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04 乾為天

 洞窟を進むこと10分ほど、曲道ではあったが、基本的に分岐のない一本道。天井までも高く障害物も少なく、道幅も広い。


「意外ととダンジョンてひろいんだぁ」

「そうですね。あまり狭いのもゴブリンも戦いにくいのもありますが、モンスターにとっては過し易い空間が多いですよ」


 適度に緊張しながらも、軽い雑談をする程度には、まだ余裕はあるようだ。


「あぁ……いるしぃ」

「いけますか?」

「うん……やらないといけねぇし……」


 何かを覚悟を決めたように、朱里は足音を立てずに駆け出す。


(【キャットウォーク】足音を立てずに走りさらに壁なども走る事が可能になるスキルでしたね。奇襲はいいのですが……すこし独断専行が過ぎますかね?)


 そう思いながら朱里を見ていると、壁を蹴り上がり、一番手前の飛び掛かり、ナイフを振りぬき首を斬りつけるが、浅かったのか仕留め損ねる。


「ギィィィィィィ」


 小鬼・ゴブリンは不快感を表すように叫び声をあげる。


「ら【ライト】」


 光の玉を菜桜が投げると、薄暗くはっきりと分からなかったゴブリンの姿がはっきりと見える。その数は4体。そして一瞬ではあるが光の玉にゴブリンの意識がそれ、その隙を逃がすまいと、燕慈が駆け出す。


「ウォォォオ」


 燕慈は、雄たけびを上げながら、右拳を振り下ろすが、負傷しているとおもえない機敏な動きで飛びのき、手甲が地面にぶつかり()()()()()()()


「逃がすか! 『ファイアーショット』」


 お構いなしと右拳を振り上げると火花が散弾のように、飛び散り飛びのいたゴブリンを貫き絶命させる。


「ギィィィィイイイ」


 怒りに駆られたゴブリンが朱里に飛び掛かる。だが、それに合わせるように


「【プロテクション】」


 菜桜の作った不可視の防御壁が攻撃を阻み、動きを阻害する。


「ハッ」


 そのゴブリンの鳩尾に真守はポールアックスの石突を叩き込むと流れるような動きで、足を払い転んでもんどりを打つ、ゴブリンの首を斧で刎ねる。


「今度は失敗しないよぉ」


 朱里は素早くゴブリンの背後に回り込むと、首を掻き切った。


「ギィ? ギィィィィ!!!」


 一瞬で三匹の仲間がやられて慌てて逃げ出そうとする最後のゴブリン。だがその判断は正しくはあったが遅かった。


「逃がさねぇよ」


 左のボディーブローからの鳩尾、顎のトリプルアッパーからの炎を纏った回し蹴りで地面に激しくぶつかり倒れこむ、更にダメ押しと


「『バーニング・ブロー』」


 振り下ろした拳に炎を纏わせ頭蓋骨を粉砕した。


「どうやら伏兵はいないであります」


 警戒を緩めることなく真守が周りを確認する。


「それでは、“魔石”の回収をしましょう」


 魔石。それは魔物の心臓近くにあるエネルギー結晶体で、日ノ本では電力に変換され利用されている。


 一番品質の低い魔石から得られるのは、一般家庭の半日程度の電力程度にはなる。買取価格は1つ800円程度。低級のダンジョンから得られる収入は、だいたい1日平均5,400円前後である。


「気分は悪かったりしませんか? 今はなくとも夜になると体調の変化があったりしますので、病院にいってくださいね」


 そういいながら手慣れた手つきで、魔石を取り出してみせる。


「あとは、ゴブリンの角は錬金術や錬丹術の素材になりますから、余裕があったら回収をオススメしておきます。ちなみに、今日の相場は100g140円です。相場確認は相場師市場を確認できるアプリがありますのでそれをインストールておくと便利ですよ」


 魔石以外にもモンスターは、様々な材料に利用されており、取引されている。それらを取り扱う中小企業に勤めていた龍雄にとっては相場価格の確認はルーティンとなっていた。



「それで、皆さんの戦いかたですが、美穂さんは少し消極的でしたが、全体をみて大変良かったと思います。真守さんもフォローは良かったです。朱里さんは少し独断専行でしたね。少し落ち着いて周りにハンドサインなどで合図を送るとよいでしょう。燕慈さんは、最後の一撃は少し力入れすぎでしたね」


 戦闘に関与できないからこそ客観的に見ることができるのも龍雄の強みであり、非戦闘職からの意見を述べていた。


「では【ストレージ】」


 龍雄は保管庫と呼ばれる空間へと魔石とゴブリンの角をしまう。この【ストレージ】のスキルは生き物は基本的に入れらないが微生物レベルであれば収納は可能となっており、時間経過が現実の100分の一しか進行しないという利点がある。


「それでは、奥へと進みましょう」


 奥に進むこと、3時間。最初は戸惑いながら進んでいったメンバーではあったが、一戦一戦を終えるたびになれ、ある程度の連携もとれるようにまでなっていた。


「ここで休憩にしましょう」


 ちょうど広い場所にでたので車座に座る。


「そうだ燕慈さん。ちょっと失礼しますよ」

「う、うぉ!?」


 背中に回り両手を当てて座禅を組み小さく呼吸を始める。


「リラックスしてくださいね【運気調息】」

「うぉぉぉぉ。なんか、マナが回復してる?」


 マナ。それはスキルを使用すると消費される体内のエネルギーの呼称の一つである。ただ、呼び方は他にもチャクラやプラナーなどとも呼ばれる

が国際機関が使っている単位なのでこの呼称が一番使われる。


 整えること10分。ふぅーと息を深く吐いて龍雄は呼吸を整える。


「これで大丈夫ですね」

「すげぇな。こんなこともできるスキルがあるんだな」

「そうですね。ただ、これは誰にでもできるわけでなくて、熟練していないと難しいですね。わたしも知り合いのかたから口伝でできると聞いてただけなので、それに、この使い方はある程度安全な所でゆっくりとしないといけないので、戦闘中には使えません」

「それでも素晴らしい技術だと自分は思います」


 自分がやって見せたことに対して説明していると、地面が揺れた。


「じしん?」


 朱里が周り確認する。


「ダンジョン内で地震は起きないとは言えませんが、このダンジョンでそのような現象が起きた事はないはずです……これは少し先の様子を見たら引き返した方がいいかもしれませんね」


 慎重に奥へと進んでみることにするのであった。

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