐る金貨50枚が入った袋を受け取り直ぐにマジックボックスにしまったリューリ。
そして、早く両親に渡したいという2人に私は外に出ると元のサイズに戻り領主館へと軽く走り出したのだった。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
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