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23 虎伏狐謀

 倉庫街にある、真新しく『株式会社ラビットマテリアル』という看板が掛けらた倉庫の中で、浅田厄雲をはじめとする。ブラッディ・スパイダーのメンバーは、倉庫の地下に作られた、無駄に豪華な隠し部屋でくつろいでいた。


「お前ら、自重しろと(みつる)に言われていたはずだが?」


 険しい顔をして、全員に注意を促しているのは、ジャスティスキャンサーこと蟹沢正志だった。


「イイじゃねぇかよ。マサ」


 缶ビール片手にだらしなくソファーに寝そべりながら、一気に飲み干す。


「良いわけないだろ。充からも大事な客が来るから、大人しくしておけと、言われたはずだぞ」


 正志は、厄雲に詰め寄る


「硬てぇ事いうなよ。ほら、蟹ちゃんも飲めよぉ」


 ニヤニヤ嗤いながら缶ビールを差し出す。正志は乱暴に受け取ると一気に飲み干し、握りつぶして、空き缶の入ったごみ箱に投げ入れる。


「ふぅ……お前らもお前らだ。いつも言ってるだろ、こいつが暴れそうになったら止めろって」


「いや……その……厄雲さんを止めるのはちょっと……それに厄雲さんがいれば負けないですし」


「で、三人が一瞬で伸されて、貴重なポーションを3つも無駄遣いさせたと……いい度胸してるじゃないか、あんっ!」


 近くにいたブラッディ・スパイダーのメンバーの胸倉を掴みビンタを三発ほど叩き込み乱暴に、床へ(ほう)る。


「ポーション一ついくらすると思ってるんだ! あぁん? 一本10万だぞ!」


「おいおい、その辺にしておけよ。こいつも悪いと思ってるんだぜぇ? なぁ?」


 ソファーから立ち上がり倒れたメンバーの前でかがむ。


「は、はい」


 土下座して頭をさげる。


「なに勝手に土下座してんだぁ」


 顔面を蹴り飛ばし、髪を引っ掴んで引き起こす。


「てめぇのボスは誰だぁ?」


「ひ、ひゃくもひゃんです」


「そう、俺だ。なのによぉ~なんで蟹に土下座してんだよ? なにかぁ? 蟹の方が偉いとでもおもってんのかぁ?」


 片手で首を掴み吊り上げる。


「おいおい、なんだよ。パーティー始めるなら読んでくれよ~」


 悪趣味なほどに派手に、これ見よがしにブランド物と分かるスーツに高級時計を見せながら、愉快そうに二人の男と絶世の美女を伴い、空気を読まずに割り込んできた。


「おせぇよ。充。てめぇが招集かけておいて、遅れるとはどういう了見だ」


「確かにな。タイム・イズ・マネー。時は金なりだ。俺の金が減ったらどうしてくれる」


 興がそがれたと少しだけ、正志と厄雲の空気が和らぐが、その分、遅れてきた充に対して、怒りが向いている。


「おいおい、これでも俺は、若手社長と日ノ本の経済界の希望のホープ! ようやく人員整理と入れ替えが終わって、そして、今日はスペシャルゲストを多忙な俺がお前らに紹介してやるんだ。感謝しろよ」


 いちいち芝居がかったオーバーなポーズをとる。


「ちっ」


 厄雲は舌打ちをして、ソファーにドカッと座る。


「ふん、随分と時間がかけたな。やはり、自分で会社立ち上げるべきだったんじゃないのか?」


「チッチッチ、正志。こういうのは信用なんだよ。親父の会社はそれなりに歴史があるから、ガワだけでもあると丁度いいんだよ。ですよね? ホアンさん」


 充が伴ってきた男の一人。きっちりとした。服装の壮年の男が満足そうにうなずき応える。


「アァ、ビジネスにおいてハ、信頼ハ、大事だからねェ」


 独特のイントネーションと名前からこの場の全員は中華連邦の人間となんなく察した。


「おっと、紹介が遅れてしまった。こちらMrホアンさんだ。これから俺たちがビッグなマネーを手に入れる為に協力していただく人だから失礼のないように」


「ホアンだ。よろしく頼む」


「そして、こちらが……」


 そこまでいって、紹介されようとした男は手で制して前に。


「どうもフウさんよ。緊張しなくてもいいよ。フウさんは皆さんとオトモダチ。よろしくね」


 フウと名乗った男は軽薄でありながらも流暢に日本語を使い挨拶をする。いで立ちもアロハシャツに短パンに麦わら帽子、丸眼鏡のサングラスとなんとも場違いな雰囲気を醸し出しており、年を取っているのか青年なのか掴みどころがまったくない。


「そして、この子は僕の秘書のリェイちゃん。バスト112、ウェスト57、ヒップ99のナイスバディよ」


 ボディタッチをしながら、紹介する中、男連中からはゴクリと生唾を飲む音が聞こえる。


「フウさま、首り殺しますよ?」


 主であるはずフウの腕を捻り上げながら淡々と告げ表情は一切崩れていない。


「ハハハハ、愛情表現が激しいな」


 フウもフウで腕を捻り上げられたはずなのに、いつのまにか何事もなく一歩ほど距離をあけて立っており、怪しげな視線をむける。


「フウは、こう見えてもォ、タオシ―……この国の言葉ではァなんといえばよかったかな? フウ」


「道士だよ。ホアン」


 道士という言葉を聞き、正志の眉がピクリと動く。


「道士ということは符術や陣法、錬丹を行うあの?」


「そうよ。フウさんは錬丹が得意だよ~」


 そんな話をしているなか、厄雲がイライラしながら立ち上がる。


「でっ、この二人がどうやって金になるんだよぉ!」


「せっかちは、損をするよ。まっ、解りやすくいうならフウさんの丹薬を売りさばく簡単な仕事さ」


「はぁ? くだらねぇ、そんなんで金になるのかよ!」


「もちろん。扱うのは非合法のヤツだかねぇ」


 ニヤリと充は笑みを浮かべ、その答えに厄雲が興味を持ち始めた。


「へぇ、そいつは面白そうじゃねぇか」


「フウさん、いろいろと丹薬作るけど、素材がなくて困ってるのよ」


 ソファーに全員が座り、席がない他のメンバーは床に座る。


「日ノ本でぇ、我々はぁ動くと目立つ」


 ホアンが単刀直入に語りだす。


「なるほどな。充の会社は素材調達の会社だ。横流しも可能ということか」


「その通り、正志くんに10ポイントあげよう。海外だと難しくても国内だとゆるゆるなのだよ」


「けど、それで何を売るん気だよ」


「これネ。フウさん特性『狂獣丹』副作用で使用後に頭痛がでるけど、短時間だけど戦闘力が最大で三段階はあがるよ」


「へぇ、面白そうじゃなねぇか」


 そういって、厄雲は奪い取ると口に放り込む。


「グォォォォォォ、こいつは最高にッキてやがる」


「凄いね。普通なら理性飛ぶのに平気とか」


「フン、普段から飛んでいるからだろう」


 厄雲の目が血走りながらもそれ以外に平然としていことはフウだけが驚いていたが、直ぐに、にこやかなポーカーフェイスに戻る。


「さてと、では販売計画をたてようじゃないか?」


 充がしきりながら、策謀が巡らされるが、その事をこの場にいる人間以外だれも知る由はなかった。

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