60 音功剣技
音功は音を媒介にする技というのは、聞いてますね。琴や琵琶などの弦楽器を使用するとか?
『それだけじゃないのよ』
えっ!? いま耳元で声が……けど雀呂さんの声が……
『これは【伝音入密】という武功よ』
特定の相手にだけ音を届ける技ですか、魔法の『ウィンドボイス』にも似てますね。
「それじゃ、あたしの【天鳴凰剣】を受けてもらうわよ」
剣!? 音功では!?
「【振翼】」
指で剣を弾いて……くっ、耳に。それに、地面が揺れ……いえ、これは三半規管にもダメージがきてますね。
ブォォン――
なんとか避けれましたけど。
「ちっ」
舌打ち!?
ドン――
いま、何が……いえ、これは……まさか音功。さっきの舌打ちを飛ばした?
「いまのは【音弾】」
なるほど。こういう使い方もあるのですね。
「【砕翼】」
ブォォォォォォオオォォ――――
こんどは衝撃波。このままだと拙いですね。【龍牙震脚】!
「相殺した!? むむむむ、やるわね。なら!」
「雀呂その技はだめよ」
「えぇぇ」
「主殿に見て欲しいのなら、そこの岩にしなさい」
あの……その岩、5mくらい高さはありますし、少なくともわたしが、手を伸ばしても足りない太さだと思うのですが……
「見てなさい! 【斬翼】」
剣がすり抜け……いえ、まさか。斬ったのでしょうか?
「ふぅ……えい」
スゥー……ズドォォォン――――
凄いですね。岩が綺麗に切れてます。シンさん。神眼モードで【過去視】をお願いします。
――了――
ふむ、なるほど。功力を剣に纏わらせて、超音波カッターの原理で切ったのですか、凄いですね。こんなことも可能なのですね。
「ご理解いただけましたでしょうか? 他にも暗示をかけたりすることも可能ですが、これには下準備が必要になりますので」
なるほど。勉強になりました。
「それでは、まずは『井宿房』へとまいりましょう」
ここは、どのような場所なのでしょうか?
「裸になってこちらにお入りください」
はい。なんだか、蒸し暑いというか、これはサウナですね。
「では、こちらの丸薬を飲んでください」
丸薬ですか……って律朱さん!? その……姿は?
「湯浴み着が気になられますか? ご用命なら脱ぎますが?」
い、いえ結構です。
わたしには刺激が強すぎますから……
「フフフ、そうですか。そちらの丹薬は『洗髄霊丹』と苦みがありますが、『洗髄行』には欠かせないものですの、それを服用されたら胡坐を組んで【運気調息】を行ってください」
わかりました。ぐっ……めちゃくちゃ苦いです……それになんか体が熱くなってきました。
「主殿は一度【換骨奪胎】を得て澱みが出てはいますが、染み込んだ澱みは、完全にでていません。この行で、気脈を広げますので、わたくしの呼吸にあわせて【運気調息】をしてください」
なるほど。ふぅぅぅ……
ムニュ――
あ、あ、あ、な、なんか背中に、やわ、柔らかい……山脈の感触が……
「主殿、呼吸が乱れてますよ」
耳元で囁かないでください。
「ふふふ、少しイタズラが過ぎましたね。では、始めますよ」
ふぅ……焦りました。
なんか心臓が激しく脈打って……血液が全身を駆け巡っる感覚が感じられます。
「呼吸をしながら、その流れを、深く感じ取ってください。心包を活性化させます」
凄いですね。全身の感覚も敏感になっていますし、なにより汗が凄いです。
「そろそろいいですね。四半時が経過しましたので、今日はここまでとしましょう」
もう、そんなに立ったのですか。
「薬水風呂をご用意してありますから、そこでゆっくりと、お浸かりください」
ほのかに、いい香りがしますね。ヒンヤリして気持ちがいいですね。あっ、これハッカ油に近い感覚です。
うわっ、体をこすったら凄い澱みがでてきました。
「それが主の体に染み込んでる澱みよ」
雀呂さん?
「はい、最後に、背中の垢すりしてあげるから上がって」
ではお願いします。
ペタン…――
「どう?」
えっと、何がでしょうか?
「……当ててるだけど?」
なにをでしょうか?
「ぐっ……どうせ、姉さまと違って、あたしはないわよ!」
ぐほっ……何故か殴られてしまいました……ガクッ……
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