53 一英百鬼
――まさか、こんな形で再会すると思ってもいませんでした。
いえ、再会することすら思ってもいませんでした。
フウ……
彼は親友でした。共に技を磨き、友として笑い合った仲……
彼、いいえ、正確にいうなら彼らが裏切るまでは……
……彼が関わっているのなら、この企みは必ず止めねば……――
龍雄の内心は焦る。かつて自分の身に起きた悲劇を想起してならなかった。
そんな嫌な予測をしながら塔の境内へとたどり着く。
「ようっ。ようやく来たかぁ」
入口へとつながる階段へと厄雲がドカッと座っている。
「申し訳ありませんが、通してもらいますよ」
槍を構える。
「はぁはっはっはっ、そう焦るなって。せっかく歓迎の準備しておいたんだからよ!」
パチンと指を鳴らすと、囲むようにして姿を現す、様々な人と動物が混ざり合った怪人たち。
「どうよ? 壮観だろ?」
「……全力でいくしかないですね。『武着』」
武龍の鎧を再び身に纏う。さらに手には『青龍牌』が握られ、バックルに装着する。
――青! 青! 青!――
――GO! 青! 龍!――
――モード・青龍――
青い鎧へと変わる。
「ヒュー、イカスじゃねぇか。それじゃぁ始めようか」
厄雲がパチっンと鳴らしたのを合図に、襲い掛かってくる。その数は100人。
「【雷功・龍牙雷林】!!!」
【龍牙震脚】の槍版。地面を石突で叩くと、雷の牙が天へと伸び怪人たちを貫いていく。
雷の林を抜けて、ナイフで突き刺そうと迫ってきた山猫との怪人に対しては【蔓引】でナイフを絡め取りながらそのまま腕も絡め取り切り落とす。その隙に背後から迫ってきた二人の怪人に対しては、山猫の怪人を蹴り飛ばしぶつける。
多対一との戦いではあるが、所詮は有象無象の集まり。少なくとも、厄雲以外は――
――戦闘力平均1300――
これが囲んでいる者たちの戦闘力である。
武着をしなくても勝てはするだろうが、それでも時間がかかるという焦り、それが龍雄から余裕を消していた。
「【風功・百花乱墜】」
風の力を加えて威力をました百花乱墜で、切り裂いていく。
「うわぁぁあ、に、にげろぉぉ」
数の有利が通じないと、逃げだそうと蜘蛛の子を散らすように逃げ始めたが、境内を出ようとした瞬間、細切れになり、その血で薄い糸が張り巡らされていることがわかった。
「おいおい、なに逃げてんだぁ?」
そういいながらいうと厄雲は立ち上がり
「『解人』」
蜘蛛のような鎧を身に纏った姿へと変わると蛇骨刀を構え
「【八重餓鬼】」
蛇骨刀を振り回し逃げようとした配下を斬り刻んでいく。
「逃げようとしたやつはぶち殺す! ほら、お前ら戦えよ!}
全員震えながら龍雄に襲い掛かるも、返り討ちにあう。なかには厄雲へと仕掛けるが、頭を掴んだかと思うと簡単に握りつぶす。
「麗、お前もいけ」
「わ、わかったわ」
熊のような鎧姿へと変わった麗は龍雄に爪を振り下ろすも、爪を掴まれ、そのまま厄雲へと投げ飛ばされる。
「おっと」
それを軽々と受け止める厄雲。その瞬間!
「はぁぁぁ【迎暴流虞】」
槍を投げ放ち、轟音と閃光が厄雲へと迫り爆発が起き、土煙が巻き起こりあたりへと広がり、龍雄の青龍モードが解除される。
…
…
…
数秒の静寂が訪れるも、
「ふぅ、ちょうどいい盾があってよかったぜぇ」
厄雲の声と煙が晴れ、平然と立っている厄雲と、首根っこを掴まれ、胸から下が消し飛んだ麗が姿を現した。
「ど……し…て……」
掠れる麗の声。
「近くにいたから丁度よかったぜぇ」
そういって、投げ捨てる。
「さぁ、続きといこうぜ?」
その言葉に応えるように、龍雄は静かに拳を構えるのであった。
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