89 貪婪魔手
龍雄の下に、続々と人材が集まりつつある中、ある夜の出来事。
一台の高級車が山奥にある、日本家屋へと向かっていた。
「はぁ……なんで、こんな山奥なんだよ」
そうつぶやいたのは、初老に近い中年男性。敷地内に入っても屋敷までの距離は長く。あるくだけでも息があがりそうになる。
アポイントもとってきたものの1時間近く待たされて漸く、待ち人が来た。
「ぶふぅ。なんだねこんな時間に」
やってきたのは、バスローブで身を包んだ肥え太りたるんだ体に薄く禿げたあたまに、不摂生がたたり、脂でてかった男が姿を見せた。
「もうしわけございません。天満さま」
椅子から立ち上がり深々とお辞儀をした。
「で、なぁにかね。内宮くん。ボクチンは忙しいのだよ」
どかりと座ると、運ばれてきたピザとビールを食べる。その姿は豚のようだと思いつつも話をきりだした。
「む、娘が見つかりました」
その言葉に食べるのを止め、ビールで一気に口の中のものを流し込む。
「そうかそうか。見つかったか……で?」
「どうやら、いまは『龍天武院』というクラウンに所属していることまで突き止めました」
「で? 連れ戻せたのかぁ~ねぇ?」
「どうやら、クランマスターはC+の実力者らしく……」
ガン! と天満が腕を振り下ろした。
「たかだか、C級相手に、手こずりおって!}
「も、申し訳りません」
「ふん。まぁ、所詮その程度かぁ~まぁいいボクチンの花嫁だ。ボクチンの力を見せるべきだよね。うんうん」
一人納得しパンパンと手を叩くと影から音もなく黒ずくめの男が姿を現す。
「ボクチンの花嫁をさらった悪党を潰したいのん。50人そろえるのに何日必要かのん?」
「十日、いえ一週間程いただければ、そのモノの居を潰せるかと」
「そうかそうか。なら五日で準備をおえるのん」
「……それですと質が落ちますが?」
「かまわないのん。ボクチンも一緒にいくのん。ボクチンの男らしさに朱里ちゃぁんも惚れ直すのん」
「え、えぇ娘もきっと天満さまに惚れます」
「まっててねボクチンの花嫁ちゃん」
朱里へと魔の手が迫っていることを、まだ、龍雄たちは知るよしもなかった。
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