25 探索同舟
難易度C-『岩蜥蜴の島』――
ロックリザードと呼ばれる岩で覆われた大型バイクほどの大きさの蜥蜴が生息し、亜熱帯密林が広がる島である。
その島に約60人ほどの団体が集っていた。
内訳は三分の一は、帝都大学の錬丹部の学生、三分の一は、日ノ本国軍大学からの選抜メンバー残りは、それに雇われる形の外部協力要員である。
本日は、例年執り行われている合同探索の日であった。
「今回の採取調査の指揮をとらせてもらうのは、日ノ本国軍大学三年『斗南 水鳥』だ。不慣れな点もありますがよろしくお願いいたします。では、本日の目的では……」
国軍大学では、護衛の演習として、そして帝都大学の錬丹部は、丹薬の材料の採取や調査を行うのがこの行事である。
「まさか、話をした直後にここに来るとは、これまた奇縁ですね」
龍雄はそう呟く。
チームの割り振りは本部運営が10名、各班は護衛に軍大生が4~5人、錬丹部が3~4人に准教授1名、外部協力者が1名の編成になっていた。
「まさか、龍雄さんも参加してたんですね」
「真守さんに声をかけられていましたので」
「丁度、燕慈殿も参加すると分かりましたので」
龍雄、真守、燕慈は同じ班になったが、それは真守の人脈によるものである。
「燕慈くん、友人と語らうのもいいですが、きちんと講義も聞きなさい。あなたはあくまでも、錬丹部の生徒として参加しているのです」
会話をしている燕慈に話かけてきたのは、大きめの眼鏡をかけた小柄な少女。
「はいはい、すみません。柚恵ちゃん」
妹がじゃれるような仕草に龍雄は思わず吹き出してしまいながら燕慈を嗜める。
「燕慈くん。だめですよ、クラスメイトにそんな対応したら」
「いや、龍雄さん違いますよ。柚恵ちゃんは准教授です」
「えっ……随分お若いのに凄いですね」
「いや、柚恵ちゃん今年3い……ぶべっら」
柚恵の拳が深々と燕慈の脇腹に刺さる。なかなか腰の入った一撃である。
「ふぅ……女性の年齢を軽々しく口にしないでください。罰としてレポート追加です」
「ようしゃねぇよ……柚恵ちゃん……」
「いまのは、燕慈くんが悪いですね」
うんうんと全員が首を縦に振る。
「えっと、外部の方ですよね? わたくし、准教授の薬師寺 柚恵と申します。改めてお願いいたします」
「あっ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「柚恵ちゃん先生がナンパしてる! ずる~ぃ」
「ち、違います」
少し緊張が足りない感じがするが、付近にモンスターの気配がないため龍雄も緊張をといていた。
「そ、それで、ここではどんなものが採取できるんでしょうか?」
外部協力者である龍雄の役目はダンジョンの解説だ。これは軍大生が護衛に集中できるように、質問に答えるのが役目となっている。
「このダンジョンだと、火心草、灯杏、霊泥、甘露米が主ですね。珍しいものなら燈杏や一刺し山葵などもあります」
「火心草ですか、それはありがたいですね。最近、高くて研究費を圧迫されてるんですよ」
「では、火心草の採取からしましょう。真守さん、ロックリザードを探してもらえますか?」
「ロックリザードでありますか?」
「はい。火心草はロックリザードが多く生息する場所に生えているんですよ」
その言葉に、柚恵が目をキラキラさせて龍雄を見つながら質問をする。
「よくご存じですね。確かにロックリザードは、火心草が生える近くに巣を作る傾向があります」
「ロックリザードは雑食ですが、火心草を好んで食べる傾向があるんですよ」
「そうなんですよ。不思議なことに他のダンジョンでも似たケースの報告例があるんです」
「火生土の関係なのでしょうね。土属性の魔物は好んで食べると聞きますし」
「そ、その話詳しく」
柚恵の質問に、龍雄は真摯に答えていく。キャリア20年の龍雄にとってはこういう話をするのは得意である。昔は、荷物持ちであった龍雄は、今回と似たような仕事をしたのは一度や二度ではない。なのでこういう案内などもお手の物である。
「目的地に近づいているみたいであります」
ロックリザードが二匹ほど現れた真守をはじめとする国軍大学生たちは戦闘態勢に入るのであった。
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