19 狗鬼戰略
洞窟の中は、金属製のランタンで薄明りがともされていた。
「ランタンがありますね」
「あるとどうなのぉ?」
「わりと高ランクのコボルドがいる可能性が高いですね」
「そうなぁんだぁ。龍雄さん物知り」
「では奥へと進みましょう」
洞窟の中は、いがいとむき出しの岩肌だが、歩きづらくはない。
「意外と罠がなぁいねぇ?」
「罠があるダンジョンは、こういう生活環境型ではなく、迷宮型と呼ばれるダンジョンだけですよ。というか講習会の時に説明されたとおもうのですが?」
「えへへへ……ところでどこに進めばいいのぉ?」
「コボルドは、天然の洞窟を拡張して巣を作るんですけど、入り口付近にはですね……」
そう説明しながら、広い道を進んでいくと、ゴミだめがあった。
「やはりありましたね。たぶん、銀鉱石はこの中にありますよ」
「えっ、このゴミの中に!?」
「はい、コボルドの習性なのか、銀鉱石やミスリルの鉱石をなぜか入り口付近に積み上げて置く習性があるんですよ。ドワーフの格言で『コボルドは銀を腐れらせる』というのはこの事から来ているそうです」
「けど、この中にあるなら『ストレージアプリ』で、銀とミスリルを指定して『収納』と」
『ストレージアブリ』は範囲なども指定できたり、特定のものだけを回収できる優れものだ。もっとも、起動にはE級の魔石が最低でも3個、範囲や特定物となると追加で必要になり、収納完了までに3分必要になるが重宝されるアプリである。
「うわっ、本当に銀があるしぃ~しかも少量だけどミスリルも!?」
「回収は済んだみたいですね。けど、どうやら、巣の主が来たみたいですね」
そういって入り口を目を向けると、単槍で武装したコボルドと二匹と着流しと刀をもち眼帯をしたコボルドが姿を見せた。
「えっ、サムライ!? なんでサムライ!?」
「コボルド侍ですね」
「ガッ!」
龍雄へと斬りかかるコボルト侍。その斬撃を剣指で受け止める龍雄。
「ガルルルル」
「朱里さん、残りの二匹をお願いします!」
蹴り飛ばし間合いを取ると、コボルド侍は納刀する。
「ガルッ!」
地面に光の道ができる。その道をコボルド侍は駈ける。
「スキルを使用するレベルですか、やっかいですね」
光の道に添って加速してコボルド侍が迫る。
「ガッ!」
疾走しながらの抜刀。その刃は龍雄に届くと思われた瞬間
「歩法【武星流歩】」
流れるような動きで刃を躱し、コボルド侍の背後をとると、そのまま中段蹴りを放ち、コボルド侍を蹴り飛ばす。コボルドは基本的に前進方向への移動は得意とするが、横や後ろといった移動は増えて故に、回避が困難なのである。
「【龍硬脚】に耐えますか」
「ガルッル」
憎々しげに、睨みつける、コボルド侍。
「まだまだ功夫がたりませんね……」
「ガルルルル」
獰猛にほえ、再び納刀する。
「全力でいかないと拙いことになりそうです。【龍天武功・七式・龍咆破】」
龍雄の手から放たれた閃光がコボルド侍に迫るが、コボルド侍はその閃光を切り裂く。
「やはり、それくらいはされますか」
それも見越して龍雄は、既にコボルド侍の眼前へと迫っていた。
「【螺旋龍硬拳】」
拳に回転を加えた突きをコボルド侍の心臓へと叩きこみ、そのまま龍雄の拳が貫通した。
「カハッ……」
「ふぅ……さて朱里さんは?」
朱里へと視線を移すと、コボルドの短槍を切り落とし、流れを止めることなく、二匹のコボルドを仕留めていた。
「見事です」
そういって、血を拭う龍雄であった。
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