72 彭吃蛇怪
――天武クエスト――
└木克土毒『蛇怪の瞳』の獲得
「なるほど。瞳ですか……」
バジリスクは一見すると目のない蜥蜴だ。もっとも大きさは路線バス程度、だいたい、10m前後の8本足で頭に鶏の鶏冠がある大蜥蜴。その皮膚の硬さは黒曜石から石英ほどの硬さを誇り、力も強く、その牙は、大きな岩も簡単に噛み砕いてしまう。なにより『ワイバーン』、『ヒドラ』、『ワーム』と同じく亜竜であり、Aランクに分類されるモンスターと日ノ本の探検者協会は分類している。そして、なによりも厄介なのは額の瞳。【石化の邪眼】その名の通り、瞳に捉えた者を石へと変える。その変えられた犠牲者こそがバジリスクの食事である。
「『武着』」
武龍の鎧を身に纏い、構える。それを合図と言わんばかりに大口を開けながらバジリスクは突進をしてくる。その牙が龍雄に迫る瞬間、その牙を踏み台に高く跳ぶ。
「【龍牙咬】」
龍雄の放った龍の顎が、バジリスクに喰らいつく。だが、バジリスクは、その体躯に似合わない機敏さで横に飛びのき、尻尾であたりをなぎ倒す。
「ぐっ【鋼気功】」
ガードをした龍雄だが、それでも十数メートル吹き飛ばされ岩山にめり込む。
「これを使うしかありませんかね……」
手に握っているのは、『朱雀牌』。
「力を貸してもらいますよ。鵬天」
バックルに『朱雀牌』を差し込む。
――朱! 朱! 朱!――
――火闘! 朱! 雀!――
――モード・朱雀――
炎の羽毛が舞い、二羽の鳥―朱雀―の意匠が鎧に刻まれる。
「ふぅぅ……」
息吹をあげる。
バンッ!――
爆音とともに飛びあがり、宙を舞う如く翔ける。
「【梟威・龍硬斬】」
手刀での剣技。完全ではないが、不完全でもない一撃が前から二番目の足を斬りつける。ガギィィィィと硬いものが削れるような音と火花が飛び散る。
「鱗しか削れないとは、かなりの硬さですね」
今度は踏み潰そうとバジリスクは足を上げる。
「【芽天隼光・龍硬斬】」
踏み潰さんと下ろされた足を受け流し、手刀を突き刺す。青龍心功と朱雀心功の合わせ技。
「内功を大量に消費しますが【飛鷹群烏】」
飛ぶ斬撃の乱発がバジリスクの体を切り刻む。
キェェェェェェ――
たまらず叫び声をあげ、額の目が開く。
【石化の邪眼】――
本来ならば、その視線をうければ、石へと変わる。そう、本来ならば……
(蜥蜴風情が睨みつけてるんじゃねぇぇぇぇ)
「この声は!?」
脳内に響いた声。
(おいおい、この程度の相手に苦戦とかマジで、てめぇ弱くなってるじゃねぇかよ! 代われオレが戦い方を、力の使い方教えてやるよ!)
「なに……を」
黒い炎が吹き上がると、朱雀の意匠が黒く塗り替わる。
『ふぅ……いい肉体に能力もあるのに、使いこなせてねぇ……もったいねぇ。宿主殿よぉ』
軽く体を動かしてみる。
『さてと、思いっきり暴れさせてもらうぜ! 蜥蜴。八つ裂きだ』
黒い炎に包まれた龍雄いや、鵬天は、バジリスクの尻尾を掴むと、そのまま振り回し、投げ飛ばす。
『宿主よ。てめぇの力はこんだけあるんだぜ? ひよって、技に頼りすぎなんだよ!』
加減なしの踏み込みで、バジリスクに追いつくと渾身の力で腹部を殴り飛ばす。
『こういう輩は、ちまちました技じゃなくて力なんだよ! 力! 力! 力!』
滅多打ちである。
グォォォォォォオオォォ――
雄たけびを上げて、再び【石化の邪眼】で睨みつけてくる。
『睨んでるんじゃねぇよ』
手刀を眼球を抉り取る。
『くたばりなぁ!』
後方へと一旦距離をとり、眼窩に向けて全身に黒炎を身に纏い、飛び蹴りを放ち、バジリスクを貫き焼き尽くす。
『【鵬天天翔】と、はぁ、スッキリしたと』
それだけ言い残し、『朱雀牌』が外れ、龍雄の武着が解除される。
「好き勝手……使ってくれましたね……」
反動で体がボロボロの龍雄は、なんとか大粒の汗を流しながら膝をつくのであった。
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