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【89・ウマイは人を変える】

 香ばしい醤油じゃなくて、ショーミの香りが漂い、いい具合に焼きあがったホタテを恐る恐るといったぐあいにリレックが一口かじる。

 

 

「んんっ! んまいっ! はふっ、あつっ、でも、美味い! こんな風に食べるの初めてだよ!」

 

「んふふふっ! どれどれ……。あちっ、くっー! これこれっ! やっぱり、バターショーミは外れない!」

 

 

 私たちの様子に店主も味見と言いつつ一口食べれば、その美味さに驚き新しくホタテを焼き始めた。

 

 

「白身魚もショーミのお陰で更に美味しいよ! アリア、こんな料理何処で覚えたの!?」

 

「それは、リューリさね。あぐっ、アイツああ見えて色んな料理知ってて家じゃたまに作ってるのさ。あちちっ……」

 

 

 リレックと二人で次々と焼き上がるホタテと白身魚を店の脇で食べてながら話をしていると、ちらほら増えてきた人集り。

 でも、忘れちゃ行けない。ショーミもバターもリレックの持ち物。私たちがしているのはある意味アレンジだ。

 店には悪いが、この二つがないと話にならない。手持ちがどれくらいあるか分からないし、無償手あげる訳には行かない。どうするのかと思えば、目の前にはリレックの顔。

 

 

「にゃ、にゃんだい?! いきなり、びっくりするじゃないか」

 

「白身魚、もっと美味い食べ方あるでしょ。それに、さっきの黒い板状のやつ、あれを使えばもっと違うの食べられるんじゃない? ダシ? がどうこう言ってた」

 

「顔、ちかっ! 目、こわっ! な、なんだい。そんな事かい」



 さっさと白状しろとばかりに睨みながら矢継ぎ早に言われる。

 食が絡まるとリレックのみならず、エルフで冒険者をしている者は欲深いとは知っていたが、こんなになるなんて思いもしなかった。恐るべしバターショーミ。というより、今はこの事態をどう切り抜けるかだ。

 

 

「と、とりあえず、この状況をどうにかすれば教えてやるさね」

 

 

 チラリと屋台へと視線を流せば、バターショーミの香りにチラホラと興味を持った客が集まって来ていて、店主が助けを求めるようにこちらを見ていた。

 

 

「……本当?」

 

「あ、あぁ。それに、ダシってのは時間がかかるのさ。美味いんだが、私も聞きかじっただけだからリューリが居ないとねぇ。だから、後にしようじゃないか(目が据わってて怖ーい……)」

 

 

 すまん、リューリ。と、心の中で謝った所、リレックはマジックバックから手持ちのバター、ショーミをドンッ! と焼き台の近くに出せば、店主は大喜びでホタテに次々と足して行き、客は香りと共にその魅惑の味を笑顔で楽しんでいく。

 

 さて、味が濃いのを食べた後はさっぱりとした物を食べたくなってきた。リレックとは面倒な約束をしたが、それはそれ。これはこれ。というやつだ。

 次の場所へと行こうとした所、ふと頭に流れたリューリの声。《召喚》だ。

 

 

「っ!? リレック! リューリからの召喚が来た! 悪いが後は一人で回っておくれ!」

 

 

 姿が掻き消える寸前にリレックにそう声を掛けると、リューリの呼ぶ声と魔力に感覚を合わせ集中する。

 何があった? 一抹の不安が過ぎる。

 

 そして、次に目を開ければリューリの足元。店の外だと気付けば、すぐさまライオンサイズまで身体を戻し睨むように前を見据えながら、リューリへと声を掛けた。

 

 

「グルルルッ……。リューリ、大丈夫かい? 何があったんだい?」

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