75 魔蜘胎動◆
豪華内装に座り心地のよいソファーに、向き合いながら二人の男が座りながら、食事を楽しんでいた。
一人は、胡散臭いまでの笑みを浮かべた道士服を着崩し丸眼鏡のサングラスをかけたヘイ・フウ。
そして、がっつくように、食事をしているのは風貌が大きく変わった浅田厄雲。以前よりも体格ががっしりとなり、身長も少し伸びていた。さらに顔にあった蜘蛛の巣のような刺青が消え、髪は金色と黒の斑の短髪になっていた。
「で? どこに向かってるんだフウさんよ」
鯛を骨ごとボリボリと噛み砕きながら、話始めた。
「向かってるのは、血魔教のいくつかある修練場の一つ『蠱毒房』通称『壺』ダヨ」
「けっ、修練ねぇ。そんなのよりもダンジョンいって鍛えた方が早いんじゃねぇのか?」
「それは違うよ。この壺はダンジョンなのさ。管理下に置いているネ」
「なるほど。そいつは面白そうじゃだなぁ」
「だろ? そこの主は、人が強くなるために戦い合うのを見るのが好きなヤツだから君とは気が合うだろうネ。ルールもシンプル強者こそ偉いダ」
「最高じゃねぇか」
「そりゃ気に入って住み着くやつがいるくらいだからネ。ちなみに階層は全部で8階層。下の階層にいる奴ほど偉いヨ。君はそうだね。半年で5階層くらいはいって欲しいね」
「なんだぁ? 8階層にいけじゃねぇのかよ」
「5階層といってもAランクの実力者揃いだよ。君の実力じゃまだ最下層は無理だね」
「なかなか面白いじゃねぇか」
「フウ様。まもなく到着します」
リェイがそういって声をかけてきた。
「それじゃ行こっカ」
そこは一見すると南国のリゾート。実際にホテルなども見受けられる。
「なんだもう少し、絶海の孤島かとおもったけど……」
「ここは、血魔教が管理している裏社会のリゾート地だよ。ビジネスなら天魔神教よりも栄えているからネ」
血魔教は、力こそが至上だが、単純な力だけではなく、財力も力として認めている。そもそも本国での争いで、別段、血魔教は天魔神教とは争わなかった。最低限の拠点があればよかったし、土地への執着も薄い。暴れられて、金が稼げるだけでいいのである。
「ささ、ここから奥へいくけど、荷物は正攻法じゃ、ほとんどもって入れないヨ?」
「あん? それってタブレットとかマギフォンは禁止てことか?」
「そうネ」
「つまり検問を通り抜ければいいんだろ?」
そういって手荷物や蛇骨刀を呑み込む。
「【異袋】て便利なスキルだぜ」
スキル【異袋】呑み込んだものを収納するスキルであるが、使用者が呑み込めるサイズまでと制限はあるために不人気なスキルである。
「あげたスキルは気に入ってもらえたみたいだね」
ただ、使えると便利なスキルには間違いない。
「フウさま。お迎えにあがりました」
布で顔を隠した白装束が二人深々とお辞儀をしながら出迎えた。
「それじゃ、彼を頼むよ」
こうして、浅田厄雲は修練場『蠱毒房』へと向かうことになるのであった。
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今度サブタイトルに『◆』がついているのは、浅田厄雲がメインの話となります。




