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【88・バターショーミ!】

 くっそー……。リューリのやつ、このプリティでチートなお猫様の私を置いて行ったなぁ……。許すまじ!

 リューリなんて、リューリなんて素敵な攻めズに囲まれてあはーんな展開になってしまえばいいんだ! 需要? んなもん、私にある!

 

 そんな事を考えてというか現実逃避している現在の私はといえば、メイド服を着たままリレックに抱き抱えられて他の屋台へと食べ歩きしている。

 一応、あの後帰ったよ? そしたらリレックの事を知っていたリカルド達が、外面の仮面を被ったコイツに色々吹き込まれて、なんとまぁ私との食べ歩きの権利をもぎ取り連れ出したのだった。

 

 

「いい加減、下ろしなよ」


「えー……。せっかくおめかししてる小さな可愛い友人が居るんだ。手放したくないよー……」


「はぁー……」

 

 

 ずっとこの調子である。もう、暴れて降りようとする事さえ諦めた。

 

 

「でも、懐かしいよ。それまでは、僕が美味しそうな物見つけては、君にとせっせと運んでたよね。君は、何だかんだと言って要らないってつっぱねる癖に、僕が持ってきた物ちゃんと綺麗に食べたり飲んだりして、お礼にと僕の手伝いをしてくれて昔から律儀だった。あの子の傍にいるのもそんな感じ?」

 

「……ふん。お前は目を離すとすぐ、面倒事起こして、巻き込まれた事ばっかりだった気がするんだけど? まぁ、リューリと居るのは、成り行きさね。長命な私らからすれば、人間の一生なんてあっという間さ。その間ぐらい仕えた所で面白そうだと思ったぐらいさ」

 

「なるほどね。その面白い事っていうのが、人工産合成獣か」

 

 

 行き着いたのはメイン料理を出品している屋台が連なっているエリア。

 あちこちから良い匂いがして、正直言うと食べたい。あちこちの料理を食べ尽くしたい。

 ふと目に入ったのは、他の行列が出来てる屋台に比べて人は少なく、言ってはなんだが寂れた屋台。

 

 

「リレック、あの屋台に行くよ」

 

 

 ハイハイと私を離す気がないリレックは、私を抱っこしたまま例の屋台へと顔を出した。

 

 

「へぇー……。この辺りじゃ珍しい海産物を使ったお店だね」

 

「へい! いらっしゃい! 海辺直送の浜焼きだ! 美味いよー!」

 

「ふむ、確かにいい香りだ。店主、この貝と魚を二個ずつ貰えるかな」

 

「はいよ!」

 

 

 つつがなくリレックが注文したのを見て、私は腕が緩んだ好きに飛び降り華麗に着地。残念そうに声を上げられたが、知らん!

 はよ、貝焼き、魚の白焼き寄越せ!

 

 

「もう、油断も隙もないんだから……」

 

「残念そうに言うな。それをはよ、寄越しな」

 

 

 そう言いながらも店の脇に移動して差し出された貝を一口。

 

 

「あづっ! あっ、あっ、あふっ! はひっ! んぐっ!」

 

「ぶっ! くくっ、そりゃ、焼きたてだもん。熱いに決まってるよっ……。ふふっ」

 

 

 あー! また人間の時の感覚で被りついてしまったぁ! ひーっ! や、火傷するぅっ!

 焼きたてが美味いのはわかるから思わず行ってしまった。急いで氷魔法で氷を作り口に放り込んで冷ましながらガリガリ噛む。

 リレックはそんな一連の私の行動に腹を抱えて笑ってるので、氷を奴の口に放り込んでやったぜ。勿論、奴は慌てふためきむせてたが知らん。

 

 しかし、食べてみたが、鮮度はいいだろうけど物足りない。程よく塩味がついてはいるが、それだけだ。

 

 

「そこの残念エルフ。いつまでむせてるんだい」

 

「ごほっ、こほっ! それはこっちのセリフ! いくら何でも氷を口にいきなり入れること無くない?! 窒息死するとこだった!」

 

「ふんっ! いつまでも笑ってるのが悪いんだよ。そんな事より、この味どう思う?」

 

「そんな事って……。はぁ、海産物って事で物珍しさはあるけど、味は在り来りだね。まぁ、帝国民からすれば、食べ慣れないからどうしても足は遠のきがちだから勿体ないといえば、勿体ない。それがどうしたんだい?」

 

「私と同じ事、思ってたのさ」

 

 

 そういうと私は先程の屋台の売り場へと飛び乗り中を覗いた。

 

 

「ちょ、ちょっといきなりなんなんだ!」

 

「おい、そこの人間、この貝塩味だけかい?」

 

「はぁ? なんだってんだ。当たり前だろ? 他に何があるんだ」

 

 

 リューリが側に居ないからバターは無い。でも、リレックならアレぐらい持ってるはず。

 

 

「リレック。ショーミの実をこした液体持ってるかい?」

 

「あるけど?」

 

 

 この世界、味噌はあの時、王都で見つけて手に入れたが、残念ながら醤油は手に入らなかったが、実はショーミというある変わったダンジョンの中にある、木の実を布で潰してこすとあら不思議、まんま醤油になるのだ。

 ただ、そのダンジョンは高ランクの冒険者しか行けない為、危険が伴うので希少性と使い勝手の悪さからあまり有名ではない調味料というのをフェアリアルキャット記憶辞典で思い出した。

 リレックはそんな中でもそれを知り、手に入れられる程の実力もある冒険者。あまり認めたくないけどね。

 

 

「そのショーミをほんの少しこの焼かれてる貝に垂らしな。バターもあればなおよし」

 

「ふむふむ。美味いのかい?」

 

「後悔はさせないね」

 

 

 リレックは私の話を受けて腰に付けていたマジックバックからショーミとバターを取り出し、ササッと勝手に貝に手を加える。止めようとした店主はその焼き網から香る匂いに釘付け。

 てか、リレックよ、バターまで持ってたんかい。侮れん。


 そんなこんなで、バター醤油基バターショーミのいいい香り。釘付けなのは、店主だけでなくリレックも今か今かとソワソワしている。

 そうだろう。そうだろう! 見た目からしてホタテっぽい貝だったから絶対、こっちが美味いと思ったんだよねぇー!

 リレックが両方持っててラッキー!

 

 

「簡単だが、美味いと思うよ? バターショーミ! さっきの白身魚の白焼きにはショーミを垂らすだけで十分美味いはず!」

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