21 征服巨蛙
鼓膜を突き刺す、絶叫が響きわたる。
「『シュリーカー』ですか……拙いですね」
正志が切り落としたモノを見た、龍雄の顔が強張る。
ヒュゥゥゥゥゥ……ズドーン!
「ゲロゲロロロロロォォォ」
姿を現したのは、超大型ダンプほどの大きさの蛙が降ってきた。
「ギガントポイズンフロッグですか」
構えをとりながら距離を測る龍雄の眼前に突如
――天武クエスト――
の文字が浮かび上がる。
(なんですかコレ? とりあえず、確認してみましょう)
――天武クエスト――
――土克水毒【巨毒蛙の毒腺】の入手――
――ギガントポイズンフロッグの単独討伐――
「いいのが来たじゃねぇか。それじゃ、あーばよ」
「くっ、待て浅田!」
逃げる、厄雲を追うか、それともギガントポイズンフロッグと戦うかで正志の動きが止まる。
「追ってください。ここは一人でなんとかしますので」
「あっ、えっ……わかりました」
その言葉を受けて正志は駆け出した。
「ふぅ……行ってくれましたね。では、いきますかね」
龍雄が動くよりも早くギガントポイズンフロッグは、口を膨らませて、息を吐くと、毒々しい煙が、辺り一帯に広がる。
「これは【毒霧】のスキル」
――是――
――【十毒不侵】で無効になります――
【十毒不侵】は、毒強度が低い毒を無効にする。
「芸は身を助くとは、よく言ったものです」
【毒霧】をまき散らしたギガントポイズンフロッグは舌を右から左へと払い、毒で朽ちた草木を巻き取り咀嚼する。
「かなり範囲は広いですね」
舌を躱した龍雄は、観察する。それは、モンスターとの戦いのセオリーであり、前線で戦うことがなかった龍雄にとっては、ほぼ習慣に近い行動。戦闘に巻き込まれない適切な距離を取り動きを観察しつづける。
ギガントポイズンフロッグの攻撃パターンは主に5つ、毒霧、舌を薙ぎ払う攻撃、舌を伸ばす攻撃、跳ねて押しつぶす攻撃、地団駄を踏む。
「動きは覚えました」
龍雄はタイミングを見計らう。ギガントポイズンフロッグは舌を薙ぎ払うタイミングで、ギガントポイズンフロッグの右後足へと一気に駆け出す。
「【飛翔龍尾脚】」
勢いを止める事なく、跳躍し跳び回し蹴りを叩き込む。
「ゲロォォォ」
痛みで身悶えしながら地団駄で踏み、その振動で大地が揺れる。だが、龍雄は、既に、ギガントポイズンフロッグを踏み台にして、高く跳びあがっていた。
「【龍天武功・六式・龍牙咬】」
天から降り、地の獲物を喰らいつく龍の顎を催した、蹴りはギガントポイズンフロッグの背中を覆う固い皮膚を切り裂き肉をも突き刺さる。
「分厚いですね」
背中に飛び乗った小虫を潰さんと、ギガントポイズンフロッグは飛び上がり空中でひっくり返り、押しつぶそうと背中を下にして落下する。
だが、龍雄はその意図を察しひっくり返る寸前で、飛び降りさらに高く跳んでいた。
ドシーンッッ――
仰向けになって倒れたギガントポイズンフロッグ目掛けて龍雄は落下する。
「龍ぅぅぅぅ硬ぉぉぉぉぉ脚ぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」
全力の【龍硬脚】を腹部へと叩き込む。
「グロォォォォ」
苦しそうな声をあげながら寝返りをうつかのように起き上がる。
「おっと」
なんとか体制を崩しながらも、地面に着地をする。
「グロロォォォ」
怒りに満ちた大きな瞳を向ける突進を側転で避けながら姿勢を直す。
「ふぅ……功力をだいぶ消費しましたね。そろそろ決めないと……」
毒は無効化はできるが、それによって、この場のエネルギーを【運気調息】で取り込めない。武功は威力は大きいがその分消耗も大きい故に、龍雄に残されている残量での大技は一つか二つ。
「なんでしょうね、この感覚。笑みが自然と浮かんできます。これが血肉沸き踊るという奴なのでしょう」
龍雄は思案する。
(さて、どうしますかね? 龍咆破は遠距離かつ高威力ではありますがそれだけれは、足りないでしょうね。一撃の強さなら龍牙咬ひけをとりませんが、やはり大型の相手には通じません……ならば合わせてみますかね)
それは、なんとなくできるという内なる自信があった。
「ふぅ…」
短い呼吸を一息。それを自らの合図にするように駈ける。駈ける。翔ける。頭の中に広がるは大空を悠然と翔ける龍。
空を蹴るだけで加速していく体に自信は確信へと変わる。
「龍ぅぅぅ皇ぅぅぅぅ脚ぅぅぅぅぅぅぅ」
龍咆破を推進力にした一点集中の飛び蹴りは、再び突進してきたギガントポイズンフロッグの脳天を砕き貫き、龍雄の眼前には
――天武クエスト――
――ギガントポイズンフロッグ単独討伐クリア――
――報酬:武龍の帯――
と、表示されているのであった。
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