32 好人壞事
巨漢二人のコンビネーション。
一人は右に重い手甲を身に着け、左は軽装。もう一人は逆の装備であり、サウスポーではあるが同じ戦闘スタイル。
拳の弾幕からの、重い一撃。それがこの二人組の必殺のコンビネーションであり、格上相手でも仕留める自信があった。
だが、龍雄はその攻撃を捌く、捌く、捌く。どうしても生じる攻撃の死角に滑り込み、足払いで転がし後方へと跳ぶ。
イラつきが見せたサウスポーの男は、大ぶりに拳を振るい、その攻撃に龍雄はあわせる。
「【昇龍脚】」
高く高く、吹き飛ぶ。
「貴様! 【コークスクリューブロー】」
激昂した男は、大技を繰り出してしまう。
「【龍硬拳】」
龍雄はそれに合わせる形で拳をぶつけると相手の腕の骨が砕ける音が手甲が砕ける音に混じっていた。
「ぐがっ……」
「げぼっ……おい、寛治、『ビースト』を服用するぞ」
吹き飛ばされた男は、よろよろと立ち上がりながら、丸薬を咥える噛み砕き呑み込む。
「あぁ、そうだな恵壱」
寛治と呼ばれた男も丸薬を服用する。
二人の男は目が充血し、傷も治っていく。
「……あの丸薬は危険ですね。手早く倒さないと取り返しのつかないことになってしまいます」
興奮状態の男二人の攻撃は激しさこそ増したモノの、動きは単調であり、それを見切るのは、龍雄には容易い。
「【龍硬掌】」
繰り出した掌底は寛治の腹部に直撃し悶絶し、そのまま流れるような動きで恵壱の顎を打ち抜き、恵壱を気絶させた。
「ふぅ……なんとかなりましたが……そろそろ出てきたらどうですか、蟹沢正志さん」
茂みから、正志が姿を現した。
「すみませんね。うちの者が迷惑をかけたようで、こちらで処理をしてこの二人は除名処分に……と、見え透いた話をしても意味ないか」
雰囲気が一気に変わる。
「そちらが地ですか?」
「はぁ、そうだよ。たく、金にならない事はしたくないんだけど……はぁ仕方ない。仕方ないから……死んでくださいよ」
そういって正志は双剣を構える。
「【二刀流】スキルですか…随分レアなスキルをお持ちですね」
「えぇ、金になるいいスキルですよ」
明らかに殺意のこもった剣を振るう正志。龍雄はその攻撃を難なくかわすも、狙いは気絶している二人。その凶刃は二人の命をあっさりと切り取った。
「なっ……」
剣を振るい、血を払いながらゆっくりと龍雄の方へと振り返る。
「使えないのに分ける金はないので、どうぞ気にしないでください。それにしても強いですね。このままだと面倒なことになりそうなので、切り札を使わせてもらいますよ」
手のひらサイズの赤く光る金属製の板を取り出す。
「それは、なんです」
「これは『獣魔令牌』といいましてね。凄く金になるアイテムなんですよ」
そういって額に当てる。
「『解人』」
正志の肉体が変化していき、その姿は、人の形をした金色の蟹。
「やはり、この姿はイイ。実にゴージャスな感じがしませんか?」
「その姿は……いったい」
「説明しても一文の得にもなりませんから、死んでくださいよ! 【シザーススラッシュ】」
蟹人間となった正志は両腕の爪を振るうと衝撃波が龍雄を襲う。
「くっ、『武着』」
武龍の鎧を身に纏い、その衝撃波に耐える。もし、身につけてなければ、バラバラになっていただろう。
「その姿……なるほど、貴方が、蜂須賀さんを殺したのですか、これであなたを殺す理由が増えましたね」
正志は構えをとる。
「こちらも聞きたいことが増えました。あらいざらいしゃべってもらいますよ?」
二人は向き合い、構え静かな静寂がおきるのであった。
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すみません。ストックが尽きてしまいました。連日投稿が難しくなってきましたので、勝手ながら隔日投稿にさせていただきます。




