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【90・ダブル爺さん】

 辺りを警戒して見渡せば、護衛騎士っぽい数人の男性がある一人の身なりの良いおじいちゃんの前に立ち、こちらを警戒して剣を抜こうとしていた。

 

 

「おや、ずいぶんと仰々しいねぇ」


「アリア……。 そんな警戒しないで、挑発もしない。 えっと……。彼らはお忍びなんだ」


「お忍びって……。ちょいとまさかっ?!」


「ははっ……。そのまさか。この国のトップがあのおじいちゃんらしいよ?」

 

 

 私を落ち着かせようとリューリが身体を撫でてきて、それに力んで居た身体が落ち着きを取り戻してきた所にリューリからもたらされた情報。

 え、あんなニコニコしてるおじいちゃんが?

 

 

「いやいや、儂は元王で今は隠居の身。現王は息子じゃよ。ほぉっほぉっ……。昨日も懐かしい顔を見たが、フェアリアルキャットよ、久しいのぉ……」

 

 

「「……え?」」

 

 

 ニコニコ笑顔のまま騎士達に止まるよう手で制止させては、私を懐かしむように見てきて挨拶をしてきた。


『アリアさーん? 知り合い? 知り合いだよね』

『いや、誰よ。こんな爺さん知らないってば』

 

 咄嗟に念話で会話した私達は悪くない。

 

 

「ほら、おぬしらも警戒を解かんか。ゆっくり話も出来んわい。 おぬしらじゃフェアリアルキャットに傷一つ付けられんよ。 その剣を収めよ。 まったく、どうして儂が城下に出たのが分かったのじゃ。……面倒な」

 

「話には聞いていますが、相手はあのフェアリアルキャット。警戒するなというのが無理ですよ。それに、城を無断で出ないでくださいと言っても聞かないだろうからと現王に別宅を見張るよう命を受けていたのですから、隠居されたとはいえその御身はこの帝国にとって大切なのです。ご容赦ください」

 

 

 おい、あの爺さんかなりアクティブだぞ。

 騎士達が困りまくってるよ。

 困惑してる私達の耳にリレックの呼ぶ声が聞こえてきた。


 

「あー、やっと追いついた。 あれ? グランチェーダないか。 なんでここに居るの?」

 

「ぉお、ここにおったか。 なに、儂も久しぶりにフェアリアルキャットの様子がみたくてのぉ。お主もいたのか」

 

 

 グランチェーダ? んん? なんか記憶に引っかかる。

 首を傾げる私にリレックが気付いたのか苦笑いで教えてくれた。曰く、おじいさんが若い時に私達は会っていたらしい。まぁ、メインはリレックだが、この祭典時には私も郊外だが、姿を見せていて何度か話していたと。

 

 

「ぁあー! 思い出した! あのグラン坊かい?! 私に何度も転がされてたくせにしつこく挑んで来た、あの!」

 

「ぶふっ……。くくっ……。そう、そのグランチェーダだよ。君、たまにしか来ないから記憶が薄くても仕方ないさ」

 

 

 

 やっと思い出した記憶では、会えば挨拶代わりに斬りかかって来たので、転がしていたらしい。

 まぁ、臆する事なく向かってきてあっさりと転がされても快活に笑って次こそはと言う彼の気概に、フェアリアルキャットも悪い気はしなかったので、毎回手加減しつつも相手をしていたようだ。

 

 

「……ジジイになったねぇ。ほんと、人間の時間は短いさね」

 

「しみじみ言うんじゃないわい。儂はまだまだ若いもんには負けんぞ?」

 

「ふん。ほどほどにするんだねぇ。そういえば、アンタと一緒に連れられてよく来てたメガネはどうしたんだい?」


「メガネ……? ぉお! あやつか! ジャックか! あやつなら……」



 そうなのだ。今は隠居で爺さんだが、グランチェーダは元は帝王なので側近というか右腕的存在の男が居た。

 若き日のグランチェーダは、勝手に単身で私たちの元に来ては、その側近に怒られ帰って行ったのを記憶している。



「グランチェーダぁぁ! 貴様はいい加減にしろぉぉ!」



 み"やぁぁ?!

 思わずびっくりしてリューリの後ろに回ってしまった私は悪くない!



「アリア……」


「しょ、しょうがないじゃん?! いきなり大きい声なんだもんっ!」

 

 

 リューリに呆れられたけど、クルンと尻尾が足に回っていても剥がして来ないあたりはリューリの優しさだ。

 そんな事よりとグランチェーダを見れば、一人のメガネをかけた爺さんにゲンコツをくらい、頭を抑え蹲っていた。

 

 ……うわ、痛そう。

 

 あの様子からすると先程言っていたメガネ君だ。こちらには目もくれず、グランチェーダを正座させてガミガミと叱っている。すげぇ、グランチェーダの護衛騎士でさえ助けもしないで、メガネ君の話に頷き、当の本人は縮こまっている。まるでその様子はリューリやリカルドを怒っているフランだ。

 そっと隣のリューリをみれば、同じ事を思っていたのか若干顔色が悪い。

 

 とはいえ、話が進まないのも事実なので鳴き声を上げ止めに入る。ハッとした様子でこちらを見たメガネ君に懐かしさを感じたのだった。

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