71 八卦迷宮
レギンさんへの面通しは――
「儂がやる。儂にやらせろ。いいな? いいよな? 断るなら泣くぞ? 超泣くぞ。めんどくさいほど泣くぞ? ついでに駄々こねるぞ?」
アロハシャツをきたちょっとファンキーな感じかたでした。二つ返事どころか食い気味で承諾されました。
「しかし、おまえさんついてこれるか?」
ついて?
「八卦炉の中は、炎のダンジョンじゃって、掟での。個別依頼の際に実力がないものの依頼は何があっても受けるわけにはいかんのよ」
なるほど。しかし、炎に耐性があるドワーフはともかくそれ以外の種族には無理なのでは?
「炎のメダリオンを身に着ければ、ある程度の炎に対する耐性がえられるからの」
そういう仕掛けですか、それならなんとかなりそうですね。
「一応言っておくが、八卦炉内では、炎属性、純エネルギー属性以外の魔法やスキルは使用禁止じゃからな、炎によくも悪くも影響がでてしまうのでな」
確かに。ということは、【木功】【雷功】【風功】での攻撃はできませんね。歩法なら使えるでしょうが。【音功】は使えますかね?
「まぁ、音なら問題はないじゃろ」
それでは、いきますか……
――∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬――
「【音功・双龍合掌】!」
手を叩き作り出した衝撃波が、襲い掛かってきた『サラマンダー』を火の粉へと変えていく。
「やるのぉ~十匹以上のサラマンダーを容易く倒すとは」
八卦炉の中は、マグマの川が流れ、岩山ばかりの火山のような場所であり、モンスターはサラマンダーを始め、炎の羽をもつ『火炎揚羽』、マグマを纏ったカブト虫『ラーヴァビートル』、炎の中に潜む猛毒をもった蛇『バーニング・バイパー』、マグマを泳ぐ大鰐『ラーヴァ・クロコダイル』などに襲われたが、龍雄はそのたびに、難なく撃退してきた。
「あとどれくらいですかね?」
「ふむ、もう少し奥じゃな。あの剣を鍛えなおすには、まだ火力が足りん」
涼し気に進むレギン老に続いて龍雄も歩く。メダリオンの効果もあるが、【寒暑不侵】のスキルをもつ龍雄にとっては、熱さの影響を受けることなく戦闘も続けられている。
「あのモンスターは…」
奥へと続く道を塞ぐように、赤い鱗で覆われた目のない大きな蜥蜴が道を塞いでいた。
「ふぅむ。まさか、『バジリスク』がおるとは……やれるかの?」
「そうですね……あのバジリスクの戦闘力は……」
――解――
――バジリスク@戦闘力・9122――
「いけると思います」
「そうか、無理はせんでもいいからの」
龍雄は小さく頷くと、レギンが岩陰に隠れるのを確認してからバジリスクへと駆け出すのであった。
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