66 鬼宿鏡事
【火功】と【朱雀剣功】を形にするのに一月かかりました。それまでは張宿房との往復で、体もできあがりました。
「それでは、本日は、最後の房である鬼宿房での試練となります」
よろしくお願いします。律朱さん。けど、ここは、闘技場のようですが?
「ふふふふ、ここでは炎魔鏡を使って武魂を覚醒させて屈服させるのよ」
雀呂さん、その鏡は? それに武魂ですか?
「武魂というのは、内なる力の具現化になります」
「それを覚醒させるのに使うのが、この炎魔鏡」
なるほど。
「座禅を組んで鏡と向き合ってください」
何が写るのでしょうね?
…
……
…………
炎魔鏡を見つめる事。どれくらいだろうか?
一時間? 二時間? 六時間? 一日?
もしかして逆に、ほんの一秒かもしれません。
この鏡を見てから、時間の概念が消えました。
そりゃそうだ。心の中に時間はありはしないぜオレ。
なっ……
おいおい。驚くなよ。傷つくぜ。ケラケラケラ。
黒い武龍の鎧? 細部に炎の意匠がありますが……あなたはいったい。
ひでぇな。思い出せよ。オレだよ。オレ。28年ぶりの再会だ。
まさか……
懐かしいねぇ。ところで、あの時、一緒にいた嬢ちゃんとガキんちょはどうしたよ?
それは……
なーんてな。知ってる。知ってる。嬢ちゃんはお前のスキルを奪って、そんで糸目のガキんちょが、お前の中にオレを封印したんだもんなぁ。
封印? どういうことですか!?
おっと、それは知らなかったのか。まぁ、いいそしてオレはお前になった。正確には一部にだがな。
なのに、お前ときたら……まったく、随分と弱くなったもんだねぇ。あの時のお前と比べたら、どれだけ弱くなったのやら。
……黙りなさい。
うん? なにか言ったか?
黙れ! 【龍硬拳】!
ははは【暗黒龍硬拳】!
ぐっ……
おいおい、弱すぎだろ。はぁ……興覚めだ。あんなに強かったお前が、ここまで弱くなってるとか、笑えない喜劇だ。いや、滑稽な悲劇か?
よく囀りますね。【龍硬連脚】
いいね。やる気満々じゃないか。【暗黒龍硬連脚】。
ぶつかり合う同じ技……ですが、押し負けますね。
だから、お前はだめなんだよ。破壊こそが武功の真髄。お前は心のどこかで躊躇している。だから、ここぞという所で負けるのさ。
うっ……
何も言い返せないよな。そうだ。外にいるカンナといかいう奴も、律朱に雀呂、それから柚恵とかいう女どもを犯して、殺したら殺る気が……
黙れよ。
おっ、いい目じゃないか。そうそう、その目だ。
【鵬程万剣】
全身全霊の一撃。これでダメなら……
ぐっ……いい一撃だ。あぁ、いい一撃だ。クックック。一応、合格点をくれてやる。
負け惜しみですか。
いや、本心だよ。ふぅ……オレの名前は鵬天。腑抜けてたら、その体いつか頂くから覚悟してな。
あれ……意識が…
――またな。オレ――
…
……
…………
目が覚めたら布団の上に寝かされていました。
「嫌な事思い出しましたね……」
本当に嫌な苦い思い出です。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。




