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141 血始下雨

巨象の頭をもち、3メートルほどの巨漢は、和傘を差した少女と相対していた。


 そんな最中、先ほど腕を斬り落とされたフウは笑いながら沙月へと話しかける。


「ははは、沙月。腕を斬り落とすのは酷いとフウさんは思うよ」

「あなたが解放したら、全部がご破算。全てを台無しにするのを止めたのだからお礼をいって欲しいところなんだけど?」

「あぁ、そうだった、そうだった。じゃ、謝謝」


 腕を斬り落とされたのに、フウはヘラヘラと笑いながらお礼をいう。そして、どこからいつの間にか現れたチャイナドレスの美女――リェイ――が腕を拾い上げるとつなげる。


「やれやれ困った人ですね。せっかく郷主さま自らおでましなのに」


 コロコロと笑いながら、鋭い目つきで巨象の巨漢――ガネーシャ――を睨みつける。


「フンッ、出る気はなかったのよ。でもねぇ~あなたから嫌な奴の臭いがするのだもの。出ないわけにはいかないでしょ!」


 そう言って、長い鼻を振り回し、その先端には刃が取り付けられており、凄い勢いで沙月へと襲い掛かる。


「あらあら危ない」


 傘をたたむと、地面へと先端を突き刺し逆立ちになって躱すと片手で体を空中へと跳ね上がる。


「こちらも仕掛けましょう【嘔天血蝗(うてんけっこう)】」


 傘を振り上げると、血が傘に集まると一振りすると血飛沫が飛び散ると滂沱のような血の雨が降り注ぎ、ガネーシャを含めあたり周辺へと襲い掛かる。


「これはちょっとヤバいわねぇ」


 冷や汗を掻きながら、身構える。


「【鎖陣法・亀甲壁】!」


 血の雨を鎖で作り出した障壁で龍雄が防いで見せる。


「はぁはぁ……なんとか防げましたね」

「やるわねぇ。坊や。けど、これ以上の無茶はダメよ。そこで大人しくしてなさい。ここはあたしに任せなさい。いくわよ【徹刀徹鼻】」


 龍雄を気づかいながらもガネーシャの鼻が沙月を貫かんと伸びる。


「あらあら、怖い怖い」


 その鋭い槍となった鼻を躱すと懐に潜り込む沙月。


「これに耐えられますか?【血気蒐廻(けっきしゅうかい)】」


 傘に血が纏わりつき金棒のように強固になると、そのまま乱打を浴びせてくる。


「【金鐘護身】」


 それをガネーシャは守りを固めて受け止める。


「あらあら、これを防ぐのね。金剛不壊といった所かしら? けど、それだけじゃないですよね?」


「【慎掌必抜】」


 諸手による挟み込みような掌底。だが、それを沙月はあっさりと傘で受け止めてみせる。


「まだまだ! 【振歩怒豪】」


 地面を強く踏み込むと衝撃波が発生し、沙月を襲う。


「危ない危ない」


 その衝撃波を跳んで避ける。


「逃がさない! 【昇象拳】」


 まるでロケットのように飛び上がり拳を突き出す。


「避けれませんね。なら【血纏斗団】」


 血を纏って拳を受け止めるが、吹き飛ぶ。


「ふぅぅぅぅ。これも防ぐか」


 ゆっくりと立ち上がりながら口角を吊り上げ笑みを浮かべる。


「ふっふっふっ、凄い凄い凄いですね。これが異なる武功を習得し同時に使用できる『両義心功』。欲しい欲しい欲しい欲しい欲しいですわ」


 どす黒いオーラが立ち上ると合掌すると更に指で印を結んでいく。


「あの術は! 沙月あれをする気か」


 その動きを見て龍雄は察する。なにせ自分が使っていたスキルである。


「ふふふふ【饕餮(とうてつ)降臨】」


 黒いオーラが銅のように輝く牛の頭に四つの目にねじ曲がった角、六臂

にはそれぞれナイフとフォークをもち鳥の足の化け物が顕現した。


「やはり……けど、不完全もいいところね」

「ええ、それでも充分じゃないかしら?」


 化け物が吠えると、黒オーラから異形の動物たちが現れ暴れ始める。


「数がおおいわね」


 様々な異形の動物の化け物がガネーシャを襲い掛かり、それを相手にするが数という暴力に徐々に傷が増えていく。


「――――【天網断罪】」


 閃光が奔ると異形の動物が断ち切られる。


「この太刀筋は、まさか!?」


 驚くガネーシャをさらに驚かされる。


「はぁ、なさけないたりゃありゃへんな。でてきいや【白狼】」


 白い狼の群れが現れると異形の動物の軍勢と戦いをはじめる。


「あぁぁぁぁ、艱難師姐、真紅師姐」


 目の間には、本来なら居ない筈の人物。その人物がガネーシャを守るように異形の軍勢に立ちはだかる姿にガネーシャは夢としか思えなかった。


「構えなさい。敵を前にして情けない姿を見せるなど教えていませんよ」

「は、はい」


 かつての姉弟子に叱責されガネーシャに気合が入る。


「あらあら、何方様?」


 突如として現れた二人の美少女に沙月は小首をかしげる。


「天武神帝が弟子。『艱難娘々』カンナ」

「同じく、『紅玉娘々』アヤカや」


 二人の美少女が臨戦態勢をとり構える。


「なんだか楽しいことになってきましたね」


 沙月は笑みを崩すことなく更に異形の軍勢を増やしていくのであった。

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