26 怨敵復仇
ロックリザードの二匹はあっさりと倒された。
別段、弱いモンスターというわけではないが、固い岩に覆われているために、動きが若干遅い。さらに腹部は岩で覆われていない為に意外とあっさりと勝つことはできた。
「なんで……こんなに……」
が、なぜかロックリザードが群れをなして十重二十重と囲んでいた。
「おかしいですね。ロックリザードは、ここまでの群れで行動をするとは聞いたことがないのですが……」
「龍雄さん、ご助力いただけますか?」
真守の呼びかけに、龍雄は即座に反応する。
「承知! はぁぁぁ! 【龍天武功・龍牙震脚】」
龍雄は、退路となる方向へと強く足を踏み衝撃波を放ちロックリザードを吹き飛ばした。倒すほどの威力はないが、それでも包囲網を崩すにはそれで十分。
「わたしが殿を務めます。みなさんは走って下さい!」
龍雄が叫びながら、襲い掛かってくるロックリザードの群れに送すことなく構える。
「【螺旋龍硬拳】」
もっとも固い頭部に拳を叩き込む。グシャリと鈍い音とともにロックリザードの頭部は潰れる。
「これならいけそうですねッ【龍尾脚】」
一匹一匹を仕留めながら、ロックリザードを足止めする。
「【藍炎霊火】」
藍色の炎が龍雄の後方からロックリザードに飛来し、ロックリザードを燃やし始める。
「これは…」
「わたくしの炎です。この炎なら多少は効果があるみたいですね」
「柚恵さん!? なぜ?」
「生徒を守るのは当然です。それに龍雄さん一人に任せるわけには……」
そこまで言いかけたところで、龍雄の【星識雲海】が飛来する何かを察知し、とっさに柚恵をお姫様抱っこの形で抱えて跳ぶと、柚恵のいたところに、針状の物が突き刺さっていた。
「へぇ、いまの避けるんだァ……てっ、フフフフフフ、ついてるじゃないあたしぃ」
その声と共にロックリザードの群れの中心に降り立つ。ロックリザードたちは降り立った人物に襲い掛かるどころかまるで忠実な下僕の如く周りを囲む。
「こないだはどうもお兄さん」
少々扇情的な衣装の美女が声をかけてくる。そして、龍雄には見覚えがあった。
「あなたはこないだのスティレット使いのお嬢さん……お仕置きしてあげたのですが、反省はしてないみたいですね」
「当然! あんたに復讐するためにこっちは色んな所に網はってたんだよ! 面子潰されて厄雲さんが切れまくったんだからね!」
「お知合いですか?」
お姫様抱っこのまま柚恵から聞かれて、慌ててつも、ゆっくりと地面に卸す。
「ブラッディ・スパイダーというチームのメンバーです。以前、襲われたことがありましてね。その時に返り討ちにしたのですが……」
説明しようとするがロックリザードが襲い掛かってくる。さらに、前回は使っていたスティレットではなく、太い針、俗に棒手裏剣と呼ばれるものを飛ばしてくる。
「こないだのアタシィと同じとおもわないことね」
ロックリザードが連携をし、さらに飛び交う棒手裏剣。しかもロックリザードに跳ねたものが予想外の方向から飛んでくる。【星識雲海】で察知してなければ龍雄は既にハリネズミだっただろうが、躱し受け止め、回避する。
「柚恵さんは逃げてください」
「ですが……」
「大丈夫です。切り札がありますから」
「わかりました」
走り出す柚恵をかばいながら、ロックリザードを倒していく。
「本当にムカつくやつだねあんた」
カリッ――
赤黒い丸薬を噛み砕く。
「一応、名乗らせて。ワタシィは蜂須賀。死ね」
棒手裏剣が、一本、二本、三本と時間差で飛んでくる。それを難なく躱すが本命は蜂須賀の回し蹴りを背中を反り躱し、そのまま後方に倒れ込みながら地面に手をつき
「【昇龍脚】」
ゴキリ――
鈍い音と手ごたえを感じながら後方に宙返りをして確認すると、蜂須賀の左腕はがブランとなっており確実に折れていた。だが、右手で棒手裏剣を投げる。
「まだやる気ですか……しかたありませんね」
稲妻のような動きで、棒手裏剣を躱しながら距離をつめる。あと一歩のところで蜂須賀は蹴り上げてくるが、それを躱す。だが、それはフェイント。折れていたはずの左腕で、棒手裏剣を掴み突き刺そうとしてくる。だが、その手を掴み投げ飛ばしダメ押しにと【龍硬脚】を叩き込み吹き飛ぶ。
「今度こそ……」
さすがの龍雄も倒したと思った。だが、蜂須賀はゆらりと立ち上がる。左腕は再び折れているだろうにだらりと垂れ下がり、片足も足もおかしな方向に曲がっており、本来なら立つことすら、ままならない筈なのに立ち上がった。
龍雄は驚愕する。蜂須賀は狂ったように笑い始める。
「ふふふふふふフフフフフフフフフ、おかしいオカシイ気持ちがスゴク、凄く、昂るぅぅぅ……フフフフフフハハハハハハハハハ」
虚ろな瞳で狂った笑いを上げながら再び赤黒い丸薬を口にする。
だらりと腕が垂れ下がり、蜂須賀の体が赤黒い塊へと変わっていく。
「一体なにが」
その答えは直ぐに分かった。
蜂須賀だった人の形をした赤黒い塊は背中が割れると、そこには蜂と人間がまじりあったバケモノが姿を現すのであった。
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