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140 懐恨琢磨

 龍雄の張っていた結界が消え、高熱の世界は消え、龍雄は武着が解除され膝をついた。だが、血禽も人の姿に戻ってはいたが、その両腕は炭化していた。


「ふふふふふふ、素敵な方ですね。まさかまさか、ここまでここまで追いつめられるとは思いもしませんでした」

「はぁはぁ……ぐっ……いけませんね。まだ力の制御になれてないせいで、功力をほとんど使いきることに……」


 なれていない大技の反動は大きく、龍雄の体を蝕むほどに負荷がかかったが、それでも歯を食いしばりながら、立ち上がり丹薬を口に放り込み、噛み砕く。


「丹薬での功力を回復するのはおすすめしませんわ。反動が大きいですから」

「忠言痛み入りますが、そうもいってられる事態ではありませんからね」


 薬での無理やりの回復は体にいいはずがないのは当然。それでも、使わざる得ない事には変わりはないが――


「なんや楽しそうだね。フウさんも混ぜて欲しいな」


 殺戮が広げられる惨劇の場にも関わらず、相変わらずのアロハシャツに短パン、サンダル。と、軽薄きわまりない出で立ちで何気なく歩きながら、襲い掛かってきた武人をこともなげに、打ちのめす。


「フウ! 【龍硬拳】」


 功力を拳に集中して、フウへと拳を突き出す。


「ははははは! 危ないじゃないか【虎月掌】」


 拳と掌がぶつかり合い、衝撃波が周りに広がる。


「これはどうだい龍雄【虎掌昇】」


 突き挙げるような掌底が襲う。それに対して腕をクロスさせて受けながら後方に跳ぶ。


「ヒュ~やるねぇ。置き土産に一発いれていくなんて相変わらず」

「……痛み分けですか」


 ガードをしたとはいえ、その衝撃は体を突き抜けていた為に、片膝をついて着地した。


「『急急如律令。舞て爆ぜや【爆蝙蝠(パオピイアンフ)】』」


 フウが懐から霊符を取り出し投げ放つと蝙蝠へとかわり龍雄へと向かう。


「【猩握(しょうあく)】」


 瓦礫を引き寄せ、蝙蝠にぶつけると蝙蝠が爆発し、土煙が巻き起こり、二人の姿をかき消す。


「【龍! 皇! 脚!】」


 その煙を突き破りながら、龍の闘気を身に纏い、龍雄は飛翔しフウへと飛び蹴りを放つ。


「これはヤバイ、急急如律令【万里壁蛇(ワンリーベイフー)】」


 全身を覆うように岩のような鱗をしたヤモリがその蹴りを受け止める。


「がはっ。は、はははは、やはり君は最高ですね」


 血を吐きながら拳を交え合う。その拳撃は激しい応酬は死闘といってもいい。いいはずなのに、互いの頬が緩みそうになるのを必死にこらえる。


(フウ……彼が敵なのはかわりません。かわませんが……いけませんね)

(相変わらず、龍雄、君は強いね。弱くなったのに……才能……いえ、そんなことよりも、あぁぁなんででしょうね)


 二人の心は戻っていく。共に過ごした。あの青春の日々、苦楽を共にし、背中を預け、二人で肩を並べ、数多の強敵との戦いを過ごした日常へと心が退かれていく。


((こんな時なのに、愉しいとしかいえない。君もそうだろ))


「いくぞ龍雄! 『解――」

「それはダメよ。【蛇眼血雨】」


 フウが解放しようとした瞬間、赤い雨とともに、一本足の高下駄を履き、花魁風の着物をきた少女が番傘を差しながら龍雄とフウの間に降り立ち、フウの両腕を斬り落とした。


「お久しぶりね。龍雄。元気をしてたかしら?」


 柔らかい笑みを浮かべながら、20年前と変わらない姿で微笑みかける。


「沙月……まさか君が姿を現すとはね」

「ゆっくり話をしたいけど、今日は忙しいの」


 そういって番傘を軽く振るうと血の大河が龍雄を襲い、呑み込もうとせまるが、その赤い河が砕け散った。


「そこまでよ。わたしの歓喜郷で、これ以上の狼藉をゆるさないわ」


 象の頭に巨漢の肉体をもつ存在が割って入って。


「ようやく、姿をみせましたか。『歓喜天』ガネーシャさん」


 象の巨人を前にしても沙月は余裕の笑みを浮かべるだけであった。

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