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134 双雀舞踊

 観客席では、真守が柚恵の武魂に絡まれながら治療を受けていた。


「ダメですよ。こんな無茶な戦い方したら」

「面目ないであります」


 真守の傷が少しづつ傷が回復していく。

 柚恵の武魂は、媒介とする丹薬によっては傷を治癒することもできる。というよりも柚恵としてはこちらの方が好ましいのである。


「そろそろ菜桜の番だな」

「燕慈ッチめちゃくちゃ緊張してるねぇ~」

「だって相手は武当派てかなり大きいところの№2て聞くし」

「けど、さっきの血魔のヤツよりはましじゃない?」


 前の試合は血魔教の雁無という巨漢だった。非常に無口な男は崑崙派と呼ばれる大門派の今年の一席の猛攻をものともせず両腕を捥ぎり獲ると、そのままサバ折りで背骨を粉砕して見せた。今後どんな治療をしても元の生活に戻れればいい方である。


「そうですね。正派の筆頭ともいえる武当派なら凄惨な試合にはないないでしょうね」

「そ、そうなのか龍雄さん」

「えぇ、そもそも武林とは武当派と少林寺が最初に起こしたことに由来してますからね。正道と義侠を重んじるからこその正派です。その模範となるべき武当派の代表がそんな非道をするとは思いませんし」


 そういって武台に目を向けると、金髪とふわふわなツインテールにピンクの道着にふりふりのスカート、褐色肌の少女が裏ピースをして周りに愛嬌を振りまいていた。


「どうも~ブトー派のアイドル『鏡城(きょうじょう) まりか』でぇ~す」


 その奇抜さに燕慈は龍雄をジト目でみる。


「あの、正道と義侠を重んじるですよね?」

「……そのはずなのですが」

「あはははは、あの子と気が合いそう。どうせならあーしが戦いたかったかも」


 なにはともあれ、菜桜は礼儀正しくお辞儀をする。


「お久しぶりです。まりかさん」

「まさか、菜桜ちゃんがここにいるだけでもビックリなのにあたしぃの相手とはねぇ。手加減はしてあげるから安心してね」


 友人というほうど親しくはないが、互いに名前を知る程度の関係だが、なにはともあれ、「始め」という掛け声を合図に、先に動いたのは、まりかだった。


「歩法【百鳥朝凰歩ひゃくちょうちょうこうほ】」


 それは早く、遅く、緩急が混じって、虚も実もごちゃまぜに、旭日に飛び交う百羽の鳥。


「簡単に終わらせてわるいけど、はいこれでお終いね【月華千手掌げっかせんしゅしょう】」


 全方向からの掌底。軽い口調と立ち振る舞いからは想像できない実力。


「【天翔煌翼歩(てんしょうこうよくほ)】」


 だが、菜桜は歩法で、ふわりとまるで羽毛のように掌底の海を舞い、空中へと浮く。


「えっ……飛んでる!? すごぉぉぉい」


 思わず、まりかから感嘆の声をあげてはしゃぐ


「おっと、驚いている場合じゃなかったよ。これならどう【花蝶舞掌かちょうぶしょう】」


 緩やかな掌の動きがまるで蝶が舞う如し、しかし、その実体は鋭く菜桜に迫る。だが――


「【不動柔掌】」

「つぅぅぅいたいぃぃぃ」


 まりかは腕を抑えながら下がる。


「……これって経脈を攻撃した?」

「はい、一時的にですが」


 そういって、合掌をする。


「【孔雀明王心法・幻翼陣】」


 菜桜を中心に孔雀の羽が舞い広がる。


「なにこれぇ~目くらましい?」


 この羽がそんな生易しいものでないことにすぐ気が付くことになる。

 羽は、まりかの全方位を囲むと、こんどは背中から衝撃をうける。


「後ろ!? さっきまで前に」


 前にいたはずをと後ろを振り向こうとした瞬間、今度は右脇腹に激痛が走る。


「この! 【旋脚斬】」


 周りの羽を一掃しようと回転蹴りを放つも、ただただ、羽が舞うだけ、それどころか、羽は増え続ける。


「う、うそ。これはちょっとヤバげ?」


 羽と菜桜の位置が入れ替わるたびに舞う羽の量が増えてもはや、羽の檻といっていい、その制圧力にまりかは圧倒されていき、ついに耐え切れなくなり。


「ぎ、ギブアップ。も、もうむりぃぃぃ」


 目を回して、気絶するまりかであった。

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