93 鋼裝傀儡
天満清彦は、イラついていた。
「生意気でなのよん! それにしても、黒道『カマギ』高いかねを取っておいてこんな使えないのを寄こすなんて。おかげでボクチンが戦わないといけないじゃないか」
重くだらしない体を揺らしながら構える。
「大人しく帰ってもらえないでしょうか? これ以上無意味だと思うのですが?」
「むふふふ。ちょっと強いからといってボクチンを舐めるとは、どういうことかねチミ。ボクチンは上級国民。チミみたいな下等な存在がボクチンに意見することすらおこがましいだよ」
傲岸不遜。まさに、その言葉のとおり、おごり高ぶり人を見下す。
「みよ! これがボクチンの力だ! 【オーバーテックヒュージョン】」
清彦たちが乗ってきた、3台のバスとリムジンが合体し姿を変える。
それは巨大なケンタウロスの機械の巨人。
『みたかね。チミ! これがボクチンの能力。さぁ、覚悟するがいいのん。このギガント・アイアン・ドール・ゴーレムでぶった押すのん。【ジャスティスフィンガーデスミサイル】』
巨人の右手の指から5色のミサイルが放たれる。
「シンさん! 戦闘力は?」
――鑑――
――戦闘力 13196――
「なるほど、なら『武着』」
爆炎が巻き起こり、激しい爆発がおこり煙が立ち込める。
「むふふふ。木っ端みじん。木っ端みじん」
戦いの様子を見ていた柚恵の顔は青ざめ、倒れそうになったのを菜桜と朱里が支える。
「せっかく修理してもらったので、壊されるわけには、いきませんので」
『むむむ。どうやって防いだ!』
機械の巨人が地団駄を踏む。
「【風功・断空旋風】風の防壁を作る術で防ぎました。さてと、では『白虎牌』を使わさせて貰いましょう」
『白虎牌』を構えバックルにセットする。
――白! 白! 白!――
――BAN! BAN! 白! 虎!――
――モード・白虎――
『武龍の鎧』が白く輝き、甲は虎の意匠へと変わり、最大の特徴は左右対称の大きな爪が、月光を浴びてきらりと光る。
「ほう。下等な分際で随分と上等なものを持っているな。よし、献上することを許可してやろう」
「ふぅぅ…【獅哮】」
手を突き出すと、ギガント・アイアン・ドール・ゴーレムが数メートル後方へと吹き飛ぶ。
「なにをしたのん! 生意気なやつ【マイクロミサイル】」
前足からミサイルの雨が、龍雄へと降り注ぐ。
「【虎伏】」
ミサイルが何かに押しつぶされるように、地面へと落ちて爆発していく。
「このぉぉぉ【ギガントパンチ】」
鋼鉄の拳が龍雄に迫る。
「【猩握】」
左前脚を引き寄せて、バランスを崩させると、ギガント・アイアン・ドール・ゴーレムは大きく転がる。
「【熊解】」
左右からの衝撃に、中に乗っている、清彦は目を回しそうになる。
「おのれ! 【パイルブロー】」
左拳を振り下ろし、叩き潰そうと爆発的な加速で迫る。
「【亥進】
両腕をを合わせると爪がまるで縦のようになり突進をして、左腕を粉々に砕く。
「【鹿昇】」
ギガント・アイアン・ドール・ゴーレムを空中へと吹き飛ばし、打ち砕いた左腕の残骸を持ち腰を落として構える。
「【落月地昇】」
残骸は鉄球へと変わり、さらに球体はどんどんと圧縮される。
『や、やめろ!』
「破っ!」
バスケットボールサイズにまで圧縮された球体は射出されギガント・アイアン・ドール・ゴーレムを破壊していく。
『き【緊急脱出装置】』
あわやという寸でのところで、清彦は射出されるが、ギガント・アイアン・ドール・ゴーレムは見るも無残にスクラップへとなり果てる。
「お、おのれぇぇぇ。よくもボクチンの」
シートに座ったまま射出された清彦はパラシュートが開き緩やかに落下するなか地面にいるはずの龍雄を探してみるがどこにも見当たらない。
「どこに隠れた」
「隠れてなどいませんよ」
「なっ」
空を見上げると、そこには龍雄が宙を舞っていた。
「覚悟してください」
「や、や、や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお」
「はぁぁぁぁ」
空中ではまるで、花火のような炸裂音が鳴り響き、地面にまるで隕石のように叩きつけられた、清彦は白目をむいて全身を痙攣させていた。
「ふぅぅ…殺さない程度に、ボコボコにしましたが……まぁ、これでよいでしょう。朱里さんのお父さん。もって帰って下さいね」
隠れて事態を見ていた朱里の父は、清彦を背負うと一目散に逃げだした。
「ちょ、龍雄さん。柚恵ちゃんが大変大変。早くきてぇ~」
「あっ、直ぐに行きます」
慌てて柚恵の下へと駆け出す龍雄であった。
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