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136 突然再見

「もふもふ。カワイイ。私も欲しい」

「かわいいよね」


 試合を終えた雪花と朱里は二人で、白豹のギンを()でていた。


「あのぉ…師姐戻らないと、師父に怒られますよ」


 雪山派の面々が説得するが……


「いや……師父はモフモフしてない……むしろ、カチカチ?」


 雪花は、プイッとそっぽ向く。その様子に全員が肩を落とす。


「こ の バ カ 弟 子 が!」


 ゴンっという音が小気味よくなる。


「カチカチ……」

「もう一発殴りますよ?」


 妙齢の女性が青筋を浮かべながら笑みを浮かべているが、口角はヒクヒクと動いている。


「師父なのに女の人だし?」

「朱里さん。武林の世界では女性でも師匠は師父と呼ぶんですよ」

「えっ、龍雄さんそれマジ?」

「はい。それにしても、まさか彼女の師匠が、あの氷雪剣女と呼ばれた、氷川ヒサメだったとは思いませんでした」


 まさか、自分の名前を呼ばれるとは思わず、まじまじと龍雄を見つめる。


「まさか……龍雄なのか?」

「……わかるもんなんですね」

「ふん。背中を預けた相手を忘れるほど薄情ではないつもりだがな?」


 怒りながら、胸を指でトントンと指す。


「龍雄さん、お知合いですか?」


 柚恵が微笑みながら龍雄の隣に立つ。


「彼女は昔、何度か一緒に戦ったことがあるんですよ」

「懐かしい話だ。しばらくして、ダンジョンで大けがを負い。スキルも一部失い第一線より退いたと聞いたときは驚いたものだ」


 しみじみと語られる龍雄の過去に柚恵は少し複雑だが、それでも龍雄のことが知れたのは純粋にうれしくつい顔が綻ぶ。


「沙月も、直ぐにイギリス留学にいってしまい。フウも上海へと帰ったからな」


 二人の名前をきき少し龍雄の顔に影が落ちる。


「しかし、なにはともあれ、私としては君が復帰してくれたことは純粋に嬉しく思うよ」

「随分と大人になりましたね。昔、死ね。とかクズとか一言しか喋らなかったのに」


 若かりし頃の恥部いわれて思わず赤面してしまう。


「う、うるさい」

「師父。中二病だった?」


 あははははと全員から笑いがでるが、あからさまにヒサメは話題を変える。


「ところで……血教の試合を見たか?」

「えぇ。大人しい試合ばかりです」


 並び座ると試合を観戦する。


「いま戦っているのもそうだな」

「ええ、あの浅田厄雲が、あんな大人しい戦いなんて明らかにおかしいですね」

「知り合いか?」

「何度か戦っています。荒々しく、残虐な人です。それなのに大人しいですね」

「いやいや。普通に転ばして殴ったりボロボロにしてるぞ? 対戦相手は崑崙派の主席弟子なのだが……」

「あなたなら覚えていると思いますが……『獣身丹事件』を覚えてますか?」

「私たちの世代であの事件を知らない人間はいないが……まさか?」

「はい。今は『ビースト』と呼ばれていますが、それを服用しています」

「なら完全に遊んでいるな。あの力を使わずに」

「えぇ、かなり欲求不満みたいですよ。戦える力を残せるようにいたぶってます」


 試合は盛り上がってはいる。ただ、見る者が見れば、遊んでいるのは間違いない。


「そろそろ決めるみたいだが」

「えぇ……」


 龍雄の頬に汗が浮かぶ。


「どうした?」

「【伝音】で『面白いものをみせてやる』と伝えてきました」


 武台の上の厄雲がニヤリと笑ってみせる。


「ケケケッ。凶義【人形撃壊】」


 ゴキリという音が悪夢の始まりの合図となった。腕の骨があり得ない方向に折れ曲がっていた。それを皮切りに、崑崙派の弟子は身体の骨が折れながら、無様に剣を振り回し、蹴られ、殴られ、立ち上がる。


 意識を失っているはずなのに動き続ける。その度にどこかの骨が折れる。ゆっくりとゆっくりと破壊されていき、もはや生きているだけの肉の塊となって惨劇は幕を下ろすこととなった。

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