24 狂獣謠言
――探索者同士の喧嘩が増えてきている。
そんな話を喫茶店で真守さんに話されました。確かに、噂がわたしにも届いてますよ。
しかし、喧嘩などは昔から珍しくないのですが?
「いえ、それでも明らかに、やり過ぎなのでありますよ」
それほどですか、真守さん?
「はい、ここ1週間で1カ月分の件数になってるでありますよ」
ふむ。あっ、パフェが届きましたよ、真守さん。
「いただくであります」
それにしても、おかしいですね。普通はそこまではないはずなのに……そういえば自警団とかあるのでは?
「それがその……自警団同士の刃傷沙汰も起きてるのであります」
何か、原因かわかってないんですか?
「実は、龍雄殿なら何か知ってるかもと思いまして……これをご覧いただけますか?」
赤い…丹薬ですね。けど、丹術は専門外ですよ? むしろ、燕慈さんの方が専門では?
「そちらも当たっているのですが……素材の流通関連の仕事をされていたのでご存知ないかと」
うーん。難しいですね。研究用などの場合はロストと処理されてますし…商品開発部がある場所ならなおさら分からないのですが…せめて成分がわかれば……そうだ、シンさん成分分析できますか?
――可――
ではお願いします。
――解析――
――火心草――
――幻霧の雫――
――108種の魔石の粉末――
火心草ですか、ここ等辺だとC級ダンジョンの浅い場所でも手に入る薬草ですね。効果は確か興奮作用。
それから幻霧の雫は軽度の幻覚作用がありますが、戦闘時のストレスを緩和させたりするのにも使用されていますから、こちらも珍しくありません。珍しくはありませんが、この二つを組み合わせる丹術は、禄存書院で丹術の基本書を読みましたが、水と火を組み合わせるのは非常に難易度が高い丹術のはずです。
「どうですか?」
成分を正直にいってもいいですが……そうなるとスキルを説明しないといけなくなりますね。スキルは隠したいですし……適当に誤魔化して話しましょう。
暴れるということは、もしかしたらこの丹薬には火心草が使われているのかもしれませんね。興奮作用がありますし、それに幻霧の雫を多量に摂取したときに探検者の行動にも似ている気がします。
「なるほど、確かに……しかし、どちらもそこまで珍しくないものですし、同時に服用したとも考えられません」
事件が起きているということは、それなりに出回っていると考えると、材料を集めているはずなんですよね……けど、相場をみると買い占めもされた形跡がないですし、そうなると直に取りにいっているとして……
あっ、収穫報告書。たしか、この近くで火心草が取れるのは、乾きの谷、灼熱の川、岩蜥蜴の島ですね。それから、納品日報を確認すると……岩蜥蜴の島からの出荷が少ないですね。つまり納品がされていない可能性が……
よし、真守さんにこのことを説明しましょう。
「確かに、出荷数が減ってはいますが……」
どう、関係しているかはわかりませんよね。
「ですが、調査は必要だと思います。これ以上被害がでてもこまるでありますし、なにより……自分の友人が襲われたのでありますよ。この丹薬を服用したと思われる人に」
国軍の訓練生を襲うというのは尋常ではありませんね。
「あの、ご同行願えないでしょうか? 一応、有志を募っていくにしても人数は必要になるとおもうであります。」
そうですね。依頼ということならお受けしましょう。
「ははは、しっかりされてますね。わかりました。予算を出してもらえるように交渉してみます」
こういうことをタダで受けると、後で、厄介なことになりますからね。お金で雇われたという事実はかなり大事なのです。
「そうなると、燕慈どのにもご助力願ってみます」
確かに、丹薬関連なら燕慈さんがいてくれると助かるかもしれませんね。
「では、後日また連絡をしますので」
さて、どうなるのでしょうね。今回の件は……とりあえず今はパフェを食べましょう。
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