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77 狂魔狂楽◆

 部屋の片づけは直ぐに行われた。


 入居初日に同室になる予定だったものを五名を殺害し、三人に重傷を負わせる。耳聡いものはいち早くその情報に戦慄するが、この三獄の人数は凡そ1000人。情報が出回るのには時間がかかる。故に悲劇は止まらない。


「なんだ、この量は」


 朝食は食堂での配給制。どんなものかと、気まぐれで並んでは見たモノの、厄雲のさらにはバターロールパンが半分と、具のないシチューがお玉半分の量だけ注がれていた。


「なにって新入りにはそれで十分だろ」


 ニヤニヤと笑みを浮かべる給仕係の男。人数の多い四獄までの食堂の給仕係は修練者の中から選ばれる。もちろん無料ではなくいくばくかのポイントがもらえる美味しい仕事だ。


 そして、こういった新人イビリも一種のマウンティグであり、牽制でもある。


 が、悪手というか、愚かというか、残念過ぎるほどに見る目がなかった。


「そうかよ!」


 椀を掴むと熱いシチューを男の顔面へと投げつける。


「おっと、あぶねぇな」


 だが、それを避けれる程度には、実力があった。しかし、避けた。その時点で思考を止めるという、この日何度目かともいえる愚を犯す。


 避けようとも、当たろうとも厄雲は既に投げると同時に動いていた。


「ぐおっ」


 完全な不意打ちとなった左ボディブローからの右フックを男は何とかガードするが、そんなのを気にする厄雲ではない。拳のラッシュをかけ続ける。


 その戦いを止めるどころか周りははやし立てる。


 やがて給仕係の男から赤い雫がまき散らされ始める。


「なんだ…これって血」


 観戦していた面々が気が付いたときには給仕係の男は血まみれになり、肉が削げ骨が見えていた。


「舐めたことしてんじゃねぇぞオラぁぁぁ」


 もはや意識があるのかも怪しい状態でありまともに立っているのが不思議ともいえる。


「くたばれ」


 手刀で心臓を突き刺そうとした瞬間。その腕を止めた。


 いや、その腕を掴んで止めて見せた。


「そこまでにしておきな。ここでやっても何の特もないぞ」


「誰だてめぇ? やんのか」


 止めたのは、褐色肌に赤い髪が印象的な男だった。


「『狩人』黄櫨 弓矢(はぜ ゆみや)だ。やるのは構わないが、どうせなら派手にやろうぜ。明日に試合を組んでやる。そっちのほうがお前にとっても得になるとおもうぜ」


「いいぜ、闘場てのがどんな場所か楽しみだしな」


 それだけ言い残して、食堂から立ちさろうとした、厄雲に。


「詳しい時間は追って伝える」


 その言葉に足を止め、近くのパンだけ掴むと今度こそ立ち去った。


 そして、残された面々は口々にこういった「新人狩りの黄櫨の次の獲物だ」と……



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