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01 走馬入夢

 はて? わたしはどうなったんでしょう?


「おっさん、今月でクビな」


 あぁ……これは、走馬灯という奴ですね。ほんのひと月ほど前のことですが……高校卒業から28年務めた会社をあっさりと解雇されるとは思いませんでしたね。


「大体、今は禮和(れいわ)だぜ? なのに、いまだに【ストレージ】と【運気調息】のスキルしかないあんたを雇ってられないの。アンダスタン?」


 改めて思い出しても、酷いですね。(みつる)さん。イケメンで高身長、有名大学卒業。さらに【刀】のスキルなどの花形戦闘スキルまでありましたから、仕方のないこともありましたけど……


「大体、イケテル若社長なんていわれるオレの会社にさぁ。あんたみたいな、さえない中年おっさんなんていらないの。身長160もないなんて、家の会社じゃ人権なんてないの。おまけに100キロ超えのメタボデブて最悪だし……たく、親父もなんで、こんなのに主任なんてさせてるかね」


 ボロクソですね。先代は立派な方だったんですけどね……


「ダンジョンで死んでくれてもいいんだけど、それだとウチの評価が下がっちゃうの。これから、オレの手腕で会社も大きくしていくビッグなプロジェントも進めてる。で、その計画の第一弾として、使えないやつリストラしちゃおうてワケよ。なので評価基準以下のやつはクビにしまーす。その栄えある一号はおっさんあんた。退職金とか払いたくないけど、慈悲深いオレは~~~~~~」


 なんというか演出過剰ですよね。充さん……


「特別に退職金で10万もくれてやる。それうけとって、とっとと消えな。あっ、断るならわかるよな?」


 先代、甘やかしすぎましたね……まぁ、遅くにできた子で親バカだったのは知っていましたが……この後、私は……


「わかりました。今までお世話になりました」


「物分りがいいじゃないか。そうそう、それでいいんだよ。オレっはコレから、ホンコンからのVIPを迎えるからよ。お帰りはあちらだ」


 こう言うしかなかったんですよね。こうして、私は職を失いました。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 春の日差しが気持ちの良く、青い空がどこまでも澄み渡り、清宿(しんじゅく)アルタの巨大スクリーンには『ナップル社製新型マジレット禮和3年4月27日発売』と表示されていた。


「はぁ……困りましたね。この時期ですと、募集はあまりないでしょうし。私のスキルだと、厳しいですね。まだ、高校卒業したころなら【ストレージ】のスキルも希少性があって採用枠があったのですけどね」


 そう呟きながら、自嘲気味に苦笑いを浮かべ、手元のグリモアフォンへと目を向ける。最新の魔法技術によって、かつては、希少スキルといわれていた【ストレージ】を始めとしたスキルは、この手帳サイズの精密機械のおかげで、今や、過去の栄光となって久しい。


「迷宮事変から100年が過ぎ……技術の進歩は日進月歩とはいいますが、もう少しゆっくりでもよかったのではないですかね」


 目的の場所までの道すがら買った、よく冷えた缶コーヒーを【ストレージ】から取り出す飲みながらグリモアフォンを見つめながらついついぼやいてしまう。


 迷宮事変。世界大戦末期に世界各地で起きた大事変。突如として各地にポータルと呼ばれる謎の建造物が出現。その先には異境へとつながり、鉱物資源に始まり、未知の技術の断片、神秘の力を秘めたアーティファクトと呼ばれる人智を超えた物までも発見され、それらはやがて、ダンジョンと呼称されるようになった。


 各国の指導者はその対処の為に世界大戦は休戦となったが、後に、ポータルからの利権をめぐり連合は空中分解。現在は、日ノ本とアメリア合衆国とは不可侵条約のもと平和的態勢がとられている。


 ポータル出現から、世界は大きく変容し、人々はスキルと呼ばれる異能を覚醒させ、超人的な能力を発揮するようになるが、同時にポータルから時折出現する、伝説に登場するようなバケモノが出現し人類は脅威にさらされることもなった。


 そんな紆余曲折の100年。


 日ノ本では、ポータルは、国家管理のもと、民間企業へと解放され、企業はその会社のランクに合わせたポータルでの討伐、および採取を行う企業が設立されていった。そんな中でも活躍していたのは、亜空間に収納できる【ストレージ】やステータスの確認やアイテムを識別できる【アナライズ】といったスキルであったが、近年にて、スキルの仕組みが解明され始め、簡易的にではあるが再現が可能となり、それらはタブレット型端末のマジレットやグリモアフォンのアプリケーションとして使用できる様になると、その地位は下がっていった。


「それなりに、大きいですけどね。私の【ストレージ】は……

 けど、大企業でもないかぎりは、宝の持ち腐れになるのは、間違いありませんね」


 ボヤき、重い腰を上げながら、空き缶をストレージにしまうと。目的地へと龍雄は歩いていく。


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