17 狗鬼遭遇
――明日、ダンジョンアタックに付き合ってください。
宮内 朱里――
ハンターライセンスを獲得したことをグループメッセージに送ると、朱里さんから、メッセージが届いていました。
待ち合わせから近くのポータルからだといけるダンジョンは、コボルドの森林鉱山でしたね。複数の鉱山の入り口がある森林でしたか?
予定もありませんから、了解しました。と返信と――
あっ、探索用の装備がありません……とりあえず、スライムインナーを着るとして……朱里さんにもらったカンフー服を着るとしましょう。
ボータルはそれを囲むように吹き抜けの建物ポータルステーションとなっています。用途は消耗品の購入や警備が常駐する施設に、飲食などが可能なフードコートまで、ちょっとしたレジャー施設ですね。
さてと、待ち合わせは、猫の像のところですか…
「だぁかぁらぁ、俺らといこうぜぇ?」
「はぁ……何度もいうけど、あぁしは、もう行く人は決まってるし」
絡まれてみたいですね。男三人ですか…シンさん、実力は?
――測定(/・ω・)/――
――726――
――881――
――789――
ふむ、とりあえず割って入りますか。
「どうかしましたか? と、朱里さんでしたか」
「あっ、龍雄さん。遅いしぃ~」
はは、元気に手を振られますが……周りの方凄く睨んできますね。
「申し訳ありません。それでは行きましょうか?」
「おい! てめぇ」
仕方ありません。あまり騒ぎを起こしたくありませんが…
「そこなにをしている」
「げっ、風紀委員……」
風紀委員そんなの役職はなかったはずですが? おっと、逃げ出しましたね。
「あぁ、その人のあだ名だよぉ~」
なるほど、そういうことですか。
「ここら辺じゃ~有名でぇ~。確か名前は……」
「蟹沢正志です。正しい志しと書いて『まさし』です」
あっ、ご丁寧に名刺まで……
「そうそう、ジャスティスキャンサーて通り名なんだよぉ~」
「申し訳りませんが、その名前辞めてもらえますか? 嫌いなんですよ。だから名刺を配るようにしてます」
ははは…通り名は周りから勝手につけられますからね……
「では、縁がありましたら、また、あいましょう。ただ、ブラッディ・スパイダーというハングレが網を張っているとのことなので、もし見かけたら情報をください」
「ブラッディ・スパイダーですか?」
「探索者としての矜持に反するゲスどもです。おっと、口が悪くなってしまいましたね」
なにやら因縁がありそうですが……
「ご忠告ありがとうござます。ご縁がありましたらまたお会いしましょう」
それだけ言い残していってしまいましたね。
さて、では、久々のダンジョンといきますか。
「どっこいしょ」
「龍雄さん、それはおっさんくさいよぉ~?」
おっと、気を付けないといけませんね。
――∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬――
コボルドの森林鉱山――
ボータルの先に広がるのは、大森林。攻略難易度はC-ではあるが、ボスモンスターと戦わないのであれば、難易度はDクラスまで下がる。オープンフィールドのダンジョンである。
主なモンスターのコボルドは、ゴブリンよりも若干上のDランク。コボルドは二足歩行の犬のモンスター、身長は140㎝前後、頭に小さな角が生えており個体の強さならゴブリンとは大差はないが、群れとしての連携という点では優れたモンスターである。また、狼系のモンスターを使役するなどの特徴をもつ。
そんなコボルドが生息する森林を龍雄と朱里は歩いていた。
「ところで、ここには何を採取にきたんですか?」
「彫金ようの金属が、足りなぁくなったのぉ~」
コボルドは巣穴をほる習性があり、固い岩でも穴をあけてしまうという特殊能力をもったモンスター。そして何故か、巣穴には鉱石が積んであり、銀の原石を持ち歩いている。
「なるほど……そろそろお出ましみたいですよ?」
「了~」
龍雄の警告の言葉を聞いて腰のフォルスターから肉厚のナイフを引き抜き逆手に構える。
「数は3。けど、コボルド・ライダーみたいですね」
コボルド・ライダーは狼に跨る、斥候役ともいえるコボルドだ。
「では、先頭の一匹はわたしが」
「任せて大丈夫ぅ~?」
「はい、戦えるようになりましたので」
そういって、駆け出し、そのまま跳躍しながら体を捻る。
「【龍尾脚】」
龍雄の放った空中回し蹴りがコボルドの頭部に当たると、頭部が爆ぜた。あまりのことに龍雄自身も驚いたが、それを見た後続のコボルドは、犬の顔でありながらも驚愕の表情を浮かべているのが直ぐに分かった。
「ここまで威力があったんですね! 【龍爪斬】」
そう口にしながら、先頭のコボルドが乗っていた狼の体を、切り裂く。
コボルドは互いに顔を見合わせると、狼から飛び降りると、一匹は朱里へと襲い掛かり、二匹の狼は龍雄に襲い掛かる。そして、残りの一匹のコボルドは一目散に逃げだした。
「逃げたぁ!? うわっと」
コボルドは石のナイフを振り回し朱里を牽制する。
「朱里さん! 【剣指】」
駆け抜けながら、剣指を振るい狼の首を刎ねる。
「大丈ブイ 【キャットウォーク】」
軽やかに跳ねると、コボルドのナイフを踏み台にして、さらに、跳躍し背後に着地する瞬間に、コボルドの首を刎ねた。
(戦い方が上手くなってますね)
「逃げられたねぇ~けど、哲雄さん、ヤバいくらい強い?」
そういいながら、ナイフの血を布で拭い龍雄へと朱里は声をかけた。
「はい、わたしも、ここまで強くなってるとは、思いませんでした。さてと、では、回収できるものをしてから追跡をしてみましょう」
龍雄は実戦で確かな手ごたえをつかみ、森へと進んでいくのであった。
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