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131 黒闘白死

 激戦が繰り広げらる中で注目された二戦目。黒道『黒海(へいはい)』若頭『黒嵜 一槍(くろさき いっそう)』と『點蒼派(てんそうは)』槍客『蒼 天段(そう てんだん)』の対決は、殺気立っていた。


「凄く怖い感じですね」


 菜桜は身震いしながら周りを見回す。


「確か『黒海』と『點蒼派』には確執があるという噂がありましたね」

「自分も海軍の友人から聞いたことがあります。確か、『黒海』の先々代は元々點蒼派の内門弟子で後継者候補だったのが素行が問題で破門されるさいに秘伝書の半分を持ち逃げしたとか……」

「詳しいですね。真守さん」

「海軍には、兄がいますし、點蒼派の友人がいるそうなので、聞いたことがあるのであります」


 過去の因縁を聞くと納得し、武台に視線を向ける。


 黒海の若頭『黒嵜一槍』は髪は伸び放題で荒々しいながらも、顔立ちは美男子であり上半身裸に革の胸当てに女物の着物を腰に巻き虎ガラのズボンをはきかなり傾いた姿であり、指輪に腕輪、耳や唇にはピアスも身に着けているがそれよりも、ひときわ目立っているのは大きな三又の槍を肩に担いでニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。


 対する點蒼派『蒼 天段』は物静かな佇まいで、短く整えられた髪に清潔な身なりで槍も簡素で飾り気は飾り紐だけと派手さのない実用性重視のもの。まさに対極。動と静。ただ互いに開始の合図を待つだけ。それだけの重さをもった静寂。


 嵐の前の静けさ、津波が来る前の引き潮。だが、時が満ち。始めという合図とともに一気にはじけた。


「【海狩(うみがり)】」


 先に仕掛けたのは、一槍。槍を思い切り投擲する。


「ふざけるな! 【蒼旋槍(そうせんそう)】」


 天段は槍を高速で振り回し、投げられた槍を弾き飛ばす。が


「ふざけてねぇよ」


 槍を投げると同時に距離を詰めていた一槍は、懐に飛び込むと、思い切り殴り飛ばす。不意を打たれた天段は顔面にその拳を受けて数歩下がらされる。


「今のは【烏鮫(からすざめ)】て歩法さ」


 不敵な笑みを浮かべて腕輪をさすると槍が手元に引き寄せられる。


「えっ…あれってマジックアイテムかなにかですかね?」

「いえ、単純にリールを改造した腕輪でしょうね。ワイヤーで槍とつないであるのでしょう」

「それっていいんでしょうか?」

「使ってはいけないというルールはありませんからね」


 観客席で今の動きに対する柚恵の質問に龍雄は丁寧に答えていく。龍雄の感覚からしても、卑怯とは思わないし、その程度の仕掛けの仕込みをする探検者は珍しくない。だが、武の道を歩む、武林盟、點蒼派の彼にとってはやはりふざけた行為だったのだろう。怒りで表情がくずれる。


「そんなものを戦いの場に持ち込むとは恥をしらないのか!」

「別に恥ずかしくなんてないねぇ。黒海は海賊だぜ? 海の上で獲物を落とさない工夫をしないなんてバカだろ」

「ならば真の武功を味わうがいい【流星天月】」


 今度は天段が、間合いを一気に詰めると軽く跳ねると空中で体を回転させ勢いを増して槍を横に振るう。


「【海破(かいは)】!!」


 地面に槍を突き刺し柄でその一撃を受け止めると、気合とともに弾き返し、天段は勢いそのまま後方へと吹き飛ぶ。


「まだだ!」


 直ぐに体制を立て直した天段は駆け出し


「【蒼天槍舞(そうてんそうぶ)】」


 槍の乱舞を放つ。


「めんどくせぇ【黒流(くろながれ)


 その激しい乱舞を一槍は柄で流すように捌いてみせる。


「喰らうぜ【禿鮫(かむろざめ)】」


 短く持っていた刃は鋭く三又の隙間に右上腕を挟むとすると抵抗なく切り落とした。


「ぐっ……」


 後方へと退く天段。


「続けるかい?」


 余裕で問う一槍に対して、天段の瞳に闘志が満ちており、飾り紐で腕を縛り止血する。


「OK。死ぬ覚悟はあるってことだな」

「わたしは、門派の為にも負けるわけにはいかない! 受けよ! 點蒼派の奥義【天翔(てんしょう)・――」


 天高く跳びあがると、天段の槍の柄は蒼く輝き刃先が十字の光に包まれる。


蒼狼槍波(そうろうそうは)】」


 光が最大限の輝きを放つ瞬間、全力で槍を投擲する。槍を纏う光が蒼い狼へと姿を変えて、一槍へと迫るが、一槍は口角をゆがめる。


「大した技だな。だか、オレの前では無意味だぜ【黒嵐(くろあらし)・――」


 頭上で槍を旋回すると黒い竜巻が一槍を覆い、それは暴風の鎧となって狼の牙を止める。


「まぁ、わるくなかったぜ――鳴鮫(なりさめ)】」


 キュイン――――


 甲高い音がなったとおもった瞬間。天段は肉塊へと変わり果てていた。それはまるで無数の鮫に食いちぎられたかのように無惨な姿であり、そして地面におちた天段だったものには、弾き飛ばされた天段の槍が刺さりまるで墓標の様であった。


「わりぃな。殺しちまったぜ」


 悪びれることなく一槍は武台を降りると、会場には冷たい沈黙がながれた。

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