98 虹龍天刧
修行は順調です。
修行は地味ですが、それがむしろ心地よいです。けど、三十五房全てを終えたのですよね?
「はい~ですので~こちらを~『玄武牌』と『玄武球』で~す」
『玄武球』これはどういうものですか?
「大きさを自由に変えることができる球です~重さも大きくなります~」
なるほど。それと【恒河鎖】と併せるといろいろと使えますね。
「玄武の技は多数を一人で相手にする武功です~そして~水の武功でもあります~水は霧に、氷に姿を変えますし~注がれる器によっても形を変えます~けど~水の本質は変わりません~これが水の力を操る際の秘訣ですので~努々お忘れなきように~」
これが4つ目ですね。うん? 4つ? そういえば、陰陽五行なら木、火、金、水。あとは土があるはずですよね?
「土の力。それは土台となる力。故に武龍の鎧こそが土の牌である。主殿」
カンナさん!? あれでも土の功力はまだ、修めてないですよね?
「術理は自ら導き出すモノだ主殿。本質を理解しそれを元に組み立てる。今の主殿なら森羅万象の事象を起こすことすら容易かろう。それとも五気を理解されてないとでも申されるか?」
いえ、木気は『活性』と『衰退』火気は『加速』と『停止』金気は『斥力』と『引力』水気は『変化』そして土気が『固定』と理解しています。
「よくぞ学ばれた。うれしい限りである」
そういっていただけるのなら嬉しいですね。
「……ところで主殿。最終試練を受けられるか?」
最終試練ですか?
「『天刧の儀』といい、体質を覚醒させる」
体質の覚醒ですか……そうなると、よほどの試練なのですね。
「うむ。まず、この儀を行えば、『四神宿房』を1年は使用できなくなり、更にその後は、ここでの約1年が外で四日経過するようになる」
それほどの代償が……
「この儀を突破された暁には、主殿の力は大きく上昇される。失敗されると命を失う可能性もある命がけの儀となっている」
……命がけですね。
「受けられるか?」
いいでしょう。受けます。探検者として生きるのであれば命を賭けるときに賭けられないようでは意味がありません。命を賭けるだけで突破できる程度の試練ならば喜んでかけましょう。
「その御覚悟、見事。では簾貞霊房にて執り行います故に」
わかりました。迎いましょう。
…
……
…………
「では、これより審判者『艱難娘々』の名において最終試練『天刧の儀』を執り行います」
カンナさんから凄い気迫を感じます。
「解放――」
くっ……これは、凄い力が、どんどんと伝わってきます。それに、カンナさんの額に角が!?
「吾は『麒麟』裁定を執り行うモノなり」
麒麟……伝説の神獣。普段は温厚ですが、怒りを買えば命はないといわれる存在じゃないですか!?
「天下泰平をなすものを導くは我が使命……さぁ、受けられよ! 【天刧】」
あれは雷?
「ただの雷ではありません。あれは大きく天命を変えるモノに対する罰であり試練。すなわち、天刧に打ち勝つものは運命を切り開く力を得られる
」
なるほど……流石は運命を変えるを試練。まさか、七色に輝く雷とは凄いですね。
「えっ…」
えっ? こういうものじゃないんですか?
「……まさか、あれは『七光天刧』……主殿の力はそれほどだというのか」
あの……凄くヤバいものなんですか?
「……励まれよ」
ちょっ、顔を背けないでください!?
ゴゴゴ……――
なんか龍の形をしている雷なのですが……
「主殿もうしわけない。あれは『七光天刧』ではない『虹龍天刧』だ。黄龍の魂から生み出された天刧だ……耐えられよ」
はいぃぃぃ!? なんか凄いヤバイものなんじゃ……
ドォォォォン――
あっ……これは死にますかね。
――随分と弱気じゃねぇか龍雄――
この声は!?
――20年程度しかたってないというのに……これだからぁ人間は――
まさか!? 金龍! 金龍なのか!
――おいおい、相棒の声を忘れるとか薄情すぎるだろ――
【降龍術】を失って君と再び語らえるなんて思えなかった……
――俺もだ。ところで、なんであの時の鳥の魂が混じってるんだよ――
――げっ、ばれた――
――まぁいい。鳥黙ってろよ、相棒と語らえる最後の機会かもしれないからよ。時間もないし――
――ちっ……わかったよ――
ハハハッ、懐かしいですね。
――随分丸くなったじゃないか――
そうですかね?
――覇気が薄いぞ。馬鹿め――
人間にとっては20年は長いですからね。人が変わるには十分なんですよ。
――まぁいい。いつか会いに来い。待っててやるから――
待ってるですか…会いたいものです。
――そのきっかけに俺の魂の一部をやるよ――
わかりました。お願いします。
――死ぬなよ――
善処します。
――ちっ……昔のお前ならそんなこといわなかっただろ――
ふっ……では昔に戻って……なら、誰が死ぬかよバーカ。こんな感じでしたかね。
――ハハハハ、強くなって、天龍界に来い。そこに俺はいる――
それでは、待っててください。
――じゃぁな――
また、会いましょう。
――【天鵬龍王聖魔体】が覚醒されました――
えっ……なにそれ、怖いのですが。
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