02 求職希望
険しい顔して、男二人が向き合っていた。
「厳しいですかね。やっぱり」
「そうですね。厳しいですね」
ここは職業安定所。龍雄は安定所職員と相談していたが、やはり時期が厳しい。なにせ今は四月。新卒や中途採用などの募集は、減少している時期である。一応、会社都合の解雇なので失業保険は支給されるが、それも一年。貯蓄とあわせても一年半ほどが限界である。
「一応、あるにはあるのですが、このスキルだと紹介できるモノも限られます」
きっばりはっきりと告げられる。
その理由はやはり年齢。30代までならば肉体労働系でも正社員雇用あるが、40代となれば短期雇用か日雇いがいいところ。一応、事務系の簡単な資格はもっているが、それでも事務向きのスキルをもった人間とは比較にならない。【運気調息】は瞑想することで回復を早められるが、コンプライアンスに厳しい昨今では、残業などは減らす傾向にある。
「ただ、経験を考慮しますと、ダンジョンインストラクターなどはどうでしょうか?」
「インストラクターですか?」
ダンジョンインストラクターは開業すること自体は難しくない。一週間程度の座学の実地研修もしくは実務経験があれば開業できる。ただ実績がモノをいうので直ぐに軌道にのるとは限らない。
「ゴールデンウイークには大学生のダンジョン探索への申し込みが殺到して、人手が足りないので短期急募も増えるんですよ。とくにサポート系は少ないので、募集もでてるんですよ」
「ということは、座学に申し込んで、三級迷宮指導員の免許を習得すれば?」
「応募は可能ですね。ギリギリにはなりますが」
三級迷宮指導員。最低限の免許であり、難易度なら原付バイクの免許取得とかわらない難易度ではある。ただ、実務実績が必要な資格という点で本来は時間が必要な資格ではあるが、龍雄は、迷宮探索補助員免許での実務実績があるためにその点は問題にならない。
少し、制度の説明をすると、ポータルの先に広がる異境・ダンジョンを探索・採取することを生業とする人を総じて探索者と呼称し4つの適性で分類される。
通称・スカウト適正と呼ばれるのが、未踏破のダンジョンを探索する能力。
通称・ハンター適正と呼ばれるのが、モンスターの討伐する能力。
通称・ワーカー適正と呼ばれるのが、ダンジョンなどから資源を採掘、回収する能力。
通称・サポーター適正と呼ばれるのが、回復や補助能力。
この4つの適性にがあり、ポータルの利用目的に合わせた際の指針にされる。
これとは別に。探索者には覚醒時の能力によって等級が定められていおり、超人的な能力をもつS級を頂点に、様々な要素から能力値を算出しS以下A~Fのアルファベットが割り振られ、龍雄はEランクの探索者である。
なにはともあれ、龍雄は職業安定所に隣接する探索者協会のビルへと入り、指導員免許の受講申し込みをすませ、帰路へ。なお受講料は8万円。ちょっと、いやかなり痛い出費である。
さて、受講内容は、法律関係。探検者は低級でも未覚醒の一般人よりも高い身体能力があるために、一般人に危害を与えた場合やスキルを悪用した犯罪は執行猶予なしの実刑などの基本的なことに始まり、具体的な判例などもいくつか教わる。わりと、ハンター職やワーカー職などは、この点は疎かにされていたり、龍雄も知らなかったことや、条例が変わっていた事に驚いていた。
(し、知らなかった。探索者同士の決闘て、届け出制が廃止されてたんですね。確かに、短気な人も多いですし……互いに同意が見られた時点で成立するようになってたんですね)
次にポータルの先に広がるダンジョンについてだが、ポータルから漏れる魔力を測定することで、現代では難易度や、環境などまでも測定できるようになってきており、昨今のドローン技術により入り口付近の情報も入手が可能となっていた。
(昔は大変でしたね。難易度まではわかりましたが……ポータルを抜けたら、海に落ちたこともありましったけ……)
ちょっとトラウマを思い出しつつ、ポータルの評価を基準を聞く。これは国際基準として危険度に合わせてアルファベットが割り振れている。
これらの資料への知識や見方なども指導員としては抑えていないといけない知識だ。
それ以外にも、ポーションなどの魔法薬品などの扱いや保管についての知識など覚えないといけないことは多いが龍雄を悩ませたのは……
「細かい文字読むのが辛いですね。老眼ですね」
寄る年波が一番の難題だった。
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