73 朱雀双胞
『朱雀牌』は身体の負担が大きいですね。
ですが……確かに、力を制御しようとし過ぎたのかもしれません。というよりも、本当に強くなっていたんですね。いまいち、実感がありませんでしたが……
「おまえさん、あの力はあんまり使わんほうがいいじゃろうな」
そうですね。気を付けないと……
「さてと、ここらへんくらいの熱量なら丁度よいな。そんじゃ早速やるかの」
カンカンカン――
小気味いい音です。では、その間に【運気調息】をしましょう。少しでも回復をと思ったですが……凄いですね。ここエネルギーが凄く濃ゆいです。『四神宿房』並、いえそれ以上のエネルギーがあります。
これは良き修練になります。
うん? はて? いい修練になる?
なぜ?
あぁ、なるほど。どうやらわたしは、自分が思っているよりも修練というのが好きだったのですね。
いろいろ忘れてました。そう、わたしは強くなって最強にあこがれたんです。
【降龍】を失って、友も失って、夢も失って、それで忘れてましたけど。
強くなりたかったですよね。誰にも虐げられることもなく、何にも負けない存在に……
……
…………
……………
「おい、しっかりせい!」
あっ、レギンさん?
「ずっと意識がなかったが……もしかして壁を突破したのか?」
そうですね……おぉ、なんか力が上がっています。
ランクが上がる事が出来ました。
「ふむ。そうなると、お前さんの鎧を少し強化したほうがいいかもしれんぞ?」
武龍の鎧をですか……強化方法てあるんですかね?
――是――
――龍天武院に工房を創る事で可能になります――
本当ですか……とりあえず、帰ったら拡張しないといけませんね。ここらへんはカンナさんに相談です。
「さてと、あとは仕上げに入るかの」
よろしくお願いします。
どうやら望まないお客さんが来たようなので……
――∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬――
ダンジョンというのは、危険がつきものだ。低級のゴブリンですら最初期の頃はポータルから迷い出た程度でも、ヨーロッパや北欧・ロシアなどでも猛威を振るったほどだ。
モンスターというのはどこまでも化け物で、生きた災害であり、遭遇は災厄。それは現代でも変わらない。
そんな災厄にダンジョン奥になればなるほどに、凶悪になるのは当たり前のことだ。
つまるところ、いま龍雄の前にいる。双頭紅蓮百足もそんな災厄なのである。全長はおおよそ600m。途中から二つに分かれた体の先には頭が二つ。大きさは電車ほどの化け物。
そして、その戦闘力は、
――戦闘力10928――
間違いなく、強敵である。
さて、大型モンスターの攻撃は単純である。シンプルなまでの突進。だからこそに、厄介。シンプルな質量によるごり押し。生半な攻撃は通じない。
特に昆虫系のモンスターはその傾向が強い。ひたすらに突進。突進。しかも避けても力任せに方向を変える。いわば生きた電車に轢かれるようなものである。
「『武着』」
武龍の鎧を身に纏う。この武龍の鎧は戦闘力をあげてはくれるが、総合的に上げる為に相手が特化した特性をもつ場合は、全体的な能力の底上げをしても苦戦を強いられる。それは『青龍牌』や『朱雀牌』を使ったときでも同じであり、さらに、周りの環境によっては消耗を強いられることもある。今回のように、火気が満ちているこの場で『青龍牌』を使えば、普段の三分の一の時間しか使用できず更なる消耗を強いられることを理解している為に『青龍牌』を使用することはできない。
「機動力と攻撃力ならやはり『朱雀牌』ですよね……」
気は進まないがバックルに『朱雀牌』を装着する。
――朱! 朱! 朱!――
――火闘! 朱! 雀!――
――モード・朱雀――
赤い二羽の鳥が描かれた意匠が施された鎧へと変わる。
(クックック。変わってやろうか?)
(大人しくしていてください)
鵬天の意識が再び龍雄の体を蝕もうとする。
それに耐えながら、双頭紅蓮百足の攻撃を躱す。
「【鵬程万剣】」
全力の一撃による短期決戦。剣を無い状態でも、手刀でも、なんとか双頭紅蓮百足の外殻にヒビを入れることができた。だが、それは双頭紅蓮百足の怒りを買うことになり、双頭紅蓮百足の攻撃が激しくなる。
「くっ」
(ほら、変わってやるよ)
意識を奪われそうになったときに。
「修理おわったぞ!」
レギンが双剣を投げ渡す。
「ありがとございます!!」
空中で剣を受け取り構える。
(そんなに暴れたいんですか?)
(おっ、譲ってくれるのか?)
「いえ、こうするんですよ! 【武魂顕現】!」
龍雄の体から黒炎が吹き上がると、そこにはもう一人の龍雄がたっていた。
「こいつはぁ」
「2分が限界です。それまでにかたをつけますよ!」
そういって翔けだす龍雄に、鵬天は続いた。
「ふん。こんな百足なんざ1分で十分だ!。剣をよこしな!」
鵬天に剣を投げ渡すと、そのまま宙を翔け、片方の百足の足を切り落とす。
「こいつは、よく切れるじゃねぇか【群烏】」
たまらずもう一つの首が、鵬天へと迫るが、その前に、龍雄が立ちはだかり、剣を構える。
「【鷲天】」
一撃剛剣。脳天へと振り下ろし深く傷をつける。たまらず首を振りまわす。
「ちっ、あぷねぇ」
鵬天が龍雄を振り回す首の範囲の外へと蹴飛ばし、剣を投げる。
「【飛鷹】」
剣を受け取ると同時に二振りの剣を振るい斬撃を飛ばす。
「よこせ!」
その言葉で通じ合う。二人。
互いにどう動くかが分かる。即席であり、熟練の相棒。完璧なコンビネーションから繰り出される戦いは、圧倒していく。
「決めるぞ!」
「指図はしないでください」
二人は、首の付け根に向かって剣を振り下ろす。
「「【鳳凰鳴破】」」
キィィィィン――――
剣が鳴動し、その衝撃が双頭紅蓮百足に伝わる、双頭紅蓮百足の体内から斬撃が噴き出し、そして龍雄の前には……
――天武クエスト――
└火克金毒「双頭百足の顎肢」獲得
の文字が浮かんでいるのであった。
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